靄であって靄でない
『ロノウェ Lv.155
属性:物理・打撃 魔法・闇
耐性:物理・斬撃 魔法・闇
スキル:『靄の悪魔』『闇黒魔法』『血染め』『呪魔法』』
ロノウェは自身の周囲と私に向かっての扇形にMPを広げる。
恐らく先程と同様の靄。サニーは無視するようだ。
自分自身の防御と私への攻撃を同時に行うつもりらしい。
『『多重魔法』『フレイムバレット』』
靄が私の足元に到達するよりも早く、サニーは魔法を発動。
突貫はサニーの魔法の後だ。
私の最高速度はいくらサニーのINTが高かろうと魔法のスピードよりも上だ。
我ながら結構異常だな。
『フレイムバレット』の9重。
計63発の爆発する火炎弾が私とロノウェとの間の地面に次々と叩き込まれる。
粒だった炸裂音が絶えず響く。
手前側から爆破してくれたからこそ、分かる。
行ける。
――歩法・撃法混合 風蝕
爆炎が未だ収まらぬ範囲もあるけれど、地面を砕きつつその領域に向かって行く。
WJOは基本現実の物理法則に従っている。
勿論魔法など理外のものも多いけど、少なくとも魔法に伴う事象は物理法則の中だ。
例えば、魔法による爆発の風や反応時間、とか。
数多の爆炎が荒れ狂う中を風蝕の連続使用で強引に直進。
現実じゃあ絶対に出来ない。
まぁ、まず風蝕の連続使用が出来ないんだけどね。
ただ現実を優に超えるAGIやスキルの補助によって、この世界では出来ることが多い。
最初の頃は全盛期の肉体よりもよっぽど弱かったのにね。
中々に感慨深い。
とは言え、まだまだ私の反応速度には余裕がある。どこまで制御できるか、楽しみだ。
その楽しみの為にも――
「お前を、斬る」
地面を覆う黒い靄。
これはMPに由来する。でもそれ自体はサニーではさっきの様子を見るにどうしようも無かった。けれど、そこから生じる手は別だったようだ。
多分『呪魔法』だと思われるそれはかなり珍しいのに、サニー見たことあったのかな?
私の配信?
それとも博打で、迎撃できないかなってノリだった?
まぁ、どっちでも良いか。
ミスってたら揃って死んでたかもだけど、成功してるみたいだし。
63発もあれば距離がそこそこあってもカバーしきれる。
と言うか、かなり過剰だったようでロノウェの周囲を視界を奪う目的か何度も爆撃している。
そのおかげで、私の安全性も上がっているのかもしれない。
靄はそのままながら、手は一切姿を見せない。
靄の下に発動していた魔法を消し飛ばした、とか?
いや、それだと魔法で靄を突破できていなかったのと矛盾する。
靄の上に手?
どちらかと言うと、靄を発動媒体にしてる方が納得がいく、か?
後でにしよう。
ロノウェとの距離は10m。
時間にしてコンマ2秒。
「『散魔対斬』」
滾る火炎を束ね、駆ける。
流石に風蝕は5歩程で止めている。
だが、十分に加速した後なので問題はない。
HP的には結構キツい。
特に今はSTRとVITに10%ダウンのデバフ食らってるし。
反動ダメージで2割程削れている。だが、ロノウェの攻撃を受けなければいいのだ。
いつものこと。
――斬法 箒星
一切のエネルギーを鋒に込める。STRも減少しているので、出来得る限りの火力は出したいところだ。ロノウェの靄の強度を把握できていないからこそ、全力で。
ロノウェの反応は然程速くない。
ムルムルやフルカスに比べれば亀にも等しい。
私達はコンマ1秒の世界で戦っているのだから、僅かな差でも大きく異なる。
だが、それだけでなんとか出来る程甘くなかった。
「鋭い、がそこそこ止まり。…………魔法使いの方がマシだな」
「そりゃそうでしょう。あの子の方がこの世界に馴染んでるんだから」
表層は壊せた。
けれど、刃はそこで止まっている。
数mm程度で止まるとはね……、流石にショックだね。
何か硬質なものを突いたような感覚。さっきは粘性を感じたのに。靄とは一体……?
でも、『散魔対斬』は有効なのは確実とみていいね。
問題は私の攻撃力。90%になっていてこれだとデバフ無しでも完全には破壊しきれないか。
じゃあ、どうしたものかな?
「失せろ」
「どうせなら私とも仲良くしてよ、ねッ! 『散魔対斬』」
鬱陶しそうに振るわれた右腕、そこに刃を合わせる。
――斬法 廻殃
ロノウェの右腕の分のエネルギーを受けて、刃を回転。袈裟斬りに転換。
また、同時かつ反対側からロノウェへ巨大な火矢が突き刺さる。
当然こちらは靄は表層が削れる程度。
サニーの『ファイアアロー』も効いてない。
靄が薄皮程度減ったって魔法が効かないままなのは、そりゃそうとしか言えない。
さて、本当にどうしようね? さっき以上の出力となるとデバフ無しかつ風蝕で加速して剛咆を叩き込む位しか無いよ? ただそんなことこいつがしてくれる訳無いし。
完全な不意打ちならどうだ? どうにかして試さないと。
足元、否ロノウェを中心としてMPが広がる。
靄か『ダークネスバースト』。
バックジャンプにて仕切り直し。
流石のサニーでも私がいる場所の魔法を迎撃は出来ない。
また、『散魔対斬』を使っていてはロノウェの直接攻撃に対処できない。
今はVITも下がっているし、普段以上に一撃一撃が致命となりうる。
慎重にいかないと。
『『ファイアエンハンス』。STRを上げる魔法な。3割位の上昇、あと攻撃すると物理ダメージ以外に火属性ダメージ入るようになる。調節は、まぁガンバ』
「了解。ありがたけど、MP消費は平気?」
『MPポーションで大量の釣りが出とるわ』
ならば、良し。
「どうにか防御をぶち抜く方法を探る。暫く耐えられる?」
『応ともさ。あと、今度魔法封じ対策探すの手伝って』
「勝てたら、いくらでも」
攻撃力はサニーのおかげで多少はマシ。
でも、これだけじゃあ足りないだろう。
だから、更に追加だ。
「『サンダーエンハンス』」
『エンハンス』系魔法は属性ごとに引き上げる物理ステータスが異なる魔法。
共通しているのは、対象へステータスと物理攻撃時に属性ダメージを追加するバフと言う点。
属性ダメージのイメージとしては、火の着いた松明とかかな?
打撃と火との二重苦。
兎も角、『サンダーエンハンス』はAGIのバフ。
とは言え、私のINTでは1割ちょっと。
調節が面倒くさいから配信外含めて殆ど使った事無いけど、今は四の五の言っていられる場合じゃない。
距離があるのでHPとMPのポーションをそれぞれ飲み干して、瓶はざつにロノウェへ投げつける。
ロノウェ自身が纏う靄の前には意味を成さない。
憂さ晴らしにもならないや。
まぁ、良い。
いつも以上に加速していこう。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。
今回全然話進んでないですね……。




