ピクニックへGO!!
「明日みんなでピックニックに行こう!」
ヤンキー君との一件があった日の戦闘訓練が終わった後、三上さんがみんなに向かって言った。
ちなみに僕は東堂さんの目が怖かったので、すみっこで柔軟体操をして過ごしていた。
「え?最近物騒になってるのに?僕も昨日ハイオークに襲われたばかりなんだけど」
僕がそんなことを言うと、和田君が僕を小突いて言った。
「おいおい、そんなこと言うなよ。みんなでピクニックなんて楽しそうじゃねーか。それにそうそうあんなことにならないと思うし、地球にいたころだって近くで事件があったりしても普通に遊んでただろ??」
「そうだよ!そういう暗く沈みがちな時だからこそ、楽しいことをしよう」
「そ・・・・そんなもんかな?」
僕も普段の何もない時だったら即賛成していたんだけど、昨日の今日だからちょっぴり外を怖がり過ぎていたのかもしれない。和田君も一緒に襲われたはずなんだけど、タフだなぁ。
「確かに生き抜きは必要だ。俺も明日は非番だから一緒に行くぞ」
「行きましょう。ペロンギさんがいればどんな魔物が表れてもへっちゃらだ」
「なんだよ。極端なやつだな・・・・」
和田君がどこか呆れているように見えるが、そんなの気にならない。
ペロンギさんが行くのであれば、たとえどんだけ重要な予定が入っていようと僕はピクニックへ行くのだ。
こうして、明日はピクニックへ行くことになった。
どうやらみんな仕事の休みをとっていたようだ。ペロンギさんの予定に合わせてたのかもしれない。
もしや、僕抜きでこっそり計画をたてていたんじゃないかなんてこれっぽっちも疑わないぞ。
翌日、門の前に集合していた。
こうして全員そろって遊ぶのは初めてかもしれない。ちょっとわくわくしている。腕も完全によくなって準備万端だ。
身軽で動きやすい服装に、武器を携帯している点は異世界ならではのピクニックだ。
「よーし、では出発!」
三上さんがそう宣言し、みんなはいきようようと出発した。
目指すは僕達が暮らす城下町のすぐ近くにある丘を目指す。
道中遭遇するウサギの魔物を倒しながら進む。
「こうやってみんなでウサギを倒してるとここに来たばかりのことを思い出すね」
三上さんがウサギに槍を突き立てながら言った。
「そうだな。しかし色々なことがあったなぁ」
和田君が遠い目をして言った。
ここにきてから勇者を頼まれ、わずか20日ほどで解雇され、そこからだらだらと異世界生活を満喫してもう3カ月近く立つんだもんな。
「神宮寺君達はダンジョンを制覇したり、隣のガガル王国に出現した死霊の騎士団を倒したり、まさに勇者してるよね。今も、最果ての国ニョニョンに出現したドラゴンに対処するべく向かってるらしいし。僕たちも色々あったけど、彼らは波乱万丈だよね」
僕達以上に神宮寺君達は大変だ。
「俺も、最初はあいつらみたいに活躍すると思ってたんだけどな。まぁ、冒険者もいろいろ楽しいんだけどな」
和田君が言うように、僕だって最初は勇者するつもり満々だったのにな。
場所が変わっても、人の気質ってやつは変わらないのかな。
主人公は主人公、モブはモブなのかもしれない。
僕みたいな人間は、どこにいてもこうやってモブみたいに人生を終えるんだ。
なんか楽しいピクニックのはずなのに悲しくなってきた。
考えないようにしよう。
「私たちも、看護で色々あったよね」
三上さんが東堂さんに話しかける。
「そうね。ゆかこのファンクラブがだんだんと大きくなってきて、いまでは常に行列がてきているしね」
ああ、あの一つの部屋に異様に列ができていたのはそういうことだったのか。
マスコットというかもはやアイドルみたいだな。
「もう、酷いよ、みか。そういうつもりで色々あったねって言ったわけじゃないのに。」
三上さんが、頬を膨らませてぷんぷんと怒っている。
可愛い。
つんつんと頬をつついてみた。
「も~、武井君も酷いよ」
「ごめんごめん。つい、体が勝手に動いてしまって」
三上さんがぽかぽか殴ってくる。
「俺もここにきて色々あったな。自分がこんなに本好きだったんだなって、ここにきて気付かされたよ。」
林君もしみじみつぶやく。
林君が好きなのは本じゃなくて爆乳なんじゃないのか。
なんて嫉妬は思っても口に出さない。
こうして僕達は穏やかなウサギ狩りをおこないつつ、目的地である丘の上までやってきた。
丘の上からは広大な自然が広がって見えた。ペニーニャ城も見える。
「おお~、すごいいい景色だ」
和田君が丘の上の景色をみて感動の声を上げる。
「城の近くにこんな景色のいい場所があったんだな。」
ペロンギさんも楽しそうだ。
「じゃあ、ここで風呂敷広げてのんびりしましょう!」
三上さんがそう言って、リュックの中から大きめのシートを取り出して引いた。
そして、さらにおにぎりなどのお弁当もとりだした。
「私とゆかことペロンギさんで腕によりをかけて作ったからみんな美味しく食べてね。」
東堂さんもお弁当を取り出してそう言う。
「え!?ペロンギさんも作ってくれたんですか?」
「おう。ゆかことみかの三人で楽しく作ってきたぞ」
よく見ると形の綺麗なおにぎりと、どこかいびつなおにぎりがあった。
きっとペロンギさんのおにぎりはいびつなやつなんだろうな。ひょいっと、いびつなおにぎりを取った。ペロンギさんが僕の方をじっとみつめている。
「どうしたんですか?」
「いや、なんでもない。」
ペロンギさんはそう言うと恥ずかしそうに顔をそむけた。
「みなさん、おにぎりがいきわたりましたね?それでは、みなさんご唱和ください。いただきます」
「「「「「いただきます!!」」」」」
三上さんの掛け声に合わせて、いただきますが響き渡った。
僕は、ペロンギさんのものだと思われるおむすびを1口食べる。うん、見た目はあれだけど美味しいな。ていうか、おにぎりをまずくはつくれないか。
ペロンギさんがまたしてもこちらをみている。
「おいしいですね~」
僕がそう言うとペロンギさんも、そうだなと嬉しそうにおにぎりを食べ始めた。
「武井君、わかっててからかってるでしょう?」
東堂さんが僕にしか聞こえない声で話しかけてくる。
別にからかってるわけじゃなくて、食べたいから食べてるだけなんだけど。でも、確かにペロンギさんの珍しい表情が見れてちょっと嬉しい。
僕はにやりと笑うことで東堂さんの問いに応えた。
この世界に来てから一番おだやかな時間を過ごした。
大変なことは色々あったけど、これからもこうやって楽しく過ごせて行けたらいいな。
しかし、そんなおだやかな時間は長くは続かなかったのであった。




