集いし者への四重奏(カルテット)
城壁が見えたのは黄昏に近い、太陽が傾きかけたころだった。
村にいた時間が長かったのとミーナに気をつかって馬のスピードをかなり落としたせいだ。
目覚めたときにエルザを見て卒倒されては困るので今は翔太の馬に乗っている。
しかし、今思ってみるとあの魔族の女性とエルザはかなり似ていたようにおもえる。
口調や髪の色、表情、雰囲気等が大きく違ったのでわからなかったが思いかえしてみるとかなり顔の造形が似ていた。
「そのせいであそこまで怖がってたのかな?」
そうだとしたらミーナのあの怖がりようも理解ができる。
「日が沈む前にこれてよかった。」
エルザが安堵の声を上げる。
「雨もやんだし戦火も上がってない。王都が無事そうでよかった。」
「早く報告しないとですね。まだここに来ないともかぎりませんし。」
エルザの腕の中に入っているキリカは身を固くさせながら収まっており、本当に人形のようだった。
おおきく揺れる度にエルザの鎧が当たっていたそうだった。
もっとくっついていたらいいのだが、何か思うところがあるらしく、そうはしなかった。
城門が目視できるほどに近づくと、門番の詰所の近くから大柄で銀の鎧をきた男性と騎士団の制服らしい服を着こなした切れ目の女性が詰所の兵士と話しておりその姿には見覚えがあった。
たしかあれはエルザのところの・・・
「キース、ファルナ、どうしたんだ?こんなことろまで。今日は王城での護衛の勤務ではなかったのか?」
エルザが声をかけると二人は慌てたようにエルザのほうに向き直ると敬礼する。
無論実はいちいち描写などしてないがエルザが兵士の側を通るといつもそうなのだ。
「これは皇女殿下、お早いご帰還で。実に良かったです。翔太殿がついていれば安心とも思われましたが。」
「キース、いつまでも子供扱いするな。いくらお前が私が小さい頃面倒をみているとはいえ。」
エルザが頭に手を当てながら言うと隣ファルナが
表情を全く動かさず、
「霧隠れの森の件なのですがどうやらしっかり功績として認められそうです。」
「そうなのか?あの頭の固い評議会の連中は大分半信半疑だったとおもうが。」
「魔族の軍が遠方で目撃されました。これによって信憑性が高まったと推測します。」
翔太はキリカと顔を見合わせ、頷いた。
どうやらあの村を襲ったのは魔族で間違い無さそうだ。
その後キリカはゆっくりと耳に口を近づけてきて
「この人たちはどなたですか?」
と聞いてくる。
「あー、そう言えばあったことなかったな。キースさんとファルナさん、どっちともエルザの部下で隊長を勤めてる。」
「そうなんですか、『目』で見たときかなり強そうだと思ったので」
キリカの目が一瞬赤く光り、そのまま消える。
「けど、ファルナさん?のほうがなんだか睨み付けてきてるように見えるんですけど。」
「そ、それは気にしなくていい多分、」
そういって後ろでこそこそしているうちにも話は進んでいく。
「緊急会議が行われまして万が一にそなえ、周辺国家の任意で上位冒険者にきてもらっているようです。」
そこから含みを持った表情で
「冒険者組合は全面協力をするそうです。」
「何?では噂のアドバンスナインもか?」
「そこまではわかりませんがかなりの兵力を集中させるとか。」
そこでピクリとエルザの眉が動く。
「ファルナ、まさかあの男まできてはいないだろうな。」
「あの男と申しますと?」
「ファルナ、そこは察しないといけませんよ。君は融通がきかないんだから。」
ゆったりとした口調でキースがたしなめる。
「・・・性格については理解しているつもりです。」
「私は恐らくですが検討がついていますよ。『騎士 ジェイド グラディウス様でしょう。』」
「キース、よくわかったな!」
「伊達に長く一緒にいませんよ。」
キースは微笑むと
「しかし、皇女殿下が彼を拒む理由についてはわかりませんね。容姿、剣の腕、性格、頭脳、何をとっても最高峰なのですが。」
「それは・・・なんとなくだ。」
顔をこちらに向けながら言うとまた顔を伏せてしまう。
後ろで評価を聞いているうちでは本当に非の打ち所のない天才に聞こえるがエルザはなぜかかなり渋い顔をした。
「そうそう、ジェイド様はもう町にこられていて皇女殿下を探していましたよ。あのときは町中の女性が大通りに集まって大変でした。」
ちょうどあんな風にと騒がしい一角を示すとそこには沢山の女性がいた。
老いも若きも様々なタイプの女性が人だかりになっていた。
時々黄色い声が聞こえ、かなりすごい光景になっていた。
「ま・・・まさか」
エルザの顔が青くなると同時に人だかりが割れて一人の青年が顔をだした。
スラリとした長身に女性と間違えそうな端正な顔立ち、瞳は翡翠色でファルナとは違う騎士の制服を自然に着こなした腰には大振りの剣が吊るされている。
「エルザ様、ここにおられたのですか。」
凛とした声とともにその騎士は登場した。




