転生発覚初日
――どこだ、ここは?
はっきりしていく視界には見たこともないような光を放つ筒状のものがある。全身がズキズキと痛む。悪寒もする。私は頭を巡らせた。声を出そうとして口を開けると、口の前には何かがつけられているようだった。ここがどこか知らなければ。私は起き上がろうとした。
「ゔっ」
私の全身に激痛が走る。私は首を動かそうとしたが、できなかった。首も固定されていて動かないらしい。少し動かせそうだったが、動かすと激痛が走った。顔には口と鼻を覆う透明なカバー状の物体。ガラスだろうかと思ったが、それにしては不思議に軽かった。
「すみません」
私は喋ろうとしたが、ろれつの回らない声になるだけだった。何もすることもなく、動くこともできないまま時間だけが過ぎた。首は回しても痛い。そして息が苦しかった。目を開けて数時間はしただろうかというときに、白い服の男が来た。そして私の顔を覗き込んで言った。
「夏村さん、おはようございます」
男は私の左側にある絵のようなものを見て言った。
「状態は安定してますね……あと1ヶ月ほどすれば、おそらく回復するでしょう」
私は起き上がろうと体を動かす。すると男は言った。
「安静にしておいてください」
私はここがどこか尋ねようと口を動かした。すると男は私の顔に手をやり、口元についていた透明なカバーのような物体を外した。
「酸素マスク外しますね」
私は口を一旦閉じて、それから話し始めた。
「ここは……どこですか?」
「ここは三重県立中央総合医療センターです」
「病院ですか?」
「そうです」
「あなたは?」
「私は真田三郎です」
「医者ですか?」
「はい」
「私はどうしてここにいるんですか?」
「交通事故に遭われたからです。全身骨折され、救急搬送されて来られました」
「それで……」
私は私の名前がザーリャであることを言おうとしたが、それはやめたほうがいい気がした。そもそも三重県という地名自体、私が知らないものだ。どこか遠い場所にいるか、或いはあの世か。どこにせよ、ここが私のいた世界ではないことはなんとなく察した。
「どうされました?」
真田がこちらを見ている。
「いえ、何でもありません」
『フランケベルグ』という地名はご存知ですかと聞こうとした。だが私が仕えていたサンダ王国の技術では、というか世界のどの技術をもってしてもであるが、魔法を使わずにこんな明かりを供給することは不可能だ。それに医者の服は黒である。白い服を着た医者など見たこともないのだから、ここは遠い世界、それも私がいた世界とは繋がりがない別世界なのだろう。
「ところで私はどれくらい寝ていましたか?」
私が真田に問うと、真田は枕元のカレンダーを見た。
「1、2、3……6日ですね。心配しなくても保険適用範囲内ですから、全額の3割です」
「そうですか」
保険というのはおそらく医療費を減額する制度のことだろう。この世界はなかなか生きやすそうだ。そう思った私は、真田の検査を受けてから再び深い眠りに落ちた。




