71:チェックリスト 祭り囃子
女共がキャイキャイ母屋で用意をしている間、久しぶりにチェックリストを見てみる。筆書きが下手くそで、自筆なのにクソ読みにくい。
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一、魔力について。一般的にどう思われているのか。
有りだが、一般的な認知度はまだわからない。
人外みたいなの(犬神人?とか伏見課長)もいるから、案外普通に受け入れられてる?
二、本世界の歴史・時代に関する認識、暦
元世界とかなり同じだが、歴代の天皇とか神格のある者たちが寿命を超越して存在している?
暦は太陰暦っぽいが、太陽暦でも通用する?伏見課長だけ?
三、本村の地理的な位置関係、村の名称
元世界でのならら、かつらぎらへんか?
そういえば、村の名前は聞いてなかった。かくれ里っぽいから、正式名称ってあるのか?
四、律法の存在と詳細と運用の方法
法律はあるっぽい、律令とかではないような。伏見課長の話しぶりに因る判断。
警察とかそのへんはまだよくわからない。
五、言葉・言語と教育の実態、教科書の存在
学校はあった。聞いたとおり、元世界とさほど変わらない様子。
実態把握はこれから。
六、倫理、社会的規範
まだよくわからないが、そんなにかわらんかなあ?
七、時間の認識と感覚
伏見課長の時計が普通に元世界のと変わらんかったから、まあ、問題ないのでは。
八、種族・人種・眷属呼称の実態と扱い
これが、問題が多いというか、見れば見るほど闇が深いというか、謎が多いというか。
おいおい知っていくことになるでしょう。
九、金銭の詳細、商売と税
金銭価値は聞いた通り。町に行かないと、まだよくわからない。
十、身分、戸籍等
生まれに因る差別はなさそうだが、まだわからない。
貴族か、あるいはそのまま皇族は存在するとおもわれる。公家か華族も存在する。
戸籍はありそうだが、まだどうにかなるっぽい。
伏見課長頼み。
十一、冒険者の件
伏見課長にじわじわ聞いてみる。
十二、洞窟と山に関する認識
すっかり忘れていたが、土蜘蛛の土地に近いように思われる。
要確認。
十三、生活全般
町に降りてから、要確認。
十四、家族・家庭の認識
普通?町に降りてから、要確認。
十五、宗教観・仏教と他
難しそう。おいおい調べる。
十六、敵の詳細 外観・居住地の地理・略奪方法等
明日確認。っていうか、敵じゃない。チンピラ?
十七、自らの現状把握
えらいことになってる。
何ができるかおいおい確認。
十八、狐と神様・高次元
これもおいおい。
ToDoリストにまとめ直したほうが良さそうやな。
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下の町まで歩いて30分程度らしい、上り下りがあるのでそれなりにしんどいとか。
町を知ってるのがあおいさんだけとか、どうなん?あおいさんも、もう何十年も行ってないという話やけど大丈夫?
念の為に東司にいって、幽体離脱して確認する。
……。大体わかったけど。なんか、元世界と変わらんような、昔のような。着物の人が案外多い。二割位は着物か。自動車が昔っぽい。少ないけど。木の電信柱、道路はほとんど無舗装。ネオンがやたらときれい。木造家屋が多いけど、赤レンガや鉄筋コンクリートっぽい建造物もある。
ジャンルは昭和レトロか。大正ロマンも混じってるような。
ぼやぼやしてたらすてが呼びに来たので、さっさと処理して出てくる。
いやあ、便所紙、偉大ですね。
結局せじろの背中に座布団をくくりつけてりくを乗せた。確かにアップダウンが割とあって、ちょっときつい。ある程度近づいたら、せじろを杖に戻し、座布団を巻きつけて背負う。
遠くから地車囃子が聞こえてくる。
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コンコンチキチンチキチンチキチンコンコンチキチンチキチンチキチン……
どんどんタカタンタカタンタカタンどんどんタカタンタカタンタカタン……
そうか、この辺は地車やんな、元世界で住んでたとこらへんは無かったから忘れとった。
小さい頃、おじいちゃんとおばあちゃんと両親と一緒に祭りによく行ってたことを思い出す。
町内会の法被着て、子供地車ひいたっけなあ。懐かしい。的屋も、楽しかった。ここらへんはどうやろう。当てもんが好きで、そうかボウズの頃からしょうもないギャンブルが好きやってんなあ。
コンコンチキチンチキチンチキチンどんどんタカタンタカタンタカタン
「あれは!なんですか!」
若いもんはみんなキラキラした眼で遠くを眇め、代表してれいかが聞いてくる。
「あれは、ダンジリ言うてな、鳴らしモンが演奏ってんのをダンジリバヤシっていうねん。ダンジリは地車っていうて移動式の祭壇みたいなもんやね、その上に若い衆が乗っかってダンジリバヤシっていう祭りのお囃子、音楽やな、これを神さんに奉納すんねん。子供とか皆で引っ張って、村中をぐるぐる回って祝うんやな」
「そうなんですか!」
「へー!」
れいかの髪もさらに伸びて、ボーイッシュなショートカットっぽくなっている。ツイ◯ギーが髪結みたいなことをしていたらしく、手慣れたものだったそうだ。
ちょっと疑問なのが、すてが未だに女子っぽいかっこをしている、なんでやねん。スカートを履いて、おかっぱ頭でどうみても女の子だ、陰キャ感は漂うが、極ありふれた、教室でモブっぽい扱いの控えめな女子やん。確かに確認したよ、絶対的に男子だよ?
ゴブリン時代の服が、普通に着れたという。確かに手足が短かった、胴体はさほど変わっていないのか?
「多分こちらの方だと思うのですが」
あおいさんが先頭で案内してくれている。
すでに町中に入っている。木造の、古いけど小綺麗な長屋、大きくない2階建ての一軒家、土塀に墨黒の目隠し塀、細かく走る用水路。土塀のあるところはたまに蔵がある。
文化住宅!古い様式のアパートだが、ぴんさら。自転車、新聞配達のそれのようにごついのが幾つか並んでいる。
大きな家には駐車場、丸っこい乗用車。オート3輪!ブルー・グレーの車体。
こちょこちょ人間に出会う。地味な感じの洋服のおばちゃん、サイズ感のでたらめなスーツのおっさん、ハッピを着た子供と着物のお母さん?
できるだけ口角を釣り上げて笑顔アピール。
とつかを見て、俺を見て、とつかとやつかを見て周りを見て、唖然としている感じですか。皆揃って口が半開きで微笑ましい。やっぱり、俺やとつかさんは人外感というか、普通ではないような。
『とつかさんの背丈は目立ちますな。主殿もチンピラヤクザみたいな外見で、烏が肩で懐に猫ですしな』
それはその通り。
ゆきも人化している。服が自前なのがよくわからない。白いブラウスに赤いワンピースみたいなのを着ている。なかなかの美少女だが、眼が、狐面のような眼で少し怖い。
りくも、蛇は服の中に隠れているようだが、時々顔を出している。首元とか、袖口とか。スカートの下からのぞいていたときはギョッとしたので一応注意をしておいた。
「ほんにすんまへんなあ」
バレてもいいのかもしれないが、主に俺の精神衛生に悪い。
ガラスの入った格子戸の商店が幾つかあったが、お休みっぽい。
畳屋、米屋、襖障子貼り代えと布団の打ち直し。
だんだん人が増えてくる。その流れに沿えば、たどり着きそうやね。逆とか違う方向に行ってるのは、ダンジリ目指す人たちか、元気に走る子供も多い。
あまり道幅が広くないので、俺達の集団が目立っているが、しょうがない。
ええ年のおっさんおばさんが3人、妙齢の女性が2人。子供4人。
それだけなら、まあ普通の家族連れの構成だが、ぎょっとするほどののっぽさんが二人。本当は1人は少年だが、美少女と言っていい少女幼女が4人。ベティブ◯プなツイ◯ギー1人。いかにもガラの悪そうなグラサンの親父が1人。ついでに猫は懐、烏は肩に。もしかしたら人買いとか思われてへんやろなあ。
人熱れに混じって遠くの子供の声を耳が拾う。
「あ、ちんどんやさんや!」
「ちゃうで、さんどいっちまんやで」
「ちゃうちゃう、なんももってへんから、見世物小屋の人やで」
「烏も猫も居るわ」
「えー、今年はおらんかったと思うで」
「んなら変なおっさんやな!」
「そやで!」
「しーっ、聞こえるで、静かに話や」
「そやな、怖いしな」
「そやそや」
………。
『………』




