キリエ レクイエム(KyrieRequiem)4
「やあ。」
ことなげもなく手を上げた『自称発明家』は戦士や貴族が集まっているこの場には非常に浮いて見えた。
指定された席へ向かう途中、すれ違い様の
「言いたいことはわかるよ、もう主催者も来るだろうし後で話そう。」
そう言った表情は予想していたとばかりに余裕のある微笑である。
その端麗な顔をしりめに早速キリカが
「お知り合いですか?」
と聞いてくる。
「知り合いというほどの間柄じゃあないんだけどちょっとな。」
言葉を濁してしまうがキリカはそれで満足したのかそれ以上は聞いてこなかった。
それ以上に彼女はまだ席についてない自分達を見る怖い人たち(軍人、冒険者、貴族、etc・・)の目線のほうが気になるのかすっかり萎縮してしまって此方の裾を引っ張って着席を促している。
人見知りは解消されていないようでキョロキョロ辺りをみては誰かと目が合って逸らすを繰り返してる。
その調子にエルザは軽く苦笑して
「ここだぞ、座ってくれ。」
と指差すと自分は恐らく王族の座るスペースまで歩いていく。
「す、すいません。」
隣の席の二メートル近くありそうな大きな冒険者に謝りながら座っている姿に翔太もつられて苦笑してしまう。
恐らく、自分の特殊技能で見た上では力はキリカの方がその男より数段上であるにも関わらずペコペコしている姿が可笑しかったからだ。
「翔太さんまで笑わないでくださいよー」
「悪い、悪い。まだ他の人は無理か?」
「はい・・・自分でも無駄な心配だとはわかってるんですけど・・・」
そのとき、扉を守っていた兵士が
「陛下の御成門である、皆それぞれの方法で礼儀をしめすように!」
と言う声と共に重厚なドアをゆっくりをあけ始めた。
思い思いのポーズをとるなか、翔太はどうすればいいかわからずとりあえず礼をしていたのだが、ふと変な物が目に見えた。
「キリカ、何をしてる?」
キリカが高級そうな机に隠れるように膝と手をつけ、身を丸めていたからだ。
それから連想されるポーズは土下座より他なく、非常にシュールな絵になっていた。
「え?小さい頃、館にあった私の親の故郷の本にこのポーズは最大の敬意をこめたものだと・・・」
「・・・その情報、嘘だと思うぞ。」
等と言ううちに王は翔太達を通りすぎ、エルザの席の近くにあった一番大きな椅子へ移動したところだった。
その姿は、先程直談判しに言ったときとはうってかわって王としての威厳や威圧感、寛大さが同居しているような雰囲気がかもし出されていた。
恐らくこちらが本来の彼なのだろう、先程は娘の恩人と言うことで素直に個人として顔をだしていた。
しかしその厳格な表情には先程の雰囲気は残っていない。
「私がビヨンド ロード ゲルト ヴァルヘイムである、この度はこの国の危機に対して召集を聞き入れてくれたこと、非常に嬉しく思う。」
そこで一度、一同を見渡して言葉を続けた。
「今回の召集は急なものかつ様々な組織が参加していたため大きく連携はとらず、配置だけこちらで決めさせていただくことにした。全体の指令はこちらで受け持つ。よってこのパーティーは士気や友好関係を築くものとしてもらって構わない。だがその前にそれぞれの配置を言わせていただく。」
王は自分の家臣の方向を指差すと
「まず中央本陣は私の軍が勤めさせていただく、相手の主力である亜人を削る役割だ。」
王が次に手を差した先にはジェイドのイケメン面があった。
ジェイドはそれと同時に立ち上がって優雅に礼をする。
「右軍では今回聖王国から来ていただいた精鋭聖騎士の方々とシュメール拍に勤めていただく、こちらは魔族の牽制と切り込み役だ。そして聖騎士の代表である『剣聖』ジェイド殿に指揮していただく。」
次に手を差したのは・・・自称発明家だった。
自称発明家はその手に全く同様をみせず、ジェイドと同じように礼をする。
「左軍は今回協力頂いた冒険者組合の方々とカール公爵に勤めていただく、こちらは魔獣の牽制、殲滅と他の援護を行っていただく、そして冒険者組合最強のクラス『上位九人』の一人フォータル殿に指揮していただく。」
自称発明家にかかっているベールがゆっくりと落ちた瞬間だった。




