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45:りく2

「私は遠く離れた世界から参りました。……この世界のことは、あまりわかりません。ですので、目で見て回るというのが、当面の目的です。」

 あれ、つい余計なことをいってしもた気がする……。そうなんよ、告白は伝染するんよ、龍先生が『音楽の海岸』で言うてた通りや。

「自分の目で見るということは、大事なことですね。」

 あおいさんが話を合わせてくれる。お優しい。


 天使が通る。二葉亭四迷?

 しばしの沈黙の後、とつかさんが口を開く。

「かねかつら殿。すまんが、一度長と話をさせてくれぬか。それから、また相談したいのじゃが、構わぬだろうか。」

「ええ。勿論ですよ。お考えください。出来る限りの協力はしますよ。」

「かたじけない。」

 とつかさんは、明日、村長さんに挨拶してとりあえず引き上げることにする。俺も話さなあかんしなあ。

 それぞれの寝床に向かう。ああ、二人の魔法も見やんとね。

 なんちゅうか、もちょっとゆっくり出来ひんもんかなあ。ほんま、交渉事ばっかりで、疲れるわ。

 元々そんな仕事やったけど、流石にオンとオフがあったし、一人で音楽聞いたりしょうもないゲームやったり、1日に数時間は有ったんやが。この数日は全く余裕が無いからなあ。ハードモードでもないけど、イージーモードでもないよなあ。せや、この世界の流れが前と似たようなもんなら、クラッシック音楽は多分あるよな。アメリカが発展してないならジャズもロックも、そこから派生するパンクとかニューウェーブとか、ああレゲーも無理っぽいしAORも無いわな。いやそれぞれ独自になんか発展はしてるか。どうなってるか知りたいもんやな。サッチモとかカーペンターズとかは好きやけど、そのものが有るわけないのは、ちょっと辛いな。

 まあ、どう考えても開国はしとるんやから、いずれは何か聞けるやろ。電気有るんやし蓄音機的なもんもかならずあるやろ。そんなら、当面の目標はバッハかモーツァルトかベートーヴェンか、聞き覚えのある音楽を聞くことやな。残念ながら、楽器は全く出来ひんからなあ。ピアノかギターでもやってりゃよかったか。そんなんなら手に入るやろうし。まあでも、俺がよく聞いてたのは日本のプログレ系とか、みんなのうた系とか、電気とか、そんなんは聞かれへんやろな。それがもしかしたら一番寂しいかもしれん……。

 できるだけ音を立てないように庫裏に上がり、布団に寝る。すっと狐がよりそってくる。

『お帰りなさいませ。おやすみなさいませ。』

「うん。」

 今何時くらいだろうか。感覚的には、21時から22時位か。夜明けは6時過ぎ位か。何やかんや言って、睡眠時間だけは大幅に多いよな、前と比べて。体が無茶苦茶変わってるからそれがどうなんかは分からんけど、悪い気はせんね。追い立てられてるわけでもないのに、いつもどこか焦っている気持ちと戦う必要は、少なくとも今は無い。狐の頭を何となく撫でながら、まどろみ、深い眠りに落ちていく。あっちは今頃どうなってるやろなあ。案件いっぱいほったらかしやからなあ。まあ、どうにもならんけどな、どうにかはなることばっかりやしな。その点こっちは、どうにかなることでも、どうにもならんことが多いのかもしれんな。なんとかなればいいけどなあ……。


 幽体離脱することもなく、鶏が時を作り、目を覚ます。既に充分白んでおり、伸びをして起き上がる。やっぱり風呂は良い、朝がスッキリや。でもこの風呂を独占しているのはそもそも悪いし良くないよな。何とかならんもんやろか。

「おはようございます!もうすぐ朝ごはんが出来ますので!」

「おはよう。わかりました。」

 ゆきはいない。?ああ、りくのところかな。襖を開けると、半分に畳んだ布団の上に、浴衣のような着物を纏ったりくが寝かされており、そこに狐が寄り添っている。どうかな、そろそろ起こすか?ゆきとアイコンタクトを取り、起こすことになった。

「りく。朝だよ。そろそろご飯やから。起きようか。」

 横に座って、声をかける。

「うーん。」

 りくは身じろぎして伸びをする。うん、たしかにちょっと耳尖ってるわ。普段は髪の毛に隠れてるのに、よう気付いたな。いや、俺が鈍いだけか?

 手を引いて土間から外に出て水を出してやる。顔を洗い、口を漱がせる。

 朝ごはんは麦飯と山芋を下ろしたもの、大根の味噌汁と青菜の漬物。いや、ほんま美味いね。醤油だけでもなんか違って旨い。

 とりあえず俺が箸をつけないととつかさんとかあおいさんとか他の人が食べられない。俺が食べ終わらないとすては食べない。どうなんやろうか。そんなもんなんやろうか。ここだけなんやろうか。こういった習慣があることは一応知っていたけど、家長的な待遇の中心に自分がいるなんて想像もしたことがなかったから、気持ちは引いている。とりあえずは合わせておくしか無いか。まあ、りくは俺の膝の上にいるのだが。

「では本日はまずれいかさんとすての魔法を見ましょうか。それから、名主宅でお父さんとお会いしましょう。とつかさんとあおいさんもその時ご一緒に。」

「はい!上達ぶりをご覧に入れます!」

「では、早々に片付けます。」

「りく、家に帰りたいよな?」

「ううん。」

 これは、どういう意味?

「あれ、帰りたくないの?」

「いまなら、かつらさまといっしょでいい。」

「でも、お父さんやお母さんが心配してるでしょ。」

「いない。だいじょうぶ。」

 ……。訳あり感満載やな。

「そうか……。でもこの儘は良くないから、いずれは帰らないとあかんね……。」

「いや。」

 あ、そう。これはこれで処理に困るなあ。警察とか来たらヤバそうやなあ。おかしいなあ、俺子供受けするキャラとは違うかったんやが。だいたい見かけも多少は怖いんはずなんやけどな。うーん、これはあれか、くろめとかもそうやったが、地力の衰えとかで魔力ダダ流しの俺の近所が良いとかそういうやつか?

「りくは魔力はあるのか?」

「うん。ある。」

 そうか、やっぱりその系か……。

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