9:天狗じゃ天狗の仕業じゃって、それでも元ネタは何かの時代劇なんでしょうけどね
「かねかつら殿、座ってくだされ。」
ゴブ父が上座を勧めてくれる、、いやいや上座なんてあんた俺なんもでけへんよ?
「うむ」
いや、座るけど!現状なんの力もないのよ!
「実は野伏が……」
ほら!ほら!
そのまんまやん!要は何か7人集めんねやろ!?
近所に落ち武者の団体、要は盗賊団が居着いてちょっかい出してくる、米の収穫が上がったらまとめて襲ってくるらしい、なんとかならないかと。すでに6人の用心棒を雇ったがまだ足りないと。この傭兵たちのリーダーがもう一人探しに行ってるがなかなか見当たらない。そこに立派な武士であるオーガ殿が来たと。
……もうね。そもそも暴力沙汰とか。生まれてこの方40年ぐらい経験ありませんよはい。どうしろと。
どうにもならいまま額に脂汗を浮かべて白湯をいただく。
「そうか……」
なんとか回避できないか、めっちゃ考える……
バッサバッサ!
うわ!なんや!なんか飛び込んできたで!
「「「「グェーホッゲェッホゲェッホ!」」」」
囲炉裏からもうもうと灰が舞い上がり、煙幕になっている。俺はとっさに懐から端切れを取り出し鼻口に当てたがそれでも煙たい。細い目を更に細くして飛び込んできたものを見極める。
「もそっとお静かに参られよ」トカゲはなんか目に薄膜、鼻も閉じているようだ。すげえ。
「かしら何をやっているで御座るか!」牛鬼は大粒の涙を零しながら呻いている。
「ゲホゲホ煙たいでしょ!」猫娘は尻尾を逆立てて目と鼻を大急ぎで両前足で洗い続けている。
「……ひゅーーー!しゃー!しゃー!」鵺さんぇ……
「……(河童と思しきやつは水に潜っている)」
そこには、ハーピーがいた。ハーピーかよ!確かに鞍馬天狗以前の天狗は鳥っぽいよ!でもまさかのハーピーでメス、しかも顔がこれも怖いよ!何でだよ!鵺は知らんけど!全員メスの化物とか、俺は一体どうすれば……。
「ゲホッゴホッす、すまぬ。」
謝ってんじゃねーよ!謝るならやめとけよ!
気がつくと煙もやや落ち着き、すっと先ほどの娘ゴブリンが掃除を始めた。慣れてないか?
「娘や、いつもすまぬ」
いつもかよ!
「いや、防衛戦の人集めにもう一人なんとしてもほしいのだが、集まらぬ、今日も当てが外れた……すまぬ。」
謝ってばっかりだなこのかしらはゲホゲホ。
「ぬ?お主、見ぬ顔だな。……オーガであられるか。……いや、なんだこの魔力は!すごい、恐ろしいほどの魔力ではないか!名主殿、一体どこから連れてこられたのだ!」
待った!ちょっと待った!魔力って?なにどういうこと?
「いや実は娘が連れてきてくれたのだが、やはりそうか……私はほとんど魔力がないので、ちょっとあやふやだったのだが……何か陽炎のように魔力が立ち上るのを感じて、ぜひ野伏から守っていただきたいとお願いしたところなのですよ。」
「そうか!それは素晴らしい!拙者から見るとまるで燃え盛る炎のごとく躯から溢れ出す魔力が感じられる!これは重畳!もしかしたら彼のみで全員やることができるかもしれぬわ!」
いやいやいや、展開早すぎ!まだ転移初日やし!自分の顔もちゃんと見てないし!
ていうか最初は出て行けとか言ったよね!
どうしたらいいの!教えて神様!
読了ありがとうございます。