第67話 天才魔女パルクゥ、登場
「どうしよう、ししょー。みんなぶっ倒しちゃった」
「そ、そうみたいだな」
ゴーシュたちのギルド《黄金の太陽》の選考会が始まってからおよそ二時間。
結局、集まった参加者の中で、ロコが担当した一次試験を突破できた者はゼロだった。
どうしたものかと、ゴーシュもミズリーも顎に手を当てて考え込む。
そもそも今回の選考会を何故やっているのかというと、来る精霊祭――その中でも目玉となる大狩猟イベントの参加条件を満たすためのものだ。
つまりは新しいギルドメンバーを見つけるためである。
「メンバー見つからないとお楽しみイベント出れない。やばし」
「うーん、そうですねぇ。しかもまだ一次試験ですからねぇ」
「まだまだ時間はあるし、もう一度やるってのも手かな?」
ゴーシュたちが揃って考え込む一方、選考会の配信を見ていたリスナーたちは思い思いのコメントを打ち込んでいた。
【悲報、合格者0人】
【しゃーない、ロコちゃんが強すぎたw】
【ロコちゃんお疲れさまー】
【あれで手加減してたなんて凄すぎますわ~!】
【やっぱりゴーシュ殿のところに入るには相当強くないと厳しいでござるな】
【↑まあ今回は戦闘職募集だったから仕方ない】
【この後どうすんのかな?】
【メンバー最低あと一人は必要だもんね】
【再試験やろう!】
【まだだ。まだ慌てるような時間じゃない】
【諦めたらそこで選考会終了ですよ?】
【もっと配信見たいぞ!】
やっぱりもう一度形を変えて試験を続行するのが良いかなと。
リスナーたちのコメントを見ていたゴーシュも考え始める。
「――あれ?」
そこで、何かに気づいた様子のミズリーが声を上げた。
ミズリーは何やらメモの書いた紙を持っており、じぃっと見つめている。
「あ、やっぱり」
「どうしたんだ、ミズリー? 何か気になることでも?」
「それが、まだ試験を受けていない人がいるみたいなんです」
「え?」
ミズリーの言葉を聞いて、ゴーシュは参加者たちの待機列へと目を向けた。
「事前に仮応募してもらっていたので、今日参加することになる人の名前は一覧にしてありまして。それで、ロコちゃんの一次試験を受けた人はチェックしていったんですが……」
「ほんとだ。まだ印の付いていない人が二人いるな」
「んーと? 『パルクゥ』と『ボルガ』って人?」
ミズリーがロコにも見えるようメモの位置を下げ、三人でそれを眺める。
そうして、まだ試験を受けていない人がいないか参加者たちに確認を取るゴーシュたち。
しかし――。
「見つからないな。どうやらそもそもこの場に居ないみたいだ」
「交信魔法で連絡してみたけど繋がりませんね」
「もしかして、おねぼー?」
【寝坊w】
【これだけ人数いるしなぁ】
【はい! 僕も昨日寝坊して仕事に遅刻しました!】
【ミズリーちゃんを継ぐ者たち】
【↑それは草】
【↑逆に素質あるじゃんw】
【↑み、ミズリーちゃんはお酒のせいだから……】
【↑酒飲んでない時も寝坊してたような……】
「確かに、ねぼすけとかミズリーっぽいよね。今日も私とししょーで何とか起こしたし」
「ろ、ロコちゃん、しーですよ、しーっ」
リスナーたちのコメントを見ながらロコが暴露すると、ミズリーが慌てて人差し指を口に当てる。
そんな様子を苦笑して眺めながら、ゴーシュはどうするべきか考えていた。
「まあ、連絡がつかないんじゃ仕方ないか。ここはやっぱり再試験をする方向で――」
と、ゴーシュがそこまで言った時――。
「その必要はないわっ!!!」
唐突に、声が響いた。
それは女の子の声であり、けっこうな声量であり、上空から響いたものだった。
「なっ――!?」
何で空から人の声が聞こえるのかという疑問よりも先にゴーシュは顔を上げ、そして気づく。
何かがもの凄いスピードでゴーシュたちの元へと接近していたのだ。
始めは鳥かと思う者もいたが、そうではなかった。
風を切り裂くようにして向かってきたのは一人の少女だった。
少女は自分の背丈以上もある杖に腰掛けており、ニヤリとどこか得意げな笑みを浮かべている。
そして、ズドンと――。
ゴーシュたちの上を通過し、少女は少し離れた岩山に着地した。
いや、着地と言うよりも激突である。
岩山の根本が衝撃でえぐれ、辺り一面に土煙が上がっていた。
「い、今のは……?」
「誰かが突っ込んでいきましたけど……」
「というか、だいじょぶ?」
ゴーシュたちは思わず声を上げ、参加者たちも揃って少女が激突したと思われる岩山の方へと視線を向ける。
もうもうと舞っていた土煙が収まり、その中から少女は姿を現した。
「待たせたわね! 天才魔女パルクゥ・アライア、参上よ――!」





