ここはどこでしょうか??
皆さん今日から一日1投稿になります、
あと毎日この作品を読んでいただきいつもありがとうございます。!!!
「――ここを使え」
案内されたのは、船内の客室だった。
扉を開けた瞬間、思っていたより広い空間が目に入る。壁も床も木でできていて、潮の匂いに乾いた木材の香りが混じっていた。長く使われているはずなのに、不思議と嫌な感じはしない。
右手に簡素なベッド。奥には小さな机と椅子。丸い舷窓の向こうでは、ゆったりとうねる海が光を反射している。
(……思ったより、ちゃんとした部屋だな)
私は中に入り、後ろ手で扉を閉めた。
がちゃん、と鈍い音がして、外の喧騒が一気に遠のく。
さっきまでの騒がしさが嘘みたいだった。
しばらく立ったまま、部屋の隅々まで視線を走らせる。物陰、窓の外、足元。
――問題なし。
ようやく息を抜き、ベッドに腰を下ろす。
ぎし、と小さく軋む音。船の揺れに合わせて、体がゆっくりと上下する。
「……はぁ」
長く息を吐いた。
(……なんとか、なったなあ)
天井を見上げる。木の板が規則正しく並び、その隙間に影が揺れている。
少しずつ、張り詰めていた神経が緩んでいく。
「……で」
体を起こし、足元のバッグを引き寄せる。
中を開けて確認する。
「これと……あとは」
小さな袋を取り出す。振ってみるが、やはり軽い。
「……空か」
独り言が漏れる。
その横に、折りたたまれた紙。
広げると、少し擦れた手書きの地図が現れた。
(……ざっくりしてるな)
町の位置、川、山の形は分かるが、道や細かい建物はほとんど描かれていない。
指でなぞる。
「ここ、か……」
小さく書かれた名前。
リューネ。
(ロイドさんの家族がいる場所……)
一瞬だけ、胸の奥が重くなる。
けれど、すぐに思考を切り替えた。
「今後の目標、整理するか」
自然と声に出る。
指を一本立てる。
「まず一つ目。……唐辛子を見つける」
少しだけ苦い顔になる。
「正直、やりたくはないけどな」
軽くため息をつく。
「あれがないと、あいつら絶対に俺を手放さないだろうし……下手すれば、もっと面倒なことになる」
しばらく考え、
「見つからなかった場合は――」
言葉を区切る。
「……逃げるしかないか」
自分で言って、小さく苦笑する。
「命あっての物種、だな」
二本目の指を立てる。
「二つ目。こっちが本命」
地図を軽く叩く。
「この町、リューネに行く。ヴァルネシア王国……だったか」
国名を確認するように呟く。
「ロイドさんの家族に荷物を届ける。これが本来の目的」
(絶対に忘れるない)
そのとき。
コンコン、と控えめなノックが響いた。
「食事だ」
扉越しの低い声。
「……どうぞ」
返すと、扉が開く。
乗員の男が皿を持って入ってきた。
焼いた魚の香ばしい匂いが、ふわりと広がる。
「ここでいいか?」
「あ、はい。そこにお願いします」
机を指すと、男は皿を置く。
「口に合うかは分からんが、今はこんなもんだ」
「いえ、十分です。ありがとうございます」
軽く会釈すると、男は「そうか」とだけ言って出ていった。
扉が閉まる。
私は机に近づき、皿を覗き込む。
(……普通にうまそうだな)
フォークを手に取り、魚を切る。
一口。
「……うま」
思わず漏れる。
塩気がちょうどいい。身も柔らかい。
「ちゃんと料理してるな、これ」
小さく感心しながら食べ進める。
しばらく無言。
だが、途中で手が止まる。
(……明日、どうするか)
地図を見る。
(今どこにいるのかも分からないし、移動手段もない)
軽く息を吐く。
「……船長に聞くしかないか」
食事を終え、ベッドに倒れ込む。
揺れが心地いい。
そのまま、意識がゆっくりと沈んでいった。
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翌朝。
軽いノックで目が覚める。
「起きているか」
「……はい、今起きました」
少し遅れて返事をする。
体を起こし、首を回す。
(ちょっと寝すぎたか)
顔を洗い、身支度を整える。
地図を手に取り、甲板へ出る。
朝の空気は冷たく、潮の匂いが強い。風が頬を撫で、頭が一気に冴える。
海は穏やかで、光が水面に揺れていた。
その中に、船長の姿を見つける。
「すみません、少しいいですか」
声をかけると、船長がゆっくり振り向いた。
「なんだ」
「これなんですが」
地図を広げて見せる。
「この場所、分かりますか?」
船長はちらりと目を落とし、すぐにうなずいた。
「ああ、分かる。ヴァルネシアのリューネだな」
(早いな)
「どの辺にあるんですか? 今いる場所からどれくらいの距離ですか?」
船長は腕を組み、海の向こうを見る。
「まず、この船は大陸間を移動する客船だ」
「今向かっているのは、アストラ大陸。セイグリッド連邦のルガル港だ」
私は地図を見るが、その名前は載っていない。
「で、お前の行きたい場所だが――」
船長はゆっくりと指を動かし、
「こっちだ」
真逆の方向を示した。
「俺たちが出発したエルド大陸。その中のヴァルネシア王国にある」
「……え、それって」
言葉が詰まる。
「完全に逆方向、ですか?」
「そういうことになるな」
(まじかよ……)
思わず額に手を当てる。
「つまり、お前は今、目的地から離れている」
「……いや、だいぶ困るんですけど」
船長はわずかに笑う。
「まあ安心しろ。手がないわけじゃない」
(嫌な予感しかしない)
「例の唐辛子の粉を手に入れるルートを見つけてくれれば、帰りの船に乗せてやる」
「そのときエルド大陸に戻れる」
私はじっと船長を見る。
「……つまり、それが条件ってことですか」
「ああ。成功すれば、の話だがな」
(失敗=詰みじゃねーか)
頭の中で整理する。
・目的地は逆方向
・帰るには条件付き
・条件は唐辛子
「……結構きついですね、それ」
「簡単な話ではないな」
あっさりした返事。
私は苦笑する。
「ちなみに、帰りもこの船なんですよね?」
「当然だ」
即答。
「ですよね……」
思わず顔を覆う。
船長が小さく笑った。
私は息を吐く。
「……分かりました。港に着いたら、まず情報を集めます」
「商人か、市場を当たるといい。情報はそこに集まる」
「助かります」
短く頭を下げる。
風が強くなる。
私は海の向こうを見た。
(やるしかないか)
静かに、覚悟を決めた。
ユウ「この世界でどうやって唐辛子を見つければいいんだよ!!!」
船長「代わりに探してくれるとは、、優しい奴だな」(にやり)
ユウ「探し出すことができなかったら船に乗せてくれない、どうしよう」




