1.かつ丼を食べただけなのに・・・・
考え迷いながら書いているので、滅茶苦茶な設定になっているかも・・・
いやらしい目で温かく見守ってください。
あと、日本語って難しいね~
「だから言っただろうが!」
耳元で怒鳴られる声に、俺――カイドウマモルは小さくうなずいた。
商社勤め42歳、役職は課長。だがその肩書きは、今日で剥奪されるかもしれない。
客先へ向かう車の中、横に座る部長は苛立ちを隠さず、俺に責任をなすりつけていた。
(いや、完全に部長の指示ミスだろ……)
そう思いつつも、反論できないのがサラリーマンの悲しき性。
とりあえず、客先での謝罪を終え、何事もなかったように深く頭を下げ、帰路につく。
唯一の救いは、客先の担当者が「あなたのせいじゃないですよ」と目で訴えてくれたことだった。
会社から地元の商店街へ戻る頃には、夕焼けが街をオレンジ色に染めていた。
暖簾をくぐる。小さな食堂『ふるさと』。
高齢の夫婦が営むこの店は、昭和の香りが色濃く残る、懐かしい空間だ。
「いらっしゃい」
店主のいつもの声。けれど、俺の顔を見た瞬間、その表情が曇る。
「……どうしたんだい?顔、真っ青だよ」
「なにも、ないですよ」
そう言って、いつもの席に腰を下ろす。店内の時計の音がやけに大きく聞こえた。
「これでも食べて元気出しな」
そう言って出されたのは、いつもの――カツ丼。
変わらない味。変わらない温もり。
蓋の向こうに、いつもの“ふるさと”が詰まっている。
こみ上げてきたのは、安堵か、悲しみか、それとも優しさか。
そっと、蓋を持ち上げた――その瞬間だった。
眩い閃光が丼と蓋の間から溢れ、俺の視界を真っ白に染めた。
「え?」
何が起きたのか理解できないまま、世界が消える――
気づけば、鬱蒼とした森の中にいた。
立ち込める霧と湿った空気。木漏れ日はほとんどなく、耳を澄ませば鳥の声もない。
「……どこだここ……」
ポケットをまさぐる。スマホも財布も、なにもない。ハンカチ一枚だけ。
「まさか……転生? いや、いやいや、さすがに冗談でしょ?」
慌てて全身を確認する。――痩せてる。腹が……ない。あの三段腹が……消えている!
「なにこれ!?痩せてる!?うそだろ!?うおおおおおっ!!」
歓喜のあまり、思わず森でスキップする42歳(中身)。
「これが……転生ボーナスってやつかああああっ!さよなら脂肪!さよなら部長!さよならブラック企業ッ!」
スキップしていたそのとき、――草むらがガサリと揺れた。
緊張が走る。背筋がゾワリと冷える。
「……まさか……魔物とか……出たりする?」
その「まさか」は正しかった。
茂みから現れたのは、大型の犬に似た、牙をむき出しにした異形の獣だった。
目が合うと同時に、低い唸り声をあげて距離を詰めてくる。
「うそだろ!?犬!?いや、犬じゃねぇ!魔物じゃねぇかこれ!?」
木の枝を拾って構える。構えながら、震えてる。
「お、おい……こっちはただのサラリーマンだぞ!?」
犬型魔物が低く唸りながら飛びかかる。
「うおおおおおおっ!」
思い切って、木の枝で迎撃する――
――バキン!
枝は一撃で折れた。魔物の爪が、俺のネクタイを裂く。
「うわああああああ!」
半ば本能的にバックステップ、さらにバックステップ、連続で後退し、気がつけば猛ダッシュで森を逃げていた。
「うおおおおおっ!やっぱ転生してもサラリーマンに戦闘能力はねぇぇえ!!」
ようやく獣の気配が途絶えた頃、息を切らしながら辿り着いたのは、畑のある開けた場所だった。
柵の向こうに、小屋と畑。そのトマトのような実が、夕日を受けて赤く実っている。
――お腹が、鳴った。
「す、すみません、いただきます……」
トマトを手に取り、かじろうとした――その時。
背後に、巨大な影が落ちた。
「……えっ?」
振り返ると、そこには岩でできた巨大な――ゴーレムが、仁王立ちしていた。
「ひいぃぃぃぃいっ!!!」
ゴーレムは無言で俺の首根っこをつかみ、ズルズルと小屋のほうへ連れていく。
小屋の扉が開き、中から現れたのは――黒髪に金と紫の瞳、露出の多い服装をした美しい女性だった。
「この森で野菜泥棒とは、随分命知らずね」
「いや、あの、その、違うんです、ちょっと道に迷って、すごくお腹が減ってて!」
必死で弁解する。けど、視線がこわい。
「……どこから来た?」
「えっと、それが……気づいたら森の中に……」
「……ゴーレムに頭を叩かれたのか?」
「いや、それはまだ……大丈夫です」
「……離してやりな」
ゴーレムが俺を放し、地面にぐしゃりと落下。地味に痛い。
女性はしばらくこちらを見つめていたが、やがて口を開いた。
「私はヒルダ。この森に住む魔女よ。お前の名前は?」
「カイドウマモルといいます……カイって呼ばれてました」
「……カイ、ね。まぁいい、中に入りなさい。事情を聞いてあげる」
その後、ヒルダに転生の話をした。
「あなた、転生者ね。見たところ記憶はそのままのようだし」
「はい、たぶん……でも、心当たりが……ありません」
「普通は“転生陣”を通って来るものだけど、あなたは違うようね」
「じゃあ、なんで俺がここに?」
「神様のミス、かしらね」
「ええ……」
「で、戦えるの?」
「全然です、木の枝で戦ったら折れました」
「魔法は?」
「使い方すら分かりません!」
ヒルダは顎に手を当てて、考え込んだ。
「よし。カイ、今日からここに住みなさい。そして、私の弟子になりなさい」
「え?いいんですか?」
「その代わり、あなたのいた世界のこと、いろいろ教えて」
「……わかりました!よろしくお願いします!」
あとがきです。