強化をするには?
ミニサレナの操縦により魔導自動車で無限の彼方へ飛んだ俺達は無事に帰宅。
ビーコンの設置に何度か着陸もしたが、飛行での移動は圧倒的に速く数時間もかからなかった。
俺達じゃ飛行機になった魔導自動車の操縦なんて無理だったから、ミニサレナには感謝しかないな。
そして数日後、俺はシスハと一緒にレムリ山にてリザードマン狩りをしている。
魔石を貯めると新たに決意してからというもの、いてもたってもいられずに狩りを始めてしまった。
流石に地下都市探索でノール達は疲れていたから、こうしてシスハと2人で来ているのだ。
シスハもルーナが深い眠りについてしまったせいで暇なのか、大喜びで同行してくれた。
ルーナは散々連れ回したからしばらく起きてこないな。
エステルも手伝うと言ってくれたけど、無理に言ってそうだったから遠慮しておいた。
余計なことをしなきゃ半自動狩りでそれなりの効率も出せるし、そう焦る必要もないだろう。
2人だから効率はそこそこだが、スマホの画面に表示された魔石がジワジワと増えていくのを見ると顔がニヤけちまうぜ。
「やっぱ魔石狩りをするのはいいな。数字が増えていくのを見ると心が躍るぞ」
「やはり魔物を自分で倒すのは快感ですね。地下都市ではずっとお預けされている気分でウズウズしてたんですよ」
「神官としてそれはどうかと思うが……こうやって魔石集めを一緒にしてくれるのは助かるぞ」
「私からしたら魔石のためとはいえ、すぐ狩りを始める大倉さんも大概ですけどね。そんなにガチャを回したいのですか?」
「当り前だろうが! 魔物を狩ればガチャの石が手に入るとかゲームだったら神ゲーだからな。ゲームで良素材が手に入るイベントがあった時、夜通し周回していたのを思い出す。それが今じゃ常に魔石が手に入るから、本当なら不眠不休で狩り続けたいぞ」
「不眠不休で狩りができたら最高ですよねぇ。いくら私でも寝ずの狩りは本気になっても5日程度が限界ですよ」
寝ずに5日も狩りができる時点で十分凄いと思うんですが……。
いくら強くなったとはいえ眠らず休まずの狩りはきついからな。
だからこその全自動狩りを構築したいんだけど、まだまだ先は長そうだ。
ガチャアイテムでスタミナ増大や睡眠不要な物が出てくれないかな。
休憩がてらそんな他愛ない話をしていると、この前俺が宣言した強化についての話になった。
「ところでガチャの方針をこの前言ってましたけど、私達の強化を優先する当てはあるのでしょうか。星上げや装備を強化するとなるとダブらないといけませんよね。それって相当困難じゃないですか?」
「ああ、ガチャで最も難しいのは狙ったダブりを引くことだからな。闇雲にガチャを回しても普通はダブらない。かと言って神魔硬貨で強化しようとしたら、装備は15枚、ユニットは30枚だし下手に強化もできない」
「そうなると私達の誰かがピックアップ時にガチャを回すしかありませんか。ですがそう都合よくピックアップされたりしませんよね? ユニットと装備の混ざったガチャだと本当に当たりづらそうですよ」
シスハがこんな疑問を持つとはすっかりガチャに染まり切っているな。
彼女の言う通りダブりを当てるのは困難だし、そもそもの話ピックアップされる確率もかなり低い。
GCのガチャはユニットと装備の混合な上に、URユニットだけでもかなりの数がいるから特定のユニットのピックアップすら滅多に来ない。
だからって特定ユニットのピックアップ時以外に引くのは悪手でしかないから難しいところだ。
「まあ今の考えは魔石を集めておいてお前達のピックアップを待つ。それか定期的なピックアップなんて待ってたら気が遠くなっちまうから、神魔硬貨を使ってPU・フェス発生クエストを受けてひたすらフェスをぶん回すかだな。その間にURユニットバトルが発生したら、来てほしいユニットかお前達の誰かが対象になれば御の字ってところだろ」
「なるほどぉ、私達もURユニットバトルの対象になる可能性があるのですか。それなら勝てば大幅に確率アップもして通常のピックアップを回すよりも効率的ですね。魔石さえあれば1度のフェスで星5も狙えそうです」
「そうだろうそうだろう。装備やユニット強化権と交換するなら、そっちに可能性を賭けてもいいと思うんだ」
装備強化権ですら15枚も神魔硬貨を消費するんだし、その分でPU・フェス発生クエストをぶん回すべきだ。
それで1回でも来てほしいピックアップが発生したら、貯め込んだ魔石を使えば爆アド間違いなし。
ガチャと同じくピックアップの発生すら運要素になっている気が……気のせいだな、うん。
俺のパーフェクトな計画だったのだが、シスハがそれに疑問を投げかけてきた。
「ですが私達がURユニットバトルの対象になったとして勝つ見込みはあるんですか? 戦闘に不向きなマルティナさんであれですよ」
「……きついだろうな。お前とマルティナ以外は上級以上の可能性が高い。だけど上級だったらワンチャン挑んでみてもいいんじゃないか? まだやり方次第で勝てる範囲だと思うぞ」
「一応マルティナさんも増えたので上級なら勝てる見込みはありますかね。ちなみに私は修羅級に違いありませんよ。真なる神官力を発揮した私でしたら大倉さんなど瞬殺です」
「はっ、神級って言わない辺りまだ遠慮気味だがお前は初級がお似合いだろ。URユニットバトルの対象になったら倒してやるから、強化されるって喜んでおけよ」
「ほぉ、言いましたね。たとえ初級だったとしても地獄をお見せしてあげますので楽しみにしてくださいよ」
お互いに悪い笑みを浮かべてバキバキと指を鳴らした。
シスハは回復役だしURユニットバトルじゃ低い難易度に違いない。
ノールのような戦闘系はマルティナ以上の難易度で確定と言ってもいいし、候補の中じゃシスハが1番倒しやすそうだ。
仲間内で戦うのはちと心苦しくはあるけど……強化のためなら致し方ない。
「それはそれとして、ダブり以外で新しいユニットならどういう方がいいんですか。前も言っていた気がしますけど、あと足りないのは盾役や支援要員ですかね」
「うーん、その辺りも捨てがたいけど、マルティナが盾役とデバフをこなせるからなぁ。現状を考えると戦闘面以外の人材に来てほしくなってきたぞ」
「戦闘面以外ですか?」
「最近魔導具やら作り始めてるだろ。店に卸したりする商品を作ってもらったり、戦闘以外の技能持ちも重視する頃合いかと思ってな。物作り以外にも情報収集や交渉役とか色々とあるだろ?」
「なるほど、私達も戦闘以外の技能は持ち合わせていますが、専門の方々に比べたら劣りますからね」
カロンやサレナのような最強ユニットは別格だからいつでもウェルカムとして、今は戦闘要員以外の人材確保もしたいところだ。
戦闘は今いるノール達を強化するだけでも十分過ぎる戦力になるだろうし、特殊な技能持ちな人物が来てくれると助かる。
GCに出てくるユニットは例外なく戦闘力持ちではあるけど、支援系はどちらかと言えば戦闘が不得意な奴が多い。
自衛程度はできるが戦闘系のキャラと戦えば蹂躙されてしまう。
本来はシスハもそっち側のはずなんだけど、強いのはこの世界に召喚されて自由度が上がった影響かな。
「色々と技能持ちっぽいユニットはいるけどパッと思いつくなら、料理人、商人、研究者、忍者とか来てくれると今は心強そうか」
「他は何となくわかりますが忍者ってなんですか? 暗殺者的な感じでしょうか」
「GCだと忍者は条件次第で即死攻撃もできるから似た感じだな。敵陣に侵入して情報を得る能力もあったぞ。紙装甲で最悪ワンパンで沈んだりするけど、魔法のような忍術も色々と使って生存能力も割と高かったな。透明化、分身、変化とかしてたぞ」
「ほぉ、それは興味深いですね。なんてお名前の方なんですか?」
「忍者のURユニットは月影だな。あまりに邪悪な手段を使ってくるから、親しみを込めて忍邪の異名でユーザーから呼ばれていたぞ」
「随分な言われようですね。そこまで言われているのは気になってきますよ」
月影はGCの戦乱編のガチャで追加されたキャラの中でも一際ヤバい奴だったからなぁ。
ユニットとしての性能もかなりのものだったけど、あいつの能力があれば情報収集はお手の物だろう。
ドワーフと王国のいざこざもあったし、今後何かしら情報が必要な日が来るかもしれない。
月影なら図書館の制限区域のような場所でも侵入できそうだからな。
他のユニットに関しての話もしようとしたのだが、スマホに着信が入った。
画面を見るとアーデルベルさんの名前が表示されている。
渡したトランシーバーをちゃんと使ってくれたようだな。
「はい、大倉です」
『おお、本当に繋がった! ご、ゴホン……アーデルベルです。大倉さん、商談に関してお話があるのですが近い内にお会いできますか?』
おっ、やっと商談について進展があったのかな。
地下都市探索が終わってちょうどいいタイミングだし、魔石収集グループの結成に向けてこっちも頑張るか。




