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第35回 “バトル・バトンの威力”

 治郎が門の方を振り返ると、まず、お面ライダーの乗ったオートバイが2台入ってきて、続けて、8輪の兵員輸送車も飛び込んできた。

「おー、増援だー。右が赤いスーツだから、あれがきっと1号さんだな。青い人は何号さんだろ?しかし、あの8輪車、もしかしたら96式装輪装甲車じゃないの?色が紺色だから自衛隊のじゃないみたいだけど、自衛隊じゃなくてもあんなの手に入れられるんだー」

 https://ja.wikipedia.org/wiki/96%E5%BC%8F%E8%A3%85%E8%BC%AA%E8%A3%85%E7%94%B2%E8%BB%8A


 治郎が感心してつぶやいていると、その96式装輪装甲車の上部にあるハッチが開いて濃いグレーの戦闘服を来た男が上半身を出し、その前にあるM2機関銃を構えた。

 その直後、1号がオートバイから飛び降りると、

「離れろ!」

 と、タコデビルと戦っている4号たちに向かって叫んだ。

 4号と6号は、タコデビルの方を向いたまま瞬時に30メートルほど後方に飛び下がった。

 弘は、なんだかわからずに4号と6号を交互に見てから、

「あ!」

 といって、タコデビルに背を向けるように振り向いてから前に飛ぼうとしたが、その背中にタコデビルの触腕の1本が飛んできて弘を弾き飛ばした。

「痛てー!」

 弘は、そう叫びながら入って来た金網の方向に吹っ飛ばされてその金網に叩き付けられ、その下に落下した。

「あ!弘!」

 治郎は、そう叫んで弘の方へ駆けて行ったが、弘は、

「痛てててて」

 と言いながら、両方の肩甲骨を狭めるような姿勢で立ち上がってきた。


 その直後、ものすごい轟音とともにM2機関銃の12.7㎜弾がタコデビルに向けて連射された。

 しかし、タコデビルは、余裕の表情で6本の触腕を目にもとまらぬスピードで振り回し、その弾丸をすべて弾き飛ばした。

 弾丸の1発が治郎の足元の地面にも飛んできてめり込んだので、治郎は、驚いて立ったまま一瞬固まった。

 しかし、その直後、弘が治郎の目の前に移動して来て立ちふさがった。

「おい治郎!大丈夫か!」

 弘は、少し後ろに視線を向けながら言った。

「ああ、当たらなかったから大丈夫だ」

「なら良かった・・・痛てててて」

 弘はそう言いながら、右手は上から、左手は下から痛そうな背中を触ろうとしたが、全然、届いていなかった。

「お前、体固いんだから無理だろ」

 治郎は後ろから冷静に言った。


 M2機関銃の斉射は止まったが、タコデビルは何事もなかったようにその場に立っていた。

「ふん、無駄だ無駄だ。私を機関銃などで倒せると本気で思っているのかね」

 そう言いながら不敵な笑みを浮かべた。

「くそっ!さすがタコデビル!」

 1号が忌々しそうに言った。

「だから、その名前はやめろと言ってるだろ!」

 と、タコデビルは怒って怒鳴ったが、1号は無視するように、

「しかし、ハデに弾き飛ばしてくれたな」

 と、言いながらタコデビルの後ろの建物に視線を送った。

 その視線を追いかけるようにタコデビルは建物の方を振り返った。建物の壁の数か所に、タコデビルが弾き飛ばした弾丸がめり込んでいた。

「あー!あー!あああーーー!」

 タコデビルは、そう叫びながら弾丸がめり込んでいる場所に向かって駆け出した。

「チャンス!4号、6号、44号、サンダーボルト・ライトニングだ!」

 その様子を見て1号が叫んだ。

 それを聞いた4号と6号は、バトル・バトンの一番下を右に回した。すると、その上端から尖った切っ先が飛び出した。それから、二人はタコデビルに向かって突進した。

 弘は、その様子を見て自分も同じようにバトル・バトンの下をひねった。

「おわっ!こんな仕掛けになってるのね」

 驚いた声でそう言ってから、弘はタコデビルに向かって突進した。

 4号と6号は、壁の弾痕に気を取られているタコデビルのお腹と腰のあたりにバトル・バトンを突き刺すと、右手の親指でバトル・バトンの手元のところを押した。

 途端にバトル・バトンから強力な電撃が放たれた。

「ぐああああーーーー!」

 タコデビルは動きを止め苦しそうに絶叫した。

 弘も遅れてタコデビルのところに到着すると、背中の真ん中にバトル・バトンを突き刺した。それから、

「えーっと、これかな?」

 と言いながら、4号、6号と同じようにバトル・バトンの手元のボタンを押した。

「うぎゃあああーーーー!」

 タコデビルは、再び絶叫した。

「よし!離れろ!」

 1号がそう言うと、4号と6号は、バトル・バトンをタコデビルに刺したまま手を放して後ろに飛び下がった。弘は、二人のその様子を見てから、回れ右して前方に飛びタコデビルから離れた。

「とうっ!」「とうっ!」

 1号と青いお面ライダーが、そう掛け声をかけて大きく上にジャンプした。その高さは、弘のジャンプの倍はあった。

「高けー!」

 治郎は驚いて言った。


 1号と青いお面ライダーは、ジャンプの頂点に達すると、声をそろえて、

「ダブルお面きぃーーーーーーーっく!」

 と言って、タコデビル目がけて降下した。

「技の名前、お面キックで合ってたんだー!・・・ウソでしょ?」

 その掛け声を聞いた治郎はつぶやいた。

 ダブルお面キックは、見事にタコデビルの胸のあたりに炸裂して、タコデビルを激しく地面に叩き付けた。

 それから、二人は後方に高くジャンプすると、空中で伸身の後方2回宙返りと半回転ひねりをして、治郎の方に向いて片膝をついて並んで着地すると、ゆっくりと立ち上がって胸を張った。

 その直後、タコデビルは爆散した。


「うおー!かっけー!やっばり本物は違うー!」

 治郎は激しく感動して、目をウルウルさせながら叫んだ!

「俺も一応本物なんだけど」

 治郎が声のした方を見ると、そこに弘が腕を組んでこっちを向いて立っていた。お面ライダーのマスクがあるため、怒っているのか睨んでいるのかはわからなかった。

「ああ、いやー、それは・・・・どうかな?」

「まったく!・・・まあ、他のお面ライダーさんたちに激しく負けてるのは認めるけどね」

 弘は、そう言って、残念、という感じのポーズをとった。


「二人とも大丈夫か?」

 1号が弘と治郎のところに歩み寄って来た。

「あ、はい。なんともないです。ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

 弘と治郎は1号にお礼を言って深々と頭を下げた。

「しかし、移送基地をこんなに早く突き止めてくれるとは、助かったよ」

「いえ、火曜日にネズミ男がこっちに向かってたんで、こっちが怪しいと予想して来てみたら、たまたま当たりだっただけです」

「いや、それでもその推理は素晴らしいよ。ありがとう」

「いえ、とんでもないです」

「でも、二人だけで踏み込むのは感心しないな。こういう場所なんだから、ニョッカーが大勢いる可能性は高いからな」

「すみません、こっそりと様子を見るだけのつもりだったんですが、守衛に見つかって人を呼ばれちゃったんで、成り行きで突入しちゃいました」

「そうなのか。だが、今度からは見つけた時点で報告して欲しい。何があるかわからないからな」

「はい、今回ので懲りましたので次回からはそうします」

 弘は頭を下げながら言った。それを見た治郎も、一緒に頭を下げた。


「ところで、一つ質問が」

 弘は言った。

「なんだね?」

「さっき、6号さんに聞こうとしてたんですが、皆さんの後頭部には何も書いてないのに、俺のヘルメットの後頭部に44と大きく書いてあるのはなぜなんです?」

「ああ、そのことかね。それは、当初の予定では、一桁のお面ライダーがいればニョッカーの悪だくみを阻止できると考えていたので、お面ライダースーツは9つしか作らないはずだったんだよ。そのため、9号までは色やスーツに入っているラインの形状を変えて、スーツのデザインで識別できるようにしてあったんだ。しかし、予想以上にニョッカーの規模が大きく、対応するためにお面ライダーを増やし続けたので、10号以降は10人ごとに同じ色とデザインになったんだ。しかし、それでは見ただけで何号だか識別できないので、ヘルメットの後頭部に大きく数字を入れたんだよ」

「あー、そうなんですね。でも、それって10号以降のライダーさんからクレーム出たりしてないですか?」

「どうしてだね?遠くからでも何号だかわかると好評だが」

「え?それって、組織の役員さんとか、一桁の番号のライダーさんたちの感想だったりしません?」

「ああ、まあそうだが。それが何か」

「いえ、なんでもありません」

(10号以降の人たちは、みんな、きっと気を遣って言わないんだな)

 弘と治郎は、同時にそう思った。

「9号までのそれぞれの色は、私、1号が赤、ここにいる2号が青、3号が白、4号が黄色、5号が茶色、6号が紫、7号が水色、8号が灰色、9号がライトグリーンだ」

「なるほどー。じゃあ、40号台の人たちは、皆、俺と同じモスグリーンなんですね」

「そうだ」

(ふーん、青いのは2号さんなんだ)

 弘と治郎は、同時にそう思った。


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