26.神とクズの奇跡
「……これが最後の金貨3枚か……」
カイは額に汗をにじませながら、震える手で金貨をテーブルに置いた。
目の前のディーラーのような男がニヤリと笑う。
「ご参加ありがとうございます。ベット金額、金貨3枚……オールインですね?」
「……あぁ、頼むぜ、俺の運命、いやフェイの借金返済がかかってんだ……!」
フェイはその隣で、真っ青な顔で手を合わせて祈っていた。
「神が祈るな」とカイはツッコミたかったが、余裕はなかった。
──ギャンブルの内容はシンプル。
魔物同士を闘わせ、勝敗を予想して賭けるだけ。
ただし、出場する魔物の力は“完全にランダム”で、時には予想不可能な大逆転もある。
カイは、自分の選んだ魔物――赤いスライムに賭けた。
一見弱そうだが、「第二戦で突然進化した例もある」との情報を掴んでいたのだ。
「行けっ、スライムマンレッド!!! 粘れぇぇぇぇぇ!!!」
観客席からは罵声と歓声が飛び交う。
「やれぇえぇえ!オオカミファング!そのゼリーを粉砕しろぉぉぉ!!」
「スライムのくせに頑張るな!!俺の金貨返せぇぇ!!」
──そして、奇跡は起きた。
赤いスライムは、体を膨張させたと思うと、突如として“スライムソード”に進化。
その剣のような体でオオカミに突撃し、まさかの逆転勝利をもぎ取った。
「勝った……!」
「カイぃぃぃぃぃ!!すごいぃぃぃ!!私、まだ生きていられるのねぇえぇ!!」
その後も数戦、なぜかカイの賭けた魔物がことごとく勝利をもぎ取り、
金貨は3枚から──27枚に膨れ上がっていた。
「このまま行けば、借金返済……どころか、俺が資産家になれるんじゃないか……?」
そう思ったカイは、次の試合にすべてを賭けると決意する。
「……よし、最後の勝負だ。全部ベットする!」
フェイがビクッと震える。
「ちょ、ちょっと待って!ここで全部って!?ギャンブルってのは、勝ったら止めるのが鉄則って言うじゃん!?」
「うるさい!これは“勝つ未来”が見えてる勝負なんだよ!」
カイは、自信満々だった。
なぜなら――あるズルい作戦を思いついていたからだ。
「フェイ、あの魔物……後ろにいる小型リザードを俺が選ぶ。で、戦闘が始まったら、お前の魔法でちょっとだけ強化してくれ」
「えっ!?それ、ルール違反じゃないの……?」
「バレなきゃ違反じゃない!ズルしてなにが悪いんだ!!」
「いや、私、神なんだけど!?」
カイは手を叩いて笑った。(狂ってる・・・・)
「さぁて、奇跡の第7戦だ……フェイ、準備はいいな?」
「はぁ……はぁ……分かったよ、バレたら終わりだけど……やるしかないね……」
そして試合が始まった。
リザードの動きが不自然に速くなった瞬間、カイの口元がにやりと歪む。
「よし……いけぇえぇえ!!リザードファングォォ!!」
ドンッ!
観客席が爆発的な歓声と興奮に包まれる。
「な、なんだあの動きは!?ステータス詐欺か!?」
「くっそおおお!あれはチートだ!チートリザードだ!!」
あまりに不自然な動きに、ざわつく観客たち。
そして運営席から、静かに警備兵の影が動き出す。
カイが勝利を確信して拳を握りしめたその瞬間――
ガチャッ
「おい、そこの二人……お前たち、ちょっと裏まで来てもらおうか」
ザワ……ザワ……ザワ……
黒服の男たちがカイとフェイを取り囲んでいた。
「……え?ちょ、ちょっと待って!?俺たち、何もしてな――」
「観客席の監視魔晶石に映っていた。お前の後ろの女が魔法を使ってたな?」
「ちょっ……違う!これはその……自家発電的なアレでしてぇ……」
「へぇ……“自家発電”ねぇ……」
男はニヤリと笑い、背後の警備兵たちに顎をしゃくった。
「連れてけ。地下の“精算室”だ」
「ちょっと!精算ってなに!?精算ってなにするの!?」
「助けてカイー!助けてぇぇええ!!」
「お前がやったんだろがあああああ!!」
かくして、神とクズは、裏ギャンブル運営に捕まり連行されたのであった――
つづく!




