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モブのままでは終われない!  作者: とんけ
第3章:モブのゲシュタルト崩壊
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届け僕の想い

 「剣は持ったな?」


 僕達はいつも特訓で使っていた場所にやってきた。ここなら思う存分戦うことができる。

 戦うことはできるんだけど・・・・


 僕は模擬剣を持った。


 「はい」


 「よし、それじゃあ決闘を始めるとしようか」


 

 どうしてこうなった。

 僕はただペロンギさんと付き合いたかっただけだ。それなのにどうして決闘することになる。葛城君の時以上にわけがわかない。この世界では告白ってのは決闘イベントなのか?ていうか、本当に怪我は大丈夫なのか?


 頭の中は混乱したままだが、しかし僕は剣を構える。


 ちなみに、僕は訓練で一度もペロンギさんに勝てたことはない。というかまともに攻撃が当たったことがない。ハイオークやゴブリンロード、ケルベロスなんかと戦う前の話だけど、はたしてどれだけペロンギさんに近づくことができただろうか。レベルでいえば10以上は上がっているんだけど。

 

 「行くぞ!」


 ペロンギさんが一気に距離を縮めてくる。

 ――――速い!


 ペロンギさんが剣を振る。

 今までだったら反応できなかったペロンギさんの神速の一閃、僕はかろうじてそれを避ける。

 

 避けるだけでなく、反撃もする。


 「たぁ!」

 「!?」


 僕から反撃が来ると思っていなかったのだろう。ペロンギさんが僕の一撃に目を見開く。

 しかしかろうじて避けた状態での反撃だ、力も速度も今一つだっただろう。ペロンギさんはその一撃をなんなくいなし、僕はさらに体勢を崩された。


 崩れた体勢の僕にペロンギさんはさらに追撃をしかけてくる。

 ――――避けられない!


 そのペロンギさんの追撃を避けられないと悟った僕は、なすすべもなくその一撃に倒れる・・・・・・わけにはいかない。とっさに盾でその一撃を受ける。


 模擬剣の一撃だ。盾が切り裂かれたりはしない。しかし、模擬剣といえども威力は変わらない。

 僕はそのペロンギさんの一撃を受けて、吹き飛ばされた。


 「ぐああああ!」


 盾で受けたにも関わらず、5回転半位空中で回って5m近く吹き飛ばされて僕はごろごろと地面を転がった。ちょっと意味がわからない。

 相手が油断していたのもあるんだろうけど、僕は槍の勇者にも勝ったんだ。それにゴブリンロードにも勝ったし、ケルベロスにも勝ったし、正直この世界ではかなり強い部類に入れたと思う。それでもペロンギさんにはかなわないのか?


 僕はその理不尽な強さに驚愕しながらも、しかし、すぐに体勢を整え剣を構えた。

 ペロンギさんを見据える。


 「へぇ、俺が倒れてる間に随分強くなったんだな。まさか今のも防がれるとは。あっぱれだ」


 ペロンギさんは豪快に笑う。

 

 「ははは。これだけ強くなっても敵わないとは。ペロンギさん、あなたどんだけ強いんですか。全く。僕はさっきので既に限界ぎりぎりですよ」


 僕は強がりもせずに弱音を吐く。

 そんな僕を弱虫とは思わないでほしい。強がる余裕なんてない。


 「簡単に倒れないでくれよ。私と付き合いたいんだったら根性みせろ!」


 離れた距離をまたしても一気に縮めるペロンギさん。

 しかしこの人は俺と言ったり私と言ったり。どっちが素なのかねぇ。


 僕がそんな現実逃避をしている間にすでに僕の懐にやってくるペロンギさん。

 僕はちょっぴりペロンギさんを驚かせたかった。付き合いたいのもあるけど、僕がどれだけあなたに惚れこんでいるのかを感じてほしかった。


 僕は剣を振る。

 それはこの世界に来て最初に見た技。そして僕が必死に練習を続けてきた技。


 名前があるのかもわかないけど。


 これできっと僕がどれだけペロンギさんを好きかわかってもらえるはず。


 僕はカウンター技をはなった。



 「!!!!??」


 


 好きな人に対して全力で剣をふるのはどうなのか。

 しかし僕は全力で剣を振った。その方が彼女には伝わると思ったから。


 その全力の一撃は、見事にヒットする。


 僕は勝利を確信した。

 かたい魔物でさえも切り裂くこの技を人間が受けて無事ですむわけがない。

 それは模擬剣であっても一緒のはずだ。


 倒した確信を持って僕は振り返る。

 倒れているペロンギさん手を差し伸べるために。


 しかし彼女は立っていた。

 いや、立っていただけじゃない。ペロンギさんはそのまま僕に対して剣を振っていた。


 勝ったと思い気が緩んでいた僕はその一撃に全く反応することができなかった。

 その一撃は僕の顔面に直撃し、僕はそのまま意識を手放したのだった。




 ガバリ!

 僕は勢いよく飛び起きた。 


 「痛い・・・・」


 顔面がひりひりと痛んだ。遅れて左腕と体がずきずきと痛む。

 辺りは完全に暗くなっていた。


 「はは、悪い。悪い。いい一撃もらってついカッとなってしまって」


 ペロンギさんが横に座っている。

 手には杖を持っている。


 「ヒールをかけてくれたんですか?」

 「ああ、ちょっとまずいくらい顔がはれちゃってたからな」


 今でさえ酷く痛むのに、一体どれだけ酷い傷だったのだろうか。ヒールをしてこれか。

 僕は恐ろしくて身ぶるいした。


 今日は寝てばっかりの一日だったな。飯室君のところで昼寝して、ここでも寝て。今日の夜寝れるかな。


 「ペロンギさん、強すぎです。僕も強くなったつもりだったけど、まだまだ全然敵いませんでした」

 「ともたけもかなり強いぞ。ただ、俺の方が強かっただけだ」

 「どうしてそんなに強いんですか?ペロンギさんって勇者組の護衛は任されてませんでしたよね?中堅の騎士でもこれだけ強いんですか?」


 ペロンギさんがう~んと、ちょっぴり応えずらそうにする。


 「俺の場合はちょっぴり特殊だからな。育ちもなにもかも。実はな、俺は小さい頃魔物に育てられてたんだぜ?」

 「魔物!?」

 

 衝撃の告白である。

 僕が好きだった人は魔物に育てられた少女だったのだ。

 強いのも納得である。


 「ああ。だから小さい頃から過酷な環境で育ったんだ。だから、レベルも40を超えてる」

 「レベル40を!?」

 「45位だな」


 初めて聞いたよ、レベル40代。

 まさかこんな身近にこんな強者がいたなんて。


 「なななな」

 「それだけじゃなくってな。まぁ、紆余曲折があって“全知の賢王”と呼ばれる人のところに保護されたんだ。そこには“剣神”もいてな。小さい頃からみっちり鍛えられたんだよ。それで強いわけ。それでさらに紆余曲折を経て、このペニーニャ国の騎士になって10年位経つな。私はこういう事情があるから騎士の中ではちょっと浮いててね。余所者だから中堅止まりってわけなのさ。実力ではNO.1だと思ってる」


 驚愕の事実である。

 ちょっと理解が追い付かない。


 いったん顔が痛いのは置いといて、ちょっと気持ちを落ち着かせよう。


 う~ん、う~ん。



 ふぅ、落ち着いた。



 「・・・・・・」


 落ち着いたけど、言葉は何もでなかった。


 


 

 

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