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4.初めての仲間?

 朝の森は静かだった。小鳥のさえずりがかすかに響く中、俺は先生にもらった古びた剣を握りながら歩いていた。


 剣の名前をどうするか、ずっと考えている。


「聖剣エクスカリバー!……いや、厨二病っぽいか?」


 つぶやきながらも、目の前に現れたのはブラッディウルフの群れ──ざっと見て十匹はいる。


「うわ、マジか……なんで群れで来んのよ」


 思わず後ずさりするも、敵は待ってくれない。一斉に飛びかかってくるブラッディウルフたちに対し、俺は深呼吸一つ。剣に魔素を流し、力を込める。


「せいやっ!」


 一閃。目にもとまらぬ速さで振り抜かれた剣は、驚くほどの切れ味で十匹の魔物を一瞬でなぎ倒した。


 その場で尻尾を切り落とし、魔石を回収していると、どこかからクンクンという鼻を鳴らす声が聞こえた。


 茂みの陰に、小さなブラッディウルフの子どもが震えて隠れていた。


「かわいい……」


 あのイカついブラッディウルフも、子どもはぬいぐるみみたいだ。俺は倒した個体の尻尾を振ってみせた。


「おいでー、怖くないよー」


 しかし、次の瞬間──


「うおっ!」


 その小さなブラッディウルフが突然膨張するように変化し、目の前で巨大な姿へと変わった。


「マジかよ!?進化系!?ってかデカすぎ!」


 その体格は今まで見たどのブラッディウルフよりも二回りは大きい。


 俺はすぐに剣を構え、斬りかかったが──爪で受け止められた。


「ぐっ……!」


 力負けするなんて、こんな奴がいるのか。


 足元に魔法陣が浮かぶ。見覚えのある光──魔法!?


「お前、魔法まで使えるのかよ!」


 氷の塊が次々に飛んできた。俺は必死で剣を振り払い、氷を斬って防ぐ。


 振動が腕に走り、痺れる。


「こんなのおかしいって!攻撃ならまだしも、防御方法なんて先生教えてくれてないぞー!」


 俺は後退しながら、必死に頭を回す。魔法が使える相手に、今の俺の手札では厳しい……。


 でも、もし火が弱点なら?


「……やるしかねぇか」


 剣から掌に意識を集中。魔素を指先に集め、炎をイメージする。


「魔法はイメージ……イメージだ……!」


 渾身の思いを込めて、叫ぶ。


「ファイアーボーーール!!!」


 掌からピンポン玉サイズの火の玉が、のろのろと飛んでいく。


 それを見つめる俺と巨大ウルフ。


「だ、だっさ……」


 小さな火球はウルフの前でぽふっと爆ぜた。


 が──その瞬間。


「ガルッ!」


 驚いたように後ずさりする。


「今だ!」


 一気に詰め寄り、剣を水平に振り払う。剣は獣の胸を大きく裂き、巨体が崩れ落ちる。


 ……すると、あれほど大きかったウルフの体が、元の小さな姿に戻っていった。


「これ、切れるわけないって……」


 俺は手にしていた回復ポーションを取り出し、小さな身体にかける。みるみるうちに傷が塞がり、安らかに眠るように目を閉じた。


 そっとその場を離れた。


 だが、帰り道。


「……ついてきてる?」


 気配がある。振り返ると、やはりさっきの子ウルフがこっそりついてきていた。


「お前……まさか」


 走って振り切ろうとするも、必死に追いかけてくる子ウルフ。結局、小屋の前までついてきてしまった。


「少し早いけど帰りましたー……」


 ドアを開けて入ると、いつも通りヒルダ先生が本を読んでいた。


「その足元のは……なんだ」


 視線を下げると、ちょこんと俺の足元に座る小さなウルフ。


「お、お前、来たのか……!」


 抱き上げてヒルダに見せる。


「先生、こいつ……どうしたら?」


 ヒルダは腕を組んで、じっと子ウルフを見つめる。


「お前と従属化されてるみたいだな」


「従属化?ってことは、仲間?」


「言い方を変えれば、お前の下僕、だな」


「えーーーーーっ!?」


「まあ、面倒を見てやれ。珍しいぞ、ブラッディウルフの従属化なんて」


「えーーーーーーーーーーーっ!!」


「うるさいっ!!」


 ヒルダのゲンコツが頭に直撃。星が飛んだ。


「ひでぇ……」


 頭をさすりながら、小さなウルフの顔を見つめる。


「じゃあ……名前つけないとだめなんだよね?」


 ウルフは小さく尻尾を振っている。名前……苦手なんだよなぁ。


「ポチ、とか……?」


 その瞬間、腰に差した古い剣が淡く光り始めた。


「え?」


 ヒルダが立ち上がって剣を見つめる。


「……決まったな」


「え、何が?」


「その剣の名前。ポチ、だ」


「ええええええええええーーーーー!!!」


 よりによって……ポチ!?


 頭を抱える俺の横で、子ウルフが嬉しそうにキャンと鳴く。


「じゃあ、お前は……クロ、でいいか。毛が黒いし」


 クロは嬉しそうに跳ね回る。


「クロ、よろしくな」


 ヒルダはどこか悪戯っぽく笑った。


「クロか……ふふ、面白くなりそうだ」


 その晩、俺とクロは並んで眠った。


 クロの寝息は小さくて温かく、まるで本当の仲間ができたみたいで、少しだけ心がほっこりした。


 ……ただ、狩ってきたブラッディウルフの尻尾と魔石を並べながらクロの前で数えてる俺とヒルダ先生は、やっぱりちょっと鬼畜なのかもしれない。





 

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