私!ヒロインじゃなかった!
マリアンヌさん視点です。
最終話です。
次の日、私はパチンと頬を手の平で軽く叩いて気合いを入れた。
皆様に応接室へと来ていただける様に連絡をして、私も応接室へ向かう。
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応接室へ入ったら、ラアド様がいらっしゃった。
「どうしていらっしゃるのですか?」
「僕も当事者だからね、僕からも皆に言っておきたい事もあるしね」
爽やかにそう仰ったラアド様。
いや、でもと悩んでると、私の後ろから「ラアド皇太子殿下」とソリン様の声がした。
恐る恐る後ろを振り返ると、皆さんがいらっしゃった。
あわてて私は挨拶をする。
「皆様、来て頂きありがとうございます、どうぞこちらへお座り下さい」
ソファーの長椅子へ皆様をご案内して、私は立ったまま皆さんの前に立つと、私の隣にラアド様が同じように立たれた。
ぎょっとした私は慌ててラアド様にもソファーにお座りいただくようお願いしたのだけど、聞いては頂けなかった。
ソリン様達も座ったままでいいのか、そわそわとしている。
それを見たラアド様が、皆さんに言った。
「皆、そのまま座っててくれ」
そして、私に頷いたラアド様。
私は仕方なくソリン様達に話しかけた。
「皆様、お集まり頂きありがとうございます。
そして、これ迄の私の行いを、皆様に謝らせて頂きたいのです、私は、自分勝手な思いで皆様の事を蔑ろにしてしまいました。
謝って許されるとは思いませんが、皆様のご婚約者様達にもご迷惑をお掛けした事をお詫びして、皆様の事を、もう一度考えて頂けるようにお願いしたいと思います。
これも自分勝手と思われるでしょうが、私がまず最初に皆様の為にしなければならない事だと思うのです」
そして私は「申し訳ありません」と深く頭を下げた。
そしたらソリン様達が慌てたように立ち上がり、「止めて下さい殿下!」と言われていた。
ままさか、私は隣のラアド様を見てみると、私と同じように頭を下げられている。
慌てて私は頭を下げたままラアド様に言った。
「ラアド皇太子殿下、お止め下さい!殿下が頭を下げる事はありません!!」
「いや、僕にも責任はある、ソリン、マージル、リック、クリス、僕はこの国の皇太子として、公平かつ真実を見なければならなかった、しかし、僕は、個人の欲望の為に皆にもさせてはいけない事をさせてしまった、赦してくれ」
そう仰ったラアド様に、ソリン様が話し掛けた。
「ラアド皇太子殿下、それを言うなら私も同じです、私は貴方が王になられた時に、隣に立ち誤った道を進もうとしたら止れる存在を目指して来ました、父の様に、私が貴方を止めなければならないのに、同じように進んでしまった、それはやはりマリアンヌ様が私の心を癒してくれたから、彼女の為に何かしてあげたいと思ったからです。
恐らく皆も同じでしょう、だから、お二人ともその様に謝らないで下さい」
私は、頭を下げたまま目に涙が溜まるのが止められなかった。
でも、ここで涙を見せては駄目だっと思いぐいっと手の甲で拭い、再度パンと両手でおもいっきり頬をひっぱたいた。
そして、私は頬を赤くしたまま、目に力を入れて頭を上げて皆を見た。
ラアド様も頭を上げられて、私を見ていた。
皆さんぽかんと驚いた表情をしていた。
だが、すぐに真面目な表情になり、私を見た。
「私は皆さんの事を利用したんです!なのに・・・」
「まあ、確かにそうかもしれないけど、あんなに僕の魔法研究を聞いて、一緒に考えてくれたのは嘘じゃないでしょ?」
「確かに、マージルのあのややこしい魔法の内容だけでも、ウンザリしますよね」
「酷いぞ、ソリン、お前も経済学ばっかりだろ」
「そうだな!俺には両方さっぱりだ!ガハハ」
「リックは、何にも考えてないだけだろ!」
「ホントに皆さんクセありすぎです」
「そう言うクリスも、経典バカじゃないですか」
それぞれが和やかに話して落ち着いた頃、ソリン様が代表して話された。
「まあ、私達は貴方に癒されたのですよ、マリアンヌ様、貴方が私達の話を聞いてくれたように、本当はパートナーである婚約者とよく話をして打ち溶ければ良かったのに、僕達自身が彼女達を蔑ろにしていた。
だから、彼女達の事は僕達の非です。
彼女達には僕達が向き合い、話し合ってどうするか決めます、だから、マリアンヌ様は、ラアド皇太子殿下の事をお願い致します」
そう言われて、ソリン様達は、ラアド様に挨拶をして部屋を出て行かれた。
私は彼らを引き止める事が出来なかった。
「皆さん、優しすぎますよ、私何をお返ししたらいいのか判りません」
「ああ、僕もまだ皆に見捨てられてなかったんだな、これから頑張って、皆に尊敬してもらえる皇太子になるよ、だからマリアンヌ、似た者同士一緒に頑張ってくれないだろうか?」
ラアド様が私に微笑みながら言った。
思わずその微笑みに顔が熱くなる。
そして直ぐに気を取り直して、頭を振る。
「いいえ!私とは似てませんよ!それに私ではやはりラアド皇太子殿下に相応しくありません」
そう言う私の頭に手を置いて、首を振るラアド様。
「それを言うなら、僕もこの国の皇太子に相応しくないよ、だけどその事が判ったのは、君のおかげでもあるんだよ、だから僕は君とちゃんと向き合い、やり直したいんだ、それに君も託されたよ」
「えっ?誰に?何を?」
「リズエリーテに、君と僕にこの国を良くなる様に導いて欲しいと、マリアンヌは眠らされて居たから聞いては無いだろうが、リズエリーテは最後にそう願っていた」
その事を聞いた私は驚いた。
あんなに酷いことをしたのに、リズエリーテ様は私の事を憎んで無いの?
「私、いつかリズエリーテ様に謝りたいです、そしてリズエリーテ様の願いを叶えて差し上げたいです」
「なら、やはり僕と一緒に頑張ろう、僕もいつか魔王に認められる王になりたい」
「ふふ、ラアド皇太子殿下、クロウ様は他国の王とリズエリーテ様は仰ってましたよ、魔王と呼ばれるのはもしかしたら、失礼なのかもしれないですね」
「そうなのかい?知らなかった、なら改めよう」
ふふっとお互いに笑う。
そして、ラアド様が真面目な表情になり、私を見つめる。
「マリアンヌ、これからの僕達の道は大変だ、皆に認められる王になるには、僕は今最底辺だろうから、だが、僕達は何が過ちか判っている、そんな二人でなら助け合って進んで行けると思う、だから僕と一緒にこれから歩んで行こう」
そう言って私に手を差し出す。
「わたし・・・」
言い淀む私にラアド様は再度話された。
「マリアンヌ、では、卑怯な事を僕は言うよ、君の償いができる道は、僕と共に在る事だよ、だから、僕のせいにして僕の手を取って欲しい」
ラアド様にこんな事まで言わせるなんて私は卑怯者だ。
「いいえ!私は卑怯者にはなりません、誠心誠意ラアド皇太子殿下とダリア王国に尽くします、不束者な私ですが隣に居て宜しいでしょうか」
そう言って私は膝を折って礼をして、ラアド様の手に自分手を乗せた。
私は決意した。
一般市民で普通のOLだった私に、どこまで出来るか判らないけど、いつかリズエリーテ様に会って、“良い国ですね“と言われたら、少しはお詫び出来たと思えるかもしれない。
いろいろあったけど、折角転生した命。
これからはラアド様と二人で考えて、進んで行こう。
二人で頑張って認められれば、きっと、ソリン様達も力を貸してくれるかもしれない。
前に立つラアド様に私が微笑むと、ラアド様も微笑まれた。
そして私の本当の人生はこれこら始まる。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
一応マリアンヌさんもハッピーエンド的に終わらしたつもりですが、どうでしょうか?
取り敢えずは、読んで頂いた方々が面白かったと少しでも思って頂けたら嬉しいです。