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79:実況清明

『『『次は吾の番だ!』』』

 なしくずしに俺が再度出る。何か言いたそうな獣人(じけいだん)連中も、声援や歓声に押しつぶされる。

『住吉三神様、胸をお借りします』

『うむ。心してかかってくるが良い』

 土俵で向かい合う。

『さあ、続いては金桂関と住吉三神(すみのえたいしん)関の大一番です。こちら実況はイケメン天才陰陽師こと安倍晴明(あべのはるあきら)と解説はハワイイ(いち)のスタイルと美貌を誇る畏るべき女神ペレさんと宇賀神であり弁天であり吉祥天でもあるという贅沢な女神を宿した久我やとめさんでお送りします。ペレさん、この一番、どうでしょう』

『そうねえ。住吉三神様は九州の博多にある神社に祀られているとっても古い神様なんですよね』

『そうどすな、三韓征伐をされたという海にゆかりの神さんでいまし、日に焼けて真っ黒だそうどすな』

『はい、今でも毎年十一番の勝ち抜き相撲を取られて、ますます血気盛んであるというお噂です。さあ、行司軍配返りました』

 なんで実況始まっとんねん、りくさん、ものすごく重要なことがバラされてるで、安倍晴明って何もんや、お調子者過ぎるやろほんま。

 と、集中集中。

『睨み合いです。このいきなりこの世に顕現された金桂氏について、様々な憶測が飛び交っているようですが、お二人はその辺り、どうお考えでしょうか』

『私は今日会ったばかりですが、只者ではありませんね。恐ろしいほどのマナが絶えず溢れ出ています。それでいて弱っていくような気配がない。底知れないお方ですね』

『私は、お恥ずかしい話、大変力を失っておりましたところをお助けいただいたのです。ほんの数日前どすが、その間に赤子よりもとの姿にまで成長させていただきました。本当に情け深いお方でございます』

『手を合わせて…激しいぶつかり合いです。金桂関が一気に土俵際まで押されました。両者胸を合わせて踏ん張ります。互いに必死の形相。住吉三神関は両手で前みつを取り腰を落とそうとしますが、金桂関、抱え込むように住吉三神関の両腕を決めにかかります』

 これ足をちょっとでも動かしたら速攻持っていかれる、腰を上げたら終わりや、ぐおおおお。

『黒い住吉三神関赤く染まっていきます。力が入っています。もろ差しを嫌って一旦引きました。』

 ふう、引いた、と思ったらバガンと左肩に腕がぶつかってきてぐらつく、多分廻しを取られたので、左手で相手のまわしを掴む、右足を下げつつ腰を下ろす、うわ、身体うく浮く。

『住吉三神関、右に回り込んで上手を掴みます。金桂関下手を合わせて踏ん張ります、投げの応酬です』

 もう土俵際じゃねーか、投げられる投げられる逆に回れ、あ、また時間が重く、今のうちや体を反らせて、巻き込め巻き込め、おっしょい。

 ひっくり返し気味に力任せに投げると、倒れてくれた。良かった勝った。

『土俵際見事なうっちゃり、金桂関見事に勝利しました。正式な決まりては下手投げです』

『力強い相撲でしたね。やはり金桂関のねばりは見事です』

『さすがどすな』

『信長殿いかがでしたか』

『とても力の入る一番でしたね。これは常世国でもぜひ常設の土俵と巡業制を導入しなければならぬと決意を新たにいたしました』

『頼光殿はいかがだったでしょうか』

『素晴らしいですね、これは金太郎との一番にも期待がかかります』

『ここは、ぜひ私も登俵させていただきたく…駄目ですか、残念です』

『綱殿、割り込みはいけません、次の一番は三度の金桂関と須佐之男関です、両者蹲踞の構え。同ご覧になりますか』

『須佐之男関は相変わらず涼やかで素敵ですね』

『綱様もそうですが、もう一度女装させたい男神ナンバーワンですね』

『まるでジャニーズ男子のように女性人気の根強い須佐之男関、場内にも黄色い悲鳴が響きます』

 あいかわらずリア充臭プンプン丸やなスーさん、しかしなんで俺ばっかり連続で相撲取るんやおかしないか?

『軍配返りました、手を合わせます』

 スーさんがニヤリと笑う、おっかねー、おおっと、掌底掌底から掌底、止まらない。

 あーもう痛い痛いバチバチ音もうるさい。

『今度は突っ張りの応酬です。両者扇風機のように手を回転させながら突っ張りの嵐、金桂関それを嫌って腕をつかもうとしたところ、素早くぶつかって上手投げ、こらえる金桂関、そこで須佐之男関倒れました。決まり手は浴びせ倒し、金桂関勝利です』

『あれは、須佐之男様、猫騙ししようとして失敗されとりますなあ』

『猫騙しってなんですかしら?』

『ぶつかる前に相手の目の前で拍手して驚かすというしょうもない技どすな』

『うむ、いかにもいたずら好きの須佐之男様らしいですな』

『それで手が上がりきらずそのまま突っ張りに変化したということですね』

『その辺の切り替えの良さも須佐之男様らしく』

『まあ、でもここは自力に勝る金桂関が落ち着いて対処されたということですね』

『さすがは金桂関、容赦おまへんな』

『全くですね、ためらいもなくマナを使われる辺り容赦ないですわ』

『さて、最後の取り組み千秋楽トリの一番、金太郎こと坂田公時関との対戦です』

『金太郎さんかわいいですね』

『ああみえて変幻自在おすからな』

『さあ本日大トリの一番、金桂関、汗を拭って土俵に上ります。額の隆起を見るに金桂関はやはり鬼の種族ではないかとの見方もありますが』

『そうどすな、もともと眼光鋭く大柄で、オーガの一族ではないかと思っておりましたが』

『穢も聖も超越した存在であることに異論を述べる方はおられないのではと愚行しますわね』

『鬼退治でも有名な金太郎さん、小さな体に並々ならぬ力感を溢れさせ、闘気が赤いオーラとして立ち昇っております。土俵際まで深くまで下がっての立ち会い、ぶちかましにかけている様子。東の金桂関は落ち着いた表情で、距離を詰めて蹲踞の姿勢。手が下ろされました、金太郎さん、猛烈な勢いで金桂関にぶつかります、金桂関肩を押さえて(はた)きこもうとするもなんと股の下をくぐり抜けました』

 あれ?と思った瞬間後ろから金太郎が廻しを掴んだのに気付く、やや持ち上げるようにして押される押される、やばいやばい、強引に右足を軸に体を回す。勿論付いてくるので上体をひねって左上手を取る。と、下から腕が押される、あれ?おい、でかくなってる?でかくなっていく。ちょ、上手切れる、があ。

『後ろに回った金太郎さん、廻しを掴んで花道一直線でしたが踏ん張られ、土俵際体を捻った金桂関に上手をがっしりと取られました。……ここで、まさかの巨大化、金太郎さんが成人化しています、これは坂田金時関と呼び名を変えることといたします。金時関、体を成長させることにより金桂関の上手を切って、両前褌(まえみつ)をしっかり掴み直しました。金桂関、息を荒くしながら左足一本で踏ん張っている状態、ここで右手を強引にねじり込んだ、がっぷり四つだ、互いに左上手を取り、頭を肩に合わせて、押し合います。これは大変な大相撲となりました』

 きついわ、きついわ。ああ、なんで俺ばっかり相撲せななならんねん、高次元意識体め、もともと肉体派ちゃうねんぞ、こう見えてインドア派やねんぞ、くっそ、いってまえ。

『金桂関、押し込みます、必死に踏ん張る金時関、そのまま押し出しました。かなり辛い様子ですが、蹲踞の姿勢で勝ち名乗りを受けます。手刀を切って祝儀を受け取ります』

 おぉ、祝儀出るんや、えっと3回手刀やな。よっしゃ、やったかいあったわ。

『ホクホクしておられますな』

『そうねえ、これだけ神様を楽しませていただけたら、ご祝儀も出るというものですね』

『本日はペレ様と宇賀神様には華やかな解説を賜りありがとうございました。この後は歌舞の奉納に向かわれると伺いました』

『そうどすな、吉祥天としてびわを演奏するのは久しぶりどすが、竜神のお琴と、なんでしたらペレ様も舞など如何でしょうか』

『それは楽しそうですね、是非とも参加させていただきますわ。うふふ』

『本日は実況安倍晴明(あべのはるあきら)にて地方奉納相撲をお送りしました。ありがとうございました。』


狼成分が足らなくなったので気楽に「狼は眠らない」を読み始めた結果、更新に支障をきたしております。申し訳ありません。

お読みいただきありがとうございます。

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