全知の賢王
「まぁ、というわけで、私と付き合うのはまだまだ先になりそうだな」
ペロンギさんが立ち上がって訓練場を去ろうとする。
ペロンギさんの過去はきになることが山ほどある。まず、魔物に育てられたとかめちゃくちゃ気になる。でも今一番気になるのは“全知の賢王”についてである。もしも言葉通りの意味で全知だったたとしたら、ともこちゃんの居場所もしっているかもしれない。
「あの、ちょっと待ってください」
「ん?なんだ?」
僕は去ろうとするペロンギさんをとどめる。
本当は付き合えないということを悲しんだり、まだまだ先になりそうってのが最終的に付き合うというゴールを想定している点に喜ぶべきなのかもしれない。でも、今はともこちゃんのために“全知の賢王”について聞かなきゃだめだろう。
「“全知の賢王”ってのは本当になんでも知ってるんですか?」
「ああ、知ってるぞ。お前がどんな風に生きてきたかとか、今何を考えているか、とか全てわかる。人外の化物、いや、神のようなものかな」
ななななな。
そんな人物がこの世に存在していたなんて。
「本当ですか!人の居場所なんかもわかったりするんですか?」
「そんなの余裕だと思うぞ」
ね。やっぱり関係のないようなところからふっと答えが転がり込んできたりするものなんだよ。
僕は信じてた。
「そうなんですね!ありがとうございます。ちょっくら“全知の賢王”のところに行ってきます」
僕は全力でダッシュをしようとする。
ペロンギさんはあわててそれを止める。
「いや、ちょっと。お前どこにいるかもわかないだろ・・・・・・」
「・・・・・・。そうですよね~はははは」
ひとまずもう一度落ち着こう。
ふぅ。
落ち着いた。
「“全知の賢王”ってどこにいるんですか?」
僕はペロンギさんに“全知の賢王”に関して色々質問した。
住んでる場所はガガル王国と最果ての国ニョニョンの間にそびえる大きな山の中。ひっそりと暮らしているらしい。山は地上よりも強い魔物が多く、無事にたどり着くことができる人は少ないらしい。また、たどり着けたとしても邪な心の持ち主には一切応えてくれないらしい。その基準は厳しくたいていは質問には応えてくれないらしい。応えてくれるとしても1人1つののみらしい。
「とまぁ、そんなわけだ。本当に行くのか?」
「行きます。僕にはどうしても居場所を知らないといけない人がいるのです。それに早ければ早いほどいい」
「そうか。ならば私も一緒に行こう」
「え!?体は本当に大丈夫なんですか?」
決闘しといて聞くようなことじゃなかったかもしれないな。
「な~に、私からしたら故郷に帰るようなもんだ。それに私がいたほうがとりあってもらえる可能性も増すかもしれないしな」
「では、是非お願いします」
ペロンギさんがいてくれれば道に迷ったりすることもないだろうし、何よりかっこいいところをみせるチャンスもある!
って煩悩退散!
こうして僕達は解散した。
翌日みんなで図書館に集まることになっていたので、そこでみんなと話し合うことにした。
そして泊っている宿へと帰る。
昼間に寝過ぎたのと顔がひりひりしてなかなか寝付けなかった。
そして、翌日。
僕達は図書館の中にあるミーティングスペースのような部屋にいた。10畳ほどのスペースで丸い机が真ん中に置いてある。
集まったのは、僕、和田君、林君、東堂さん、三上さん、そしてペロンギさんの6人である。
何かの秘密会談を行うかのようにみな真剣な顔をしてペロンギさんの話を聞く。
ペロンギさんが話す“全知の賢王”の情報を一つも漏らすさず聞いてやるという意志が感じられる。特に林君はかりかりとペンを動かして真剣に聞いている。この図書館でも全く知りえなかった情報なのかもしれない。三上さんと東堂さんも瞳に驚きの色を宿しながらも体を前のめりにして話しを聞いている。和田君は~、多分しっかり聞いてるんだろう。うん。そんな僕は昨日も聞いた話だったので、ちょっぴり気持ちが離れている。みんなの反応とか見ちゃう位集中できてない。もちろんちゃんと聞いてはいるけどね。でも昨日聞いた話だし。いや、しかし、この机はすごい触り心地がいいな。何だこれ!知らず知らずのうちにずっと触ってたわ。別に木について詳しいわけではないんだけど、地球の最高級の木でもこの質感は再現できないんじゃないだろうか。すべすべしているけどしっとりもしていて、まるで人肌のような。いや、それ以上か。これこそが木のぬくもりってやつなんだろうなと思える素晴らしい逸品である。頬をつけてすべすべしてみたい。いや、だめだ、こんなところで机に頬をすべすべしたらただの変態だ。ましてや今は、大事な話をしている。ともこちゃんを助けられるかどうかの大事な話だ。ふざけていい時と悪い時をちゃんと理解して行動しないとまともな大人にはなれない。でもこの机は本当に気持ちいいなぁ。
は!?
みんなの視線が僕に向いていた。
呆れたような視線、悲しみに満ちた視線、怒りに塗れた視線、馬鹿にしたような視線、さまざまな視線が僕に突き刺さる。
「何、今にも机に頬をすべすべさせそうな顔してるのよ!」
東堂さんが机をばんっと叩く。
しまった。完全にトリップしてしまっていた。僕はなんてことをしてしまったんだ・・・・。
「まぁ、こいつには昨日詳しく話してるからな。そんなことよりも話を戻そう。つまり、その“全知の賢王”のもとへ行けば、お前達が探しているそのともこちゃんの場所もわかるかもしれない」
ペロンギさんが話を戻してくれた。
僕は今度こそ気を引き締めて話しを聞く。
「でも、“全知の賢王”ってのは誰に対しても質問に答えてくれるわけじゃないんですよね?俺達が行って誰も答えてくれないということもあるんじゃないでしょうか?」
林君がノートに目を通しながら質問する。
確かにそれは僕も不安に思っていたことである。邪な心を持ってない人間なんてこの世はいないんじゃないだろうか。もしも小さな雑念レベルも駄目だったら僕には難しいかもしれない。
「ん~、確かにその可能性もゼロではないな。結構頑固じじぃだしな。でも、俺はお前達なら大丈夫だと思ってる」
その答えにしかし眉をひそめる林君。
「しかしそれで駄目だったら完全な無駄足になります。ここで調べる組と分けるべきかもしれませんね」
図書館にこもって調べ物をしたと言っても全ての本を読んだわけではない。もしかしたらともこちゃんやあの悪魔のような男の情報をつかめるかもしれない。確かにここは林君の言うとおり、2手に分かれた方が好都合かもしれないな。
「そうだね。もしも仮に“全知の賢王”が質問に答えてくれたとして、その場所がペニーニャ城からの方が近かった場合、残ってた組がより早く対応ができる」
僕も林君の案に賛成する。
「ではどのように班分けをするか」
班分けは難航した。
林君を除くみんなが“全知の賢王”のもとへ行きたがったからだ。
しかし、邪な心が全くなさそうな三上さんはすぐに決まった。そして、僕と和田君と東堂さんの誰が行くかという話になる。ある程度の戦力も必要ということで東堂さんが離脱。そして、僕と和田君どちらが行くということになった。
「頼む俺に行かせてくれ。俺だってともこちゃんを救いたいいう気持ちは一緒なんだ」
「僕はともこちゃんを救うために一番危険に飛び込まなきゃいけないと思ってる。だってパパなんだから」
僕の言葉に和田君がたじろぐ。
パパパワ―である。
「よし、じゃあもう一人はともたけにしよう」
その一瞬のたじろぎを見のがさなかったペロンギさんが決定を下す。
こうして
遠征組:僕、三上さん、ペロンギさん
居残組:和田君、林君、東堂さん
となった。




