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コミック③巻発売中!【最強は田舎農家のおっさんでした】配信文化の根付いた世界で田舎農家のおっさんが伝説の竜を駆除した結果、実力が世界にバレました。  作者: 天池のぞむ
第6章 新たな始まり

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第83話 伏兵


「どーもー。噂の怪物ギルドの皆さん。俺はルイン。こっちは妹のシェリー。以後ヨロシクね」

「えっと……」


 《黒曜の翼》に襲撃を退けた後のこと。


 ゴーシュたちの前に姿を現したのは謎の二人組だった。


 ルインと名乗った男性は腰にホルスターを差しており、ゴーシュたちに向けて軽いノリで挨拶をしている。


 歳は20代前半に見えるが、相当な美男だからそう見えるというだけで、実は30代だと言われても違和感がなさそうである。


「ご機嫌よう、ゴーシュさん。いつも配信を楽しませてもらっているわ」

「そ、それはどうも」


 もう一人、シェリーの方はルインの妹らしい。


 こちらの年齢は分かりやすく、16、17といったところか。

 そうなると兄とはそれなりに歳が離れていることになるのだが、落ち着いた所作のせいでむしろ兄よりも大人びている印象である。


 人形のように整った顔立ち、というありきたりな表現がしっくりくるほどの美少女であり、それが身の丈ほどもある巨大な戦斧を背負っているというのだから、否が応でも目を引くというものだ。

 後ろで控えていたミズリーなどは「すっごく配信映えしそう」という感想を抱いていた。


「ルイン。さっきの眼鏡男を気絶させたのは君が?」

「そうそう。手を出すのもどうかと思ったんだけど、コイツでちょいと、ね」


 ルインはゴーシュの問いかけに対して、自身の腰に差したホルスターをぽんぽんと叩く。

 ホルスターからは金属製の物体が顔を出しており、ゴーシュたちの視線もそこに注がれる。


「それは確か、『銃』と呼ばれる武器だったか。俺も実物は初めてだけど、異国の配信者が解説しているのを見たことがある」

「私も見たことある。ばきゅーんって感じで撃つやつ」

「ピンポーン。ゴーシュさんとロコちゃんの言う通り。ただ、こいつは特殊性でね。面白い使い方ができるんだよ」

「へぇ」

「普通の銃ならあの男も重症だろうけど、そこはご安心を。今は単に眠っているだけだから」


 言って、ルインは二カッと笑う。


 飄々とした態度だが、おそらく相当な手練だろう。

 ゴーシュはそう感じ取り、倒れている眼鏡男の方を見やった。


 《黒曜の翼》の連中が満たした濃霧により視界不良の状況下。

 にもかかわらず動いている標的に遠隔攻撃を命中させるのは常人に為せる(わざ)ではない。


 一体どういう人物なのかと、ゴーシュだけでなく他の三人も興味を抱いたが、パルクゥがふとあることに気づいて疑問を投げかける。


「そういえばアンタたち、二人で行動しているようだけど、他のメンバーはどうしたの? 確か大狩猟大会のルールでは4人が1チームのはずよね?」

「ああ、それね。まあ、他の二人は数合わせってやつ? 登録するためにその辺の一般人を連れてきたんだよ。今はスタート位置にいるんじゃないかな」

「な、なんか無茶苦茶ね」

「ちなみにチーム名は《(あか)の隼》ね。ルール違反ではないっしょ?」

「それはそうだけど……。その分キツいでしょうに」

「んー。そこはほら、俺らだけで十分だし?」


 ルインはヘラヘラと笑っていたが、本心から出た言葉らしく、相当な自信があるようだ。


 ますます得体の知れない人物という印象を抱かせたが、ルインはゴーシュたちに背を向けると、倒れている眼鏡男の方へと歩き出した。


「さて、やることやらないとな」


 いつの間にかシェリーも眼鏡男の近くにしゃがみ込んでおり、何かを物色している様子だ。


「シェリー、どうだ?」

「駄目ね。ハズレみたい」

「他の三人も?」

「他の三人も」

「そっかー。まあ、いかにも小物って感じだったもんな。またイチから探すとするか」


 ルインは後ろ頭をボリボリと掻きながら嘆息している。


 アテが外れたという様子だったが、ゴーシュたちには二人の行動の意味するところが分からなかった。


 ルインとシェリーは用事が済んだのか、再びゴーシュたちの方へと歩いてくる。


「というわけで、俺らは目的を達成しましたとさ。ちゃんちゃん」

「いやいや、何が『というわけで』なのか分からないわよ。というかアンタたちの目的って何よ」


 おちゃらけた様子のルインに対し、パルクゥがもっともな指摘を入れる。


「二人は何か別の目的があって大狩猟大会に参加したということか? 一体何を……」

「そこは秘密♪ ま、心配しなくても別に変なことをしようとしたわけじゃない。とりあえずやることやったし、大会自体はここでドロップアウトしてもいいんだけど――」

「な、何だ?」


 ルインは言ってゴーシュをまじまじと見つめる。

 そうして観察していたかと思うと、ニヤリと笑みを浮かべた。


「シェリー。面白そうだしこのまま続けよっか」

「はいはい。兄さんのことだし、そう言うと思ったわよ。付き合ってあげるわ」

「決まりだな。それじゃ目指すは優勝ってことで」

「まずは予選を通過しないとね。今から間に合う?」

「はっはっは。裏技使えばいけるっしょ。そんじゃゴーシュさんたち、また後で。バイバーイ」


 ルインは最後まで軽いノリで、ビシッと挨拶を決める。


 続けてシェリーが自身のスカートの端をちょこんと(つま)んで優雅なカーテシーを披露すると、二人は森の奥へと駆け出していった。


 二人の背中を見ながらポカンとしていたゴーシュたちだったが、やがてパルクゥが思わずといった感じで叫ぶ。


「いや、意味が分かんないってば!」


 パルクゥのツッコミはもっともだったが、ルインとシェリーの姿はもう見えなくなっていた。


「うーん。謎が多い二人組でしたね。悪い人たちじゃなさそうでしたが」

「銃でばきゅーんてするとこ見てみたかった」

「とにかく、今は考えても仕方ないか。俺たちも狩りを再開しよう」

「はぁ……。そうね、気を取り直していくとしましょう」


 ゴーシュたちは切り替え、再び魔物を狩ることにした。


 多少のイレギュラーで時間は喰ったものの、その後の狩りは順調で、ゴーシュたちはポイントを重ねていく。


 やがて《黒曜の翼》の連中が展開していた濃霧も晴れ、観客やリスナーもゴーシュたちの活躍に熱狂していた。


 圧倒的なスピードで魔物を狩っていく様はまさに爽快で、優勝候補に(たが)わぬ活躍ぶりを見せるゴーシュたち。



 そうして1日目の予選が終了し――。



 首位で通過したのは、ルインとシェリーのチームだった。






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