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第68話 残念系魔法少女の実力


「え、えーと……」


 ゴーシュは現れた少女を見て戸惑いの声を漏らす。


 パルクゥと名乗ったその少女は、腰に手を当て、にんまりと得意げな笑みを浮かべていた。

 もう少し言うなら、ドヤ顔だった。


 幅広の魔女帽子やマントを着用していることから見ても、パルクゥは魔法使いの類なのだろう。

 何より大きめの杖を装備しており、先程はその杖を使って空を飛んできたのだから疑うべくもない。


 歳の頃はミズリーと同じくらいだろうか。

 目鼻立ちが良く、帽子の隙間から伸びる銀の髪も麗しい。

 美少女と言っても差し支えないかもしれない。


 ただ、着地の衝撃のせいなのか土埃で所々が(すす)けており、いまいち締まらなかった。


「あのー、あなたがパルクゥさんですか?」

「いかにも! 私が天才魔女、パルクゥ・アライアよ!」

「その……大丈夫です? 何だか、もの凄い着地されてましたけど」

「フフン。あれくらいどうってことないわ。ちゃんと魔法で防御結界を張ったもの」

「そ、そうですか」


 パルクゥはミズリーの問いかけに元気よく返事をする。

 なかなかにハイテンションな少女である。


「試験開始からけっこう時間が過ぎてますけど、何かありました?」

「うぐっ。それは、その……寝坊しちゃった、というか……」

「あー、やっちゃったんですね」

「し、仕方なかったの! 昨日から待ち遠しくて、あんまり寝付けなかったの!」

「ま、まあ大丈夫ですよ。誰でも寝坊はしちゃうものですから」

「フォローありがと……。というかアナタこそ常習犯じゃない」


 登場して早々、喜怒哀楽の表情を披露していくパルクゥ。

 そんなパルクゥの姿は、ゴーシュたちの配信を見ているリスナーたちにも印象的だったらしい。


【なんか濃いキャラが出てきたなw】

【クセがすごいですわ~!】

【なんだろう……。この子、とってもポンコツの匂いがします】

【↑わかる】


【もう俺の中で残念系魔法少女ってイメージが固まってる】

【残念系魔法少女w】

【天才って自称するのはだいたいアホの子だよw】

【個性的というか、(とが)ってるというか】


【すげえなこの子。出てきたばっかりなのにインパクトありまくり】

【試験どうなるかと思っていたら衝撃的な展開でござる】

【フフ、また面白いコが出てきたわね】


「……」

「ししょー、どした?」


 配信のコメント欄が盛り上がる中、ゴーシュは真剣な表情でパルクゥを見ていた。

 その様子が気になったロコが声を掛けると、ゴーシュは静かに答え始める。


「いや、魔法の使い手というのは珍しいと思ってな」

「……? でも、私たちも配信する魔法とか使えるよ?」

「ああ、すまない。確かに交信魔法というのは俺たちでも使える。でも、彼女のように物理的な影響を与える魔法の使い手というのはかなり珍しいんだ」

「確かにあの人、お空をびゅーって飛んだり、岩山にどかーんって当たってもだいじょぶだった」

「手元を光らせたり、小さな風を起こしたりする程度のものなら、扱える人もそれなりにいる。けど、あの規模の使い手となると……」

「もしかして、めちゃんこ強い?」

「かもな」


 ゴーシュの話を聞いたロコが、パルクゥの方へと目をやる。

 ミズリーに寝坊のことを弁明しているらしく、わたわたと話す様子からは想像できない。


 でも、ゴーシュが感じるくらいなのだから、何かがあるのだろう。

 ロコはそう結論付けることにした。


「と、とにかく、試験はまだ受けられるでしょ? リスナーたちを待たせるのも悪いし、さっさとやりましょ」

「そうですね。それじゃ、ロコちゃんにお願いしましょう」

「うん。おーけー」


 そうして、一次試験が再開されることになった。


 地面に描かれた円の中にロコとパルクゥが入り、対峙する二人の姿が配信画面に映し出される。

 自然とリスナーたちも注目を寄せ、パルクゥがどうロコに立ち向かうのかと興味が向けられていた。


【さて、登場はインパクト抜群だったけど実力はどうか】

【ここまでロコちゃん無双だからな】

【大柄な殿方でも難しかったですものね。どうするのか気になりますわ】

【残念系魔法少女の腕やいかに】


【面白い子だから応援してる!】

【頑張れー】

【でも、ロコちゃんの怪力っぷり凄いからなぁ】

【怪我しないでほしいでござるな】


 ここまで百人近い応募者たちをまったくと言っていいほど寄せ付けなかったロコである。


 パルクゥは自信満々な様子だが、一体どうする攻略するつもりなのか。

 一つ、鍵になるとすればやはり魔法だろうか。


 リスナーたちがそんな関心を寄せる中、準備を整えたロコがパルクゥに声をかける。


「おけ。びっちこい」

「び、びっちじゃないわよ!」

「間違えた。ばっちこい」


 緊張感がないなと溜息をつきながらも、パルクゥは眼の前に立つロコをじっと見据えた。


「一応確認だけど、武器以外は使っても良いのよね?」

「うん。とにかく私を円のお外に出せばおーけー。魔法もいーよ」

「分かったわ。それじゃ、始めましょうか」


 パルクゥがスッと杖を掲げると、ロコは構えを取る。


 何が飛び出すか分からないが、大男の突進でも跳ね返してしまうロコである。

 生半可な攻撃手段ではロコを吹き飛ばせないだろうが、どうするのか。


 皆がそう思いながら見守る中、パルクゥは既に自分の勝利を確信していた。


(あれは……?)


 最初に気づいたのはゴーシュだった。


 ロコの足元が僅かに隆起し、地面が形を変えていたのだ。


「――っ」


 続けてロコが気づく。

 パルクゥに大きな動きはなかったが、手にしている杖が淡く発光していた。


「《ブレイク》――」


 パルクゥはそっと、静かに呟く。

 目つきは鋭く細められ、そこだけを切り取れば賑やかだった時とは別人だと評する者もいただろう。


 その後に発生した現象はリスナーたちを、そしてゴーシュたちをも驚かせるものだった。


 ――ドパッ、と。


 ロコの足元が爆発し、土砂が巻き上がる。


 それは地面が破裂したかのようであり、ロコは空中に投げ出されることになった。


「わっ――とと」


 ロコは慌てて体勢を立て直そうとするが、円からは離れた位置に放り出されてしまっている。

 さすがのロコも足場がなくては自慢の怪力を発揮することはできない。


 結果としてロコは着地することになるが、そこは円の外だった。



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