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お面ライダー ~かのライダーを愛するすべての人へ~  作者: 伊部九郎


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第36回 “新必殺技”

 その直後、先ほどM2機関銃を発射した人物と同じグレーの戦闘服を来た男たちが96式装輪装甲車の後部からバラバラと10人ほど降りて来た。皆、手に自動小銃を抱えていた。

「ここからはこちらで処理するから、君たちはもう引き上げていいぞ」

「わかりました。しかし、4号さんと6号さんが到着するの早かったですね」

「お面スーツにはGPS機能があって、支部でどのお面ライダーがどこにいるかは常に把握しているんだが、キミの信号が運送会社の中でしばらくの間動いていなかったので、これは何かあったと思い、すでに4号と6号が向かっていたのだよ」

「あ、そうだったんですね。助かりました」

 弘がそう答えてから、二人で1号にお辞儀をして門の方に歩いて行った。

 治郎が途中で振り返ったら、戦闘服を来た男たちはニョッカーの雑兵をロープで数珠つなぎに縛っているようだった。

「ふう。さすがに今回はちょっとヤバかったな」

 歩きながら変身をとくと、弘は、右後ろを歩いていた治郎の方を振り返って言った。

「そうだな。ちょっと無茶し過ぎたな。いままでは夢中でやってたけど、他のお面ライダーさんたちの戦い方を見てたら、やっぱり俺たちって素人なんだなあと思ったよ」

「ホントだな。見事なコンビネーションだったもんな」

「うんうん」

 そんなことを話しながら、二人は自分たちのマシンのところまでたどり着くと、その日はそのままそれぞれの家まで帰って行った。



 弘と治郎は、これで自分たちの街は平和になると思っていたが、実際はそうはならなかった。

 それからも、市内の色んな場所で改人と黒ずくめの雑兵の姿が目撃され、ニョッカーは、まだ市内でなにかを行っているようだった。

 そのため、お面ライダーも、4号と6号が引き続きこの地に残り、そのニョッカーの企みを調査しつつ、改人の掃討も行っていた。

 弘は、時々、他のお面ライダーに呼び出されては改人退治の加勢をしていたので、お面スーツの特性にも慣れて、以前よりはスムーズに戦えるようになっていた。

 ただし、治郎が指摘した通り格闘センスが根本的に欠如しているので、戦いぶりは相変わらずカッコ悪いままだった。


 そしてその様子を何回か動画を撮られてYoutubeにアップされていた。

 弘以外のお面ライダーは、ニョッカーとの戦闘に手慣れているうえ、戦闘力も弘とは段違いに高いせいで動画を撮られる暇もなくニョッカーを片付けてしまうので、動画を撮られるのはいつも弘だけだった。

 お面ライダーの日本支部と日本政府は、ニョッカーの存在が公に認知されると一般市民にパニックを引き起こす恐れがあるという懸念から、報道管制を敷いてそれ以上テレビや新聞で報道されぬようにすると同時に、Youtubeにアップされたものはすぐに閲覧不能にする措置を取った。

 それでも、アップされた直後にその動画を観た人間が少なからずいたため、市内にとどまらず日本中で話題になっていたが、それが本物なのか加工された動画なのかは、弘の闘う姿があまりにもカッコ悪くて素人然としているため、皆、半信半疑という状態だった。


 ただ、弘たちの住んでいる東洋市では、実際に目撃した人からの口づてで、改人とお面ライダーが本物であるというのが一般的に認知されていた。

 目撃した人の中には、雑兵に拉致されそうになった人とか、改人に襲われそうになった人もいたので、お面ライダーを正義のヒーローとして賞賛し感謝していた。

 そのうち、女子高生を中心にして勝手にファンクラブが出来上がり、目撃した女性からは黄色に声援が飛ぶまでになった。


 しかしながら、弘も治郎も、その状況を少しも喜んではいなかった。むしろ、そばにいられると危害が及ぶ可能性があるためいつもハラハラしていて、いつの頃からか、そばに一般市民がいるときは治郎が彼らを守るためにそのそばについているという状態になった。

 そのため、余計に動画には映らなくなっており、結局、弘が戦っている動画に治郎の姿が映ることは1度もなかったが、ニョッカーから秘匿するという意味で、これは二人にとっては好都合だった。


 そして二人は、何度も危ない目に会いながらも、ヒーローとヒーローの相棒になったことが嬉しくて楽しくて、今日も名コンビとしてニョッカー退治を続けるのだった。


「ん?その右手の拳どうした?絆創膏2枚も貼って」

 治郎が弘に聞いた。

「いやー、昨日、会社でカッター使って紙切ってたら手が滑ってかなり深く切っちゃったんだよね」

「あらー、大丈夫かよ・・・って、お前右利きなのになんで右の拳切ってんだよ」

「いや、角度的にやりにくい箇所があって左手に持ち替えてやったら、やっぱりうまくいかなかった」

「あーあ、ドジなのにそんな無理なことするから」

「うるせー、ドジは余計だ!」

 繁華街の中華料理屋で昼飯を食べながらそんなことを話していると、お面ライダー4号から弘のスマホに電話が入った。どこでも変身できるわけではないので、電話はスマホにかけてくれるよう弘からお願いしてあった。

「西神町の公園にニョッカーが現れたんだが、私たちは少し遠いところにいる。キミはどうだ?」

「ここからなら近いです。すぐ行きます」

 弘はそう答えて、治郎とすぐに出動した。


 公園に着くと、体格のいい3人の男性を5人のニョッカーの雑兵が捕まえてワゴン車に乗せようとしているところだった。3人ともかなり抵抗したらしく、ズボンの膝か破れたり、顔から血を流していたりした。

 弘は、ブリザードから降りると走りながら「変身!」と叫んで変身した。そして、瞬時に雑兵のところまで到達すると、雑兵のひとりを右回し蹴りでぶっ飛ばし二人目を右のパンチで殴って、これもぶっ飛ばしたが、直後に右手を押さえてうずくまった。

「おい!どうした!」

 後ろから駆けて来た治郎が言った。

「カッターで切ったとこが痛くてパンチは無理みたいだ。切れた傷口は加圧で左右から押さえつけられてるから普通にしてたら痛くないけど、正面からの衝撃はそのまま受けちゃうみたいだな」

「えー!?大丈夫かよ。戦えるのか?」

「うー、左手と足でなんとかするしかあるまい」

 しかし、利き腕ではない左手と足だけでは勝手が違ってなかなかうまく雑兵を倒せなかった。

 それでも、弘が雑兵を引き付けてくれている間に、治郎は3人をワゴン車から助け出し、公園から外に逃がしていた。


 弘のところに戻ったら、牛のような見た目の改人が現れて弘と戦っていた。


「なんだそのぬるい攻撃は。バカにしているのか!」

 と、改人が弘に言った。右手をかばっての戦闘は、弘の動きをかなり悪くしていた。

「困ったぞ・・・あ、そうだ!」

 そう言うと弘は、いったん後方に飛び下がってから全力で改人に向けてダッシュし、改人との距離が10メートルぐらいになったとこで、ジャンプして頭から改人に突っ込んだ。

「ふ、そんな攻撃、簡単に止められるわ。返り討ちだ」

 と、怪人は両手を前に出して待ち構えた。

 次の瞬間、弘は「ふるぁいーーーーんぐ」と、言いながら右手を後ろに引いてから左手で改人の手を横に払い、

「びんたーーーーーー!」

 と叫びながら、右手を開いて右フックのような軌道で改人の左の頬に思いっきりビンタを食らわせた。

「ボキッ!」

 というすごい音がして、顔を右に向けたまま怪人は昏倒した。

 しぱらく、ピクッピクッと痙攣していたが、それが止まったかと思った瞬間に爆散した。


「なんだ今の攻撃は?」

 治郎が弘のところに歩いて来て聞いた。弘がもたもた戦っている間に、雑兵は治郎がすべて倒していた。

「いやー、拳がだめでも手のひらは大丈夫だろうと思ってね。こんなに効くとは思わなかったけど」

「しかし、なんちゅう技の名前だよ」

「いやー、とっさだから思いつかなかった。まあ、ビンタの英語も知らないしな」

 と、弘は笑った。

「しかし、なんか拉致されそうになってた人たち、3人ともすごくいい体格してたね。どうしてここに集まってたんだろ?」

 弘が言った。

「あれあれ」

 治郎が弘の右後ろのビルを指さした。それから、

「俺も通ってたことあるんだけど、あそこの3階と4階がスポーツジムになっててね。かなり体力のある人が結構な数いるんだよ。それで、ニョッカーはその帰りを襲ったんだろうな」

 と、言った。

「あ、なるほどねー」

 弘は納得し、二人してその場を引き上げて行った。


 しかし、その直後、その動画がYoutubeにアップされ、少数ではあったが、それを見て技の名前を聞いた人たちからまた笑われてしまっていた。


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