↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/24

第1話 老害

「 チッ 邪魔だよっ、ばあさん。汚っねぇなぁ。こんな夜中に、ふらふら、ふらつきやがって。浮浪者が。近づくな。」




梶原文哉(かじわら ふみや)は、モノトーンのショルダーバックを肩から背中へと、斜めがけにかけ、靴は靴底の厚めの、白地に赤色のサイドラインの入ったシャレオツなシューズを履いている。有名高級ブランドを身につけ、美意識が高く、見た目やデザインに、こだわりがあるのだろう、靴の汚れや劣化に敏感で、少し潔癖症気味なところも感じるそんな男が、仲間と居酒屋に飲みに行った帰り道、曲がり角で、逆方向からやってきたその老婆と、ぶつかりそうになった。



梶原は、一日仕事で、理不尽なことも多く、むしゃくしゃしていた。酔っているせいもあって、気が大きくなっていて、いつも言わないような荒い言葉遣いで、冷たい感じで、その老婆をあしらった。








真夜中に、腰の曲がった白髪の老婆が、ふらふらと、夜道を一人歩いている。



老婆は何処へ行くでもなく、痴呆症で外へ出て徘徊してしまっているのだろう。





老婆は下を向き、背中を丸めてヨロヨロと梶原の前にいつまでも、立ち塞がっているので、梶原は段々と苛立ちを感じ始めた。




「どうしてこう、ゴミみたいな役に立たない人間が多いんだよ! 俺の通行の邪魔をしやがって、、まったく老害だよ。どけよ。」



梶原はそう捨て台詞を吐くと、ヒョイっと老婆を避けて、進行方向へ進んでいった。







今頃、この老人の家族が、心配して探しているかもしれない、それとも誰も身寄りがなくて、孤独に一人で暮らしているから探してくれる人もいないのかもしれない。どちらにしても、

老婆は、まるで出口の見えない砂漠をさまよう旅人のようだ。









この男もあと30年から40年もすれば、歳をとる。個人年金も払ってるし、社会保険料も払ってるし、積立投資もしてるし、年老いた時に自分が困らないように準備は平均以上にしている。未来の自分は、ある程度は今より裕福になりそれなりに順風満帆に過ごしているだろう、と当たり前のように想像し、将来、自分があんな風に徘徊するなんて、みすぼらしい未来を1mmも考えることはなかった。梶原は、こう思っていた。


俺が、そんなふうになるわけないと。そんな風にならないように、若い時から将来設計を立てて、そのプラン通りに、ちゃんとしてきたんだ。してこなかった奴が、悪い。こういう老害になるんだ と。













梶原が、数十メートル歩き、後ろを振り返り、睨みつけるように、さっきの曲がり角を見ると、老婆は、もう暗闇に消えていた。



─── 他人だ。俺には関係がない


梶原はそう思い直し、足早に家路に向かった。夜風が冷たく、酔いが少しだけ醒めた。











続く




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。