終わりの始まり
2016年 3月13日
何かの資料やガラクタの様なものが散らばった広い部屋に、5人の男性と3人の女性がヘルメットを覗き込んでいた。
未「あのさ、多々羅は明後日に開かれるPS VRのプレゼンテーションに行く?」
多「行く筈がない。俺達は明後日、もっと凄い事をするんだから」
彼らは些細なチャットルームで知り合い、そして刺激を求めた。
6年前におぎゃるがラボを創設し、本格的に動き始める。
最初のオフ会以来、ラボに通うようになり、2年前あたりからは皆がラボに寝泊まりするようになった。
そして、彼らは完成させた、VRMMORPGを。
ソ「いや~、最初おぎゃるを見た時、『何だこのガキ』って思ったけど、本当にやってのけるとはね~」
お「ソル、私に会った時そう思ってたのか」
ニ「ソルさん、駄目ですよ。少女に向かってガキって呼んじゃ」
お「ニッコリは私を子供扱いするな!もう私は16だぞ!」
最初のメンバーは8人だった。
未来、ソル・ガレン、ニッコリ、リュカ、うけ、みけ、おぎゃる、多々羅
しかし、今ではラボメンの構成員は42人となっていた。
み「お兄ちゃん、楽しみだね!」
う「ああ、そうだな…明後日、僕達は仮想世界にいるのか…」
未「明後日なら皆の予定があうからねって、自分の妹の前でそのニヤケ顔はどうかと思うぞ?」
ソ「それはいいけど、何かのアニメみたいに出れなくなったり、その世界の死が現実に繋がるっていうのとか大丈夫なの?」
ソル・ガレンの言葉に反応し、その場の7人はおぎゃるを見る。
するとおぎゃるは自信満々の顔で語り始めた。
お「大丈~夫。理由は、このヘルメットをインターフェイスを用いて、RNAウイルス、つまり『レトロウイルス』を情報伝達手段として応用する。そして、レトロウイルスにVRML(自作)を上書きすることにより、インターフェイスを用いて、直接自分の脳内に映像を写し出す。ここまでは、視覚と聴覚の情報を再現出来ている。
残りの触覚、嗅覚、味覚の再現は、視覚と聴覚とサブリミナル効果を使う事により、シナスタジアを全員に起こさせる事によりクリア。
まあ、こういう事だから安心してくれていいぞ」
多・み・ソ・ニ「………zzz」
未「…何が安全なのかさっぱり分からないのですが」
う「何か、の、呪…zzz」
リュ「もう少し簡単に説明して欲しいのですが」
お「は~…簡単にいうと、痛みを感じると言っても精神的なものであるし、あまり大きな痛み、つまり信号を送る事はこのインターフェイスでは不可能。何故なら、ウイルス侵入を防ぐためにダストルームを作って、そこに多大なシステムを使っているからだ。
そして、ログアウト機能も付けてあるから安心、分かった?」
おぎゃるが話終わり、皆の方を向くと、いつの間にか寝ていたメンバーまで起きて、安心だと認識したらしくVRMMORPGで何をするか話あっていた。
お「お、お前達ー、私も交ぜろーー‼」
2016年 3月15日
8人はある学園の体育館にいた。
あたりはもう暗くなり、7時を回っている。
しかし、体育館には8人を除いた34人の人達が集まっていた。
多「ソル、お前よく体育館なんて貸してもらえたな」
ソ「ふっ、学生達の目標になって面倒をみてやっていたからな」
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『回想』
生徒達と先生の前で5キロを爆走、鉄棒を使った5回宙返り、サッカーで生徒全員に対しボールを1時間独占ドリブル、野球でボールが金網を突き破る等の超人技を見せつけるソル・ガレン。
しかし、ソル・ガレンはそれを、爽やかな笑顔を必ず生徒達に向けてやっていた。
そして、先生が生徒に言う。
先生「いいか!!あんなチャライひょろ男でも出来るんだ。あんなのに負けたくない生徒は日々の鍛練を怠るなよ!」
男子生徒一同「うおー‼むかつくー‼ぜってい、ぶっ倒す!!」
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ソ「生徒皆が俺を熱い眼差しで見てくれたよ」
多「そっか。…おっ、おぎゃるが演説するみたいだぞ」
体育館のステージにおぎゃるとリュカの二人が立つと話し始めた。
お「え、えーっと、お、お前達のお、おひゃげ(お蔭)で、無事、え、えと、完成する事が出来た。か、感ちゃっ!?痛っ!」
おぎゃるは、がちがちで言葉を噛みまくり、最後は自分の舌を噛んでしまったようだった。
多「…あいつ、大勢の人の前だとてんで駄目だな」
ソ「この人数は大勢っていうか?」
リュカは、おぎゃる慰めた後、代わりに演説を始めた。
リュ「皆さんの資金調達、資材調達のお蔭で無事、私達が求めたVRMMORPGを完成させる事ができました。本当にありがとうございます。 そして、ここで再確認しますが、これを世間一般に言い触らさない事を約束して下さい。これは、現段階では細かい設定が多過ぎる事、また、使い方によっては危険な代物なためです。これを、約束出来る人はインターフェイスを着用しても構いません。これで私からは以上です」
一同「「「いえーーーーーーーい!!!」」」
リュカ達の演説が終わると他の人達がいきなり喜び始めた。
そして数分後、マットの上に横になりインターフェイスを全員が着用するとカウントが始まった。
一同「3!!」
多「俺の武勇伝を刻むとき」
み「昨日寝れなかった程楽しみにしてた~」
ニ「同じく」
う「みけ、まだ若いんだから、ちゃんと寝なきゃ」
一同「2‼」
お「う~、舌が痛い」
リ「さっきあげたお薬、即効性だからすぐ楽になるよ」
ソ「(親子に見えるのは俺だけだろうか)」
一同「1‼」
未「今までの時間も悪くなかったけど…いよいよか」
『ッブツン』
ここから僕達の、終わりの始まりだった