NEET軍団
「おい、お前働いてないよな?」
図書館で療養した翌日、いまだ腕が完治しない僕は町をぶらぶらとしていた。
すると突然ヤンキーが僕に向かってそんなことを言ってきた。
「はい、働いていないですけども」
僕がそうこたえると、ヤンキーは
「よし!じゃあちょっとついてこい」
そう言って、僕を町はずれのぼろい一件屋まで連れてきた。
抵抗しようと思えばできたけれど、やることもないのと、同じ地球からやってきた境遇を同じくする者だったのでついて行くことにしたのだ。
ヤンキーがぼろ屋のとびらの前でとまる。
そして、コンコンコンと三回ノックする。
すると、中から声が聞こえてきた。
「青いたぬきの好物は?」
それに対してヤンキーは
「どら焼き」
と応えた。
合言葉かなにかなのだろう。地球人にしかわからないようになっているらしい。しかし、これでは逆に地球人ならほぼ誰でもわかるような気がする。有名すぎるし。もしかしたらノックの回数なんかも重要なのかもしれない。
ずずずと、扉が開く。
「隊長、おかえりなさい」
「おう」
そう言って、部屋の中まで入っていく。
僕は黙ってそれに従った。
中は、外の外見よりも綺麗に掃除されていた。
結構住み心地も良さそうだ。
どうやらここは地球人の隠れ家のようなものになっているようだ。
「む?武井君か・・・・」
なかからメガネをかけた秀才チックな人が声をかけてきた。
秀才君の他にはギャルっぽい女の子が3人と、クラスでもイケてるグループに所属している人が2人ほどの計6人がたむろしていた。
「そうだけど・・・・ここは一体何なの?みんなで暮らしてるのかな?」
僕が率直な疑問を言う。
それに対して、ヤンキーが応える。
「ここは、異世界に対して文句のあるやつらで集まって生活している。どうして勝手に召喚されて勝手に解雇されて、こんなクソ田舎みたいなところで働かなきゃいけないのか。俺たちの境遇に断固反対する集まりでもある。みんなでお金を出し合って、この秘密基地をつくって一緒に生活している」
「全くだ。どうして僕みたいなエリートがこんなところであくせく働かないといけないんだ。こんなことのために勉強してきたんじゃない」
「私たちって~、かったるいこと嫌いなわけよ~。勝手に呼び出したんだから面倒みろよって感じ~?」
ふむ、つまりは僕と同じNEET軍団というわけか。
なんだか急に親近感がわくな。
「それでだな。近々大きなことをしでかすつもりなんだが、人手が足りないので、同じ働いていない境遇であるお前に声をかけたわけだ」
「ふ~ん、なるほど。何か起業でもするの?現代知識でチート生活?」
「馬鹿!そんなかったるいことするわけないだろ!大きなことってのはお前が俺達の側につくと決めたら教えてやるよ」
ふむふむ。きっと何やらよからぬことをたくらんでいるんだろうな。
建設的なことだったら一緒にやってもよかったのだけれど・・・・。どうもそんな感じじゃなさそうだな。
「ちなみに、断ってもいいの??」
そう言うと、ヤンキーとそのとりまきのイケてるグループの2人組みがにやりと笑う。
「別に断ってもいいけれど、」
「ちょっと痛い目にあってもらって、このことは他言無用にしてもらうかな」
ぽきぽきと指を鳴らす。
威嚇のつもりなのかもしれない。
「ちなみに俺達は解雇されてから、ずっと外で魔物退治をしてきた。今では三人ともレベル15になっている。痛い目にあいたくないなら、大人しく仲間になって言うことをきいてもらおう」
ヤンキーはそう言って、僕に選択を迫る。
どうやら僕には選択肢が1つしか用意されていないようだ。
----相手の思惑通りならだけど。
「うーん、なんだかきな臭いから僕はパスで。痛い目にもあいたくないから、ごめんよ」
そう言って、僕は先手必勝。相手の無力化をはかる。
ペロンギさんの戦闘訓練では武器の扱いだけでなく、武器が使えない場合での戦闘訓練も入念に行っている。片腕が使えないとはいえ、ただただレベルをあげただけの普通の高校生に負ける気はしない。
ヤンキーとイケてる2組を動けないように押さえつけた。
「な・・・・」
秀才君が目を丸くして僕を見る。
「確かに僕も働いていないよ。でも、別にこの世界に不満があるけじゃない。いや、うーん、なんていうか、この世界に連れてこられたことは不満はあるけど、なんだかんだ楽しくやってるからね。それに仕事だって、何かしらやりたいことがみつかればやるつもりだしさ・・・・」
後半はちょっぴり声が小さくなってしまったが、君たちは違うのだとそう主張した。
見る人がみたら色々理由をつけて働いていないのは一緒かもしれないが、別にポリシーを持って働いていないわけではないのだ。ただ、何をして働けばいいかわかないだけなのだ。
むむ、なんだが、自分の方が達が悪い気がしてきたぞ。
「まぁ、そんなわけで、誰にも言ったりしないから僕は抜けさせてください」
そう言って、僕はNEETの秘密基地を後にした。




