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Ⅰ
時々考えてしまうことがある。『あの日』から、本当におれは変わることができたのだろうか。
あの時から、おれにできることは何でもした。あらゆる苦難や障害をはねのけてきた。ひたすら辛いことも、全部乗り越えてきた。すべては強くなるためだ。だからこそ、今もおれの意思は揺らがない。
けれど何故だろう。それでもおれの心の奥底には、まだその時の弱かったおれが住み続けていた。おれはそいつに、そしてそんな弱い自分を未だに飼っているおれ自身に腹が立った。
おれは強くなるんだ。弱いお前なんかいらない。消えてしまえ。消えろ、キエロ――
だけど、酷な言葉をいくら浴びせ続けても、その度にそいつはただ涙を流しながら、黙っておれの心の中に居座り続けた。
おれは、そんな昔のおれの姿は決して見なかった。見ようともしなかった。もし見てしまったら、おれもそいつと同じように、落ちてくる涙を止められなくなってしまうから――