05 この世界を知ろう(その2)
いま私がいる場所についても教わった。
クリスの家があるこの森はミンタカの森と言い、良質な薬草、特にキュアグラスがよく取れる事で有名になっているそう。
また、森の浅い場所には私が見たゴブリンと、ウルフと言う四足歩行の魔物が潜んでいる。特に森の深い場所はゴブリンやウルフに加え、オークと言う二足歩行の豚のような魔物も出るため危険だ。
ちなみにオークはどんな魔物か聞いてみたら、真っ先に『性欲の塊』だとクリスは言った。
女性を捕まえてきては、ただひたすら犯し続ける。オークの子を孕ませたとしても、その行為は止まることはないらしい。
ちなみにオークに連れ去れて、戻ってきた女性はいないそうだ。
……最初に私が落ちてきた場所が浅い場所でよかった。深い場所に落ちて、身動きが取れなかったら、オークの餌になっていたかもしれない。
話が逸れたが、クリスの説明は続く。
ミンタカの森と呼ばれる由来は、この森自体がミンタカと言う街の西側にあることから、その名で呼ばれている。
ミンタカの街はプレアデス王国に所属しており、街の東側はアルニラム山脈がそびえ、西側は私たちがいるミンタカの森が広がっている。
ミンタカの街を南北に貫くように街道が走っており、北はベラトの街へ、南はリゲルの街へと続いている。
ちなみにプレアデス王国の王都はベテルといい、この世界でも大きな街の一つだという。
「……周辺情報についてはこの程度で十分ですか?」
「あ、うん。大丈夫よ」
ひと段落したので、気を抜いた時だった。ぐぅーっとお腹のなる音がした……私の。
「…………ごめんなさい……」
もう恥ずかしいやら、なんやらで苦笑いするしかなかった。
「……すぐにお食事の準備しますね。それともう暗いので、今日はここに泊まっていってください。外は危険ですから」
「……じゃあ……お言葉に甘えさせてもらうね」
「はい。こんな場所ですが、くつろいでくださいね」
危険だと言われて、外へ出るつもりはないし、私もリドちゃんからもらった説明書を読みたい。
それにしても、包丁……いや、ナイフ以外に調理器具と言えるようなものが見当たらない。どうやって料理するのだろうと思って見ていたら、刻まれたお肉や野菜といった食材を、大きな錬金術の釜に入れ始めた。
次に釜の中に調味料と思われるものを入れていく。それらを入れ終わると今度は杖を取りだし、杖を使って中をかき混ぜる。
私はそんなクリスを眺めながら、大人しくしている。
やがてご飯が出来上がる。
出来上がったメニューはハンバーグのような物をメインに、パンとスープだ。
「のぞみさん、お待たせしました……って、どうしたんですか?」
「……錬金術って凄いね」
「そうですよ。錬金術は凄いんです!錬金術は……」
私が零した言葉にクリスが過剰に反応し、錬金術について語り始めてしまった。
錬金術とはなにか、から始まり、調合の話になり、どんなものが作れるかという話になっていく。
この話の中で、クリスの錬金術の腕についても知ることができた。クリスはまだ難しいものは作れず、基本的な薬しか作れないそうだ。
基本的な薬というのが、私がさっき飲んだ回復薬で、種類は下級、中級、上級とあるが、クリスが作れるのは下級回復薬だけとなる。
やがてクリスの師匠の話になり、師匠がやった偉業について聞かされる。
師匠は、砂漠に雨を降らせ、雪原の雪をすべて解かし、果ては擬似生命を生み出したりもしたそう。
締めくくりの言葉は『錬金術に不可能はありません』だった。
とりあえず、わかったことは1つ。クリスの前で錬金術を侮辱したりしたら、大変な事になる。と言うことだ。
ちなみに錬金術で作られたご飯は美味しかった。