表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第2話 消えた通知

優しさは、ときに鎖になる。

気づいたときには、もう外せないほどに。


この頃の俺は、まだそれを「愛」だと思っていた。

朝、目が覚めると――

一番にスマホを確認するのが、いつの間にか癖になっていた。


画面を開く。


《真白:おはよ、玲央くん》


その一言で、安心する自分がいる。


さらにスクロールする。


《真白:ちゃんと寝れた?》

《真白:今日も学校で会えるの楽しみ》

《真白:大好き》


通知は、全部真白だった。


――いや。


違う。


“それしか残っていない”という感覚に、少しだけ引っかかる。


確か昨日、誰かからも連絡が来ていた気がする。


……灯?


思い出そうとするけど、履歴には残っていない。


「……気のせいか」


そう呟いて、スマホを閉じる。



教室に入ると、真白はもう席に座っていた。


俺を見るなり、ぱっと表情を明るくする。


「玲央くん、おはよう」


「おはよ」


席につこうとした瞬間、袖を引かれる。


「ねぇ、昨日ちゃんと寝れた?」


「うん、まぁ」


「そっか、よかった」


真白は安心したように笑う。


でも、その視線は一瞬だけ――

俺のポケットに向いていた。


スマホのある場所。


「……どうした?」


「ううん、なんでもないよ」


にこっと笑う。


けど、その笑顔はどこか作られている気がした。



昼休み。


トイレに立ったとき、スマホを取り出す。


ロック画面。


通知は、やっぱり真白だけ。


なんとなく違和感が拭えなくて、アプリを開く。


トーク一覧。


――灯の名前が、ない。


「……は?」


思わず声が漏れた。


昨日、確かにメッセージが来ていたはずだ。


見間違いなんかじゃない。


指先が少し震える。


履歴をスクロールする。


でも、どこにもない。


まるで最初から存在していなかったみたいに。



「何見てるの?」


背後から、声。


振り返ると、真白が立っていた。


「……っ、いや、別に」


反射的にスマホを伏せる。


その一瞬の動きすら、見逃さないように――

真白の目が細くなる。


「隠さなくていいよ?」


優しい声。


でも、その奥に何かがある。


「玲央くんは、私に隠し事なんてしないでしょ?」


言葉が、静かに刺さる。


責めているわけじゃない。


でも、逃げ道がない。


「……してないよ」


そう答えると、真白は嬉しそうに微笑む。


「よかった」


そのまま、俺の腕に絡みついてくる。


「玲央くんは、私だけのものだから」


――その言葉。


昨日よりも、ずっと重く感じた。



放課後。


帰ろうとしたとき、廊下の先に見覚えのある姿があった。


灯だ。


俺と目が合う。


一瞬だけ、安心したような顔をして――


すぐに、曇る。


「……玲央」


名前を呼ばれる。


でも、その声は少しだけ距離があった。


「昨日、連絡――」


そこまで言いかけて、灯は言葉を止める。


俺の隣にいる真白に気づいたからだ。


真白は、にこやかに微笑んでいた。


「誰?」


その一言。


軽いはずなのに、空気が一気に冷える。


灯は何も言わない。


ただ、俺を見ている。


「……幼なじみ」


そう答えると、真白は少しだけ首を傾げた。


「へぇ」


その笑顔は、やっぱり優しい。


――でも。


「玲央くん、帰ろ?」


腕を引かれる。


逃げるように、俺は歩き出す。


後ろを振り返ることはできなかった。



その日の夜。


スマホが震える。


《真白:今日は一緒に帰れて嬉しかった》


続けて、もう一通。


《真白:玲央くん、ちゃんと“選んでくれてる”よね?》


指が止まる。


その言葉の意味を、考えたくなくて。


「……選ぶって、何を」


小さく呟く。


でも返信は、決まっていた。


《もちろん》


送信。


すぐに既読がつく。


《よかった。安心した》


そのあとに来たメッセージ。


《だって、玲央くんは――》



《私が守らないと、すぐ誰かに取られちゃうから》



画面を見つめたまま、動けなくなる。


守られているのか。


閉じ込められているのか。


もう、わからなかった。


第2話、読んでくれてありがとう。


少しずつ違和感が形になってきました。

「優しさ」と「支配」の境界は、とても曖昧です。


そして、玲央はまだ気づいていません。

“何が失われ始めているのか”に。


次話では、さらに関係が歪んでいきます。


――もう、戻れないところまで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ