7。元蒼馬、現奇人に矯正転生させられた世界でアモリア侯爵やってます。※ソーマ視点
久しぶりの投稿!タイトルにあるように前回の人物視点です
通学中に斜め前に空間が裂けている穴が見えた。
「異世界につながる穴?」
自分の幻覚じゃないかと思い、頭を振ってみたががそこは裂けたままだった。
―――まるで『おいでおいで』と言っているかのようだ。
「ありえねーだろ……」
何があり得ないのかと言えば二つある。一つ目は空間が裂けていること。二つ目は、どこぞの携帯小説のように主人公が迷わず飛び込むことだ。これがテンプレだとしたら主人公は迷わずに飛び込む。
確かに俺も異世界ファンタジーに憧れるよ?だが自分の今の生活を捨ててまで行きたいか、と言われれば……「ありえねーだろ」である。
そもそもそこに裂け目などなく俺の幻覚で、入ろうとしたら通り越して壁に衝突とかになったらめっちゃ恥ずかしい。
だから、少し入りたいと思ってしまっても、無視。そう穴を無視して帰ろうとした時。
―――トラックが迫ってきた。
そう認識した途端、穴から手が伸び文字通り後ろ髪を引かれた。というか、髪をつかまれてものっそい力でグイッと引っ張られた。何本か抜けたかも。
そして何かよくわからない空間を通って何もない空間に来たなぁと思ったらイケメン男の前にいた。意味が分からない。
「踊場へようこそ。さぁてキミは確か自分から裂け目へ飛び込んでくれたんだよね?うんうん勇敢なのはいいことだねぇ!褒めてあげよう!」
再度いう、意味が分からない。
「……」
そもそも、踊場って何だ。それに俺は自分から飛び込んでなどない。髪をつかまれただけだ、何本か抜けたかもしれねぇ。ツッコミどころ満載!
そう思いイケメン男の手を見ると案の定、黒い髪が付いていた。禿げたらどうするよ?
「あ、踊場っていうのは世界と世界の間のことだよ。」
思考を読んだのか。絶対にないと思うが、ないよな?
そうなら少し、ほんの少し、ドン引きかもしれない。
「……禿げたら責任とれ」
「ああーごめんね。流石にほとんどオールオッケーなボクでも男は対象外かなぁ」
「………。いや育毛剤買えってことなんだが」
「あ、そゆこと?はい、どうぞ」
彼がそういうとともに俺の頭に何かが落とされた。痛っ!
「なんだ、育毛剤か。ってか頭に落とすな!って今それどっから現れた?!」
上に穴でもあるのか?
「あ、魔法だよ?ボク神様だからさ、こんくらい簡単ってわけ。上に穴はないよかっこわらい」
都合悪い部分だけ聞き逃すこの神様(笑)がムカつく。こいつ思考読んでいるよな?いくらなんでも顔に出ないよな、そこまで。
たしかに、外見は妖艶な(男に使うかはわからないが)16位の美青年さんであるとみとめよう。黒いが艶っぽい髪、角度によって琥珀色にもコガネ色にも見える瞳を持った目はパッチリ開いていると認めよう。唇は薄いが大きさも顔と黄金比で色もいいのは認めよう。全身から漂うすごい色気で男の中でも抱いてほしいと一瞬思う人が出てきてもおかしくないなくもないことも、認めよう。
だがしかし、神ってこう、もっと威厳があるものではないのか。宗教画に書かれるように威厳があって、同時に慈愛にあふれているものではないのだろうか。
断じて精神病院にお世話になっているような方ではないはず。髪の毛掴んで誘拐するような方ではないはず。人の頭に増量サイズの育毛剤を落とすような方ではないはず。
こんなイッチャッタ男が神様でいいのか……?
イッチャッタ神様は俺の内心にかまわずしゃべりだす。
「それでボクはキミを移転させてあげようと思う。剣と魔法の世界だよ?興奮するでしょお?」
いや、もしかして?!と思い初めは少しだけあったと言えなくもない。だが、神様(笑)としゃべっているとその興奮が萎えてきたのだが。
「やさしいからチート能力もつけてあげるよ?」
ん?チート?それは男として心が躍る言葉。
「うんうん。あのね、魔法の世界っといったじゃん?んであの世界には3種類の魔法があるわけ」
ほうほう。そんなのあるのか。
「一種類目が生物魔法。これはさらに肉体操作魔法と精神操作魔法に分けられるわけ。二種類目が物質魔法。これはさらに物質操作魔法と物質創造魔法に分けられる。三種類目が時空魔法。これはさらに時間操作魔法と空間操作魔法に分けられる。」
あ、テンプレートに火、水、土、気、雷ではないのかと思う。
「どれか一つチートにしてあげるけどどれがいい?」
ん?あれ?
「え、まさか移転は決定?」
「当たり前でしょ。自分から飛び込んだ勇者のくせに……」
「いや、お前が髪をひっぱたんだろうが!」
「気のせいじゃない?あらあら、そーまちゃん照れちゃってぇ」
ちなみに蒼馬は俺の名前である。森田蒼馬。
「しねよ」と言って軽く回し蹴りをしようとするが、流石神。「うぉっと」かすりもしなかった。と言うか俺が身体のバランス崩して倒れた。
「いってぇな」
「そーまちゃん暴力はよくないよ」
じゃあ仮に移転するならどれにするかと考えて割と真剣に悩む。
やはり…物質魔法か。
「質問だが。物質魔法ってさらに属性あるのか?」
「あるあるー」
興味があるな。やはり氷とか水とか先どほいった四つか?
「炎、水、土、風、雷」
テンプレー……。と言うかもろ想像通りでがっくりきた。いや、嬉しんだけれども。
「それは愛称でねでね。正式には炎は『燃焼』水は『液体』土は『金属』風は『気体』雷は『電気』」
ず、ずいぶん科学的です、ね。
「んでどれにする?」
液体ってよくね?毒とか操れたら最強じゃね?
「物質魔法の液体で」
「決断はやっ!」
うじうじ悩めと?
「俺をそこらの女子と勘違いしているのか?あ、あと、ラノベでもこういう時はぱっと決めるから」
そう言ったら神様が黙り込んだ。え、いいの?てっきり嫌味の一つ二つ言うのかと思ったがまさかまさか考え事?あらま。
「……」
「じゃあ、決まったから移転だよぉ。あ、身体能力もアップしてあげる」
え、仮にの話じゃなかったの?ちょまっ、家族はどうなるのか、学校は?親友は?
そう問おうとしたとき、神様の口が動き綺麗に弧を描いたのが見えた。
「君はね、向こうでは行方不明になってるんだからさ」
――――楽しんできてね
ルナカルス「あれ?あれれ?神様の目……」