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商談2

 アーデルベルさんから連絡を受けて数日後、さっそく俺とシスハとエステルで彼の屋敷を訪れている。

 使用人に案内されて中へ入ると、アンネリーちゃんが笑顔で出迎えてくれた。


「わー、エステルだ! いらっしゃい!」


「うふふ、来ちゃった。また会えて嬉しいわ」


 駆け寄って抱きついてきたアンネリーちゃんにエステルも抱き締め返している。

 せっかくアーデルベルさんの屋敷に行くから、2人を会わせるために連れて来ていた。

 エステルも連れては来たけど商談には基本参加しなくていいと言ってある。

 だけど嬉しそうにしていたエステルは、俺達の方を向いて何やら不安げな顔だ。


「お兄さん本当にいいの? 私も一緒に話をした方がいいんじゃないかしら?」


「何かあれば呼ぶから遠慮しないでいいぞ。前も俺とシスハで話はできたしな」


「私にお任せください。エステルさんは思う存分楽しんでくださいね」


「それならいいのだけれど……」


 不安感は拭えないけど納得してくれたようで、エステルはアンネリーちゃんに手を引かれて連れて行かれた。

 俺とシスハだけでも十分話はできるし、本当に困ったことがあれば後で助言を貰う程度でいいだろう。

 そんな訳で俺達は客間に連れて行かれてアーデルベルさんと対面していた。


「お忙しいところ来てくださりありがとうございます」


「いえいえ、丁度用事も一段落していたので大丈夫ですよ」


「もう少し早かったら逆に困っていたかもですね。予定をお伝えしておくべきでしたか」


「そうしてもらえると助かりますが、冒険者の方が長期不在になるのは存じていますのでこちらの予定も余裕を持っていますよ。こちらですぐ連絡がついたのもとてもありがたいです」


 そう言ってアーデルベルさんは傍に置かれていたトランシーバーに視線を移した。


「やっぱりトランシーバーは使い勝手がいいですか?」


「それは勿論! 遠く離れた相手と瞬時に会話できて、これ程利便性が高い物はありません! 試作品としていただいた通話の魔導具も私共の中で好評でして、すぐ売り出して欲しいとの声もありましたよ」


 前回品物を見せた時に、試作品だった魔導具をいくつか渡していた。

 認可を受ける為なのもあるけど、実際にアーデルベルさん達に使って貰い便利さを実感してもらうのと、使用感も確かめてもらったのだ。

 反応から見て試作品の通話魔導具ですら期待以上に評価されているらしい。

 ガチャのアイテムを参考にしたとはいえ、流石エステルさんの作る魔導具だな。

 そんな会話をしてからアーデルベルさんが今日集まった本題を話し始めた。


「それで今回はお察しされていると思いますが、前回ご提供くださった魔導具の認可についてです」


「国に許可を取らないといけないって話でしたよね。これほど短期間で判断してくれるんですか」


「国が魔法関連には特に力を入れていますからね。有用な魔導具はすぐに流通してほしいと、審査が迅速に行われるんですよ」


 地下都市探索をしたとはいえ、前回アーデルベルさんと会ってからそれほど日にちは経っていない。

 俺達としてはそこそこ期間がかかったけど、移動が一瞬だったから通常の冒険者とは比較にならない早さだろう。

 数か月ぐらいはかかるのかなと思っていたが、こんなに早く認可をしてもらえるのは驚きだな。

 アーデルベルさんは認可の結果について話を続けた。


「最終的に問題ありと言われたのは爆発する魔導具ですね。あまりにも攻撃性が高過ぎると言われました。弱体化のボールも一部協議されましたが、制限ありでの販売なら問題なしとの判断です」


「それじゃあ1つ以外は認可されたってことですか。弱体化のボールは教会でも問題になりそうって話でしたけど、それも大丈夫だったんですか?」


「はい、邪な力を感じはしましたが、魔物が発生したりするほどの悪影響を及ぼす物ではないと言われましたね。完全に力が制御されていて、相手を弱らせるのに特化していると。ただ無暗に拡散されると問題なので、売る相手は選ぶべきだと忠告されましたよ」


 爆発する魔導具がアウトだったのは無理もないか。

 手の平サイズの石でミノタウロスが即死する威力だったからなぁ。

 冒険者向け商品とはいえ気軽に売っていい代物じゃないか。

 だけどマルティナの弱体玉がセーフだったのは意外だぞ。

 元々一部の冒険者向けにしか売るつもりがないから、販売制限に関しては問題ないかな。


「それじゃあ爆発する魔導具はなしとして、現状認可された物だけ売るってところですか? 爆発する物も威力を絞れば認可される可能性もありますよね」


「大倉さん達がよければそれで構いません。既にいただいたいる魔導具でも十分過ぎる種類の数ですからね。攻撃性の高い魔導具は管理する私共も不安要素が多いので……。それに他の魔導師達でも簡単に模倣できると思えませんので、しばらくは市場を独占できるでしょう」


「エステルさんの作る魔導具を真似るなんて簡単にはいきませんからねぇ。マルティナさんや私の作る物も真似できる人はなかなかいないと思いますよ」


 これで人気が出れば他の魔導具店とかも模倣品を出してきそうだけど、作ってるのがエステルだからなぁ。

 並の魔導師じゃとてもじゃないけど真似できるとは思えない。

 しかもどの魔導具も抑え気味に作られているから、たとえ真似されたとしても即座に上位互換を出せてしまう。

 材料として使っているラピスも並の冒険者じゃ採りに行けないし、コスト面からも相当無理をしないと厳しいだろうな。

 マルティナやシスハに関しても同様だから、どれも俺達だけが作れる物と思っていいはずだ。

 少なくともしばらくの間は模倣品が出る心配もなく、現状認可された物で十分やっていけると思う。

 後考えていくとしたら、どれを看板商品にしていくかだよなぁ。


「アーデルベルさんとしてはどれを売り出していきたいですか? それによって作る優先度を考えようかと」


「それはやはり通信の魔導具ですね。あれほど小型で手軽に使える物は革命的ですよ。国から受注が来てもおかしくない代物です。使い捨てだとしても需要は高いでしょう」


「商人の方からすればそれを欲しがるのは当然ですか。連絡の早さは重要な要素ですからね」


「少し私見が混じっていますがその通りです。正直なところどれも需要が高そうですので、優劣つけがたくはあるのですが……」


 俺達もトランシーバーはよく使うし元の世界でも携帯は必需品だったからなぁ。

 この世界では一般的に通信できる魔導具は普及してない物だから、誰でも使えるようになったら革命的な発明なのは間違いない。

 アーデルベルさんは特に気に入ったようだし、ここは1つ取っておきの物をプレゼントしておくか。

 バッグから大き目な紫色の原石1つと小さな同色の原石を複数取り出した。


「それほど通信の魔導具の使い勝手がいいのでしたらこちらを使ってください。採算度外視で作った物です」


「これは一体……あの通話魔導具の上位版ですか?」


「試作品ですけどエステルが面白がって作ったんです。魔力切れがほぼなく10キロ程度は繋がって、中継器を置けばさらに遠くまで通話できます。親機と複数の子機でセットになっていて1度に複数人と会話も可能です。売りに出すにはちょっと手間がかかり過ぎるので微妙なんで止めました」


 エステル達がワイワイと盛り上がって、素材や手間を惜しまずに作った内の1つだ。

 一際巨大な原石を使い魔術をふんだんに盛り込んで、親機の原石を経由して複数の子機と通話が可能。

 同時に何人も会話ができるからネットを使った電話会議みたいな物だ。

 中継器の原石を置けば更に通話距離を延ばせるから、やろうと思えば王都からクェレスやセヴァリアまで繋げられる。

 しかも各原石に魔素吸収機能も付いていて、原石その物が壊れるまで魔力切れなく使用可能だ。

 あのエステルがこれを作るのに半日もかかっていたので、とてもじゃないが量産には向かない。


「こ、こんな物をいただいてよろしいんですか?」


「協力してもらえたお礼ですよ。アーデルベルさんがいなければ今頃困っていましたので」


「それだけでこれだけ良くしていただけるとは……こちらこそ感謝させてください。有難く受け取らせていただきます」


 おや、喜んでくれると思ったけど何だか顔が引きつっているような……気のせいかな。

 これでアーデルベルさんの仕事も捗るだろうし良い贈り物ができたはずだ。

 これから取引をしていくんだから印象は良くしておかないとな、うん。

 そんなやり取りをした後、アーデルベルさんは俺達の意見を聞いてきた。


「大倉さん達が売りたい品物は原石を使った物ではなく、やはり限定品の指輪でしょうか?」


「はい、それを買ってもらうのが目的でしたので。本当は武器や防具なども売りたいんですけど、取り扱う店舗はないですよね?」


「武器や防具ですか……メインで取り扱う店舗を作る予定はありませんが、限定品としてなら大丈夫かと。武器や魔導具を取り扱う店舗の開設は国への申請が必要ですので、併せて両方申請しておきますよ」


 ほほぉ、あくまでもメインで売るのは魔導具だから一般販売はしないけど、会員限定としてなら武器も売っても問題ない、と。

 守護の指輪以外にもガチャアイテムの武器や防具も流せそうだな。

 それで冒険者が強化されれば希少種討伐もしやすくなるだろうし、売れる物を吟味しておくか。

 内心でグヘヘと良案を思いついていると、今度は少し困る質問をされた。


「値段設定はどうしましょうか? 大倉さん達の希望を聞かせていただきたいです」


「値段に関してはアーデルベルさんに一任したいですね。値段設定できるほど経営に詳しくないので。ただあまり安過ぎて需要が高過ぎると供給が難しくなりそうです」


「一任されるとこちらの責任が重いですが……わかりました。大倉さん達は冒険者ですのでお忙しい時期もあるでしょう。生産できる量を考えて値段付けもしたいと思います。ですがあまりに性能が良すぎますので、正直なところどれほど需要があるのか予想もつかないので困りました」


 正直なところこの商売で俺達は儲けなんて考えてないから、値段に関しては割とどうでもいい。

 俺達が品物を作る人件費も多少はあるけど、材料は魔石集めのついでにドロップした物を使うから実質無料。

 そもそも限定販売品のガチャ産アイテムを売るのがメインだから、原石で作った魔導具は客を呼び寄せる程度の扱い。

 販路の提供や管理をしてくれるアーデルベルさんに報いたいので、彼らが損しない金額にしてもらえば十分だ。

 ただ片手間で作ることになるから、安くし過ぎて生産が多くなり過ぎたら困るかな。

 でも生産量に関してはまだそれほど話し合ってなかったぞ。


「ちなみにシスハは癒しの石は1日でどれぐらい作れそうだ?」


「うーん、あればあるだけ作れるんじゃないですか? あの程度でしたら1日1000個作っても余裕ですよ」


「は、マジで?」


「あっ、でも十字の印描くのに時間がかかりますね。石に効果を付加するだけなら一瞬なので、エステルさんと相談して何か考えてみますよ」


「あー、という訳でので生産量はある程度安心してもらって大丈夫そうです。素材がラピスの石なのでそっちを集めるのに時間がかかりそうですけど」


「そ、そうですか……話を聞く限り安心はできますが驚きが多いですね……」


 俺もアーデルベルさんも冷や汗をかきながら苦笑いし、シスハもうふふと笑っている。

 あれを1日で1000個作るのも簡単とは……ふざけた様子もないからマジっぽいな。

 エステルも魔法で量産とか考えだしそうだから、素材の枯渇を心配した方がいいかもしれん。

 ルゲン渓谷も魔石狩りの優先候補地にしておこう。

 あっ、そうだ。ついでの地下都市探索で手に入れた金属も渡しておこうかな。


「そういえばこの前の探索でこれを手に入れたのですが、店舗経営に何か役立ちませんか?」


「これはコロチウムですか!? それとこっちは……金属のようですが」


「ミスリルって金属みたいです。数は少ないですけど手に入ったんですよ」


「ミミミ、ミスリル!? あの伝説のミスリルですか!」


 アーデルベルさんは立ち上がって今まで見たこともない慌てぶりだ。

 おお、これだよこれ、やっぱミスリルって聞いたらこれぐらい驚くよな。

 そんな期待通りのアーデルベルさんの反応に満足して、今回の商談も無事に終わるのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ガチャ産金属を使って武器を作った場合、それは魔石条件の“ガチャ産アイテムを所持している”になるのだろうか? ガンツさんがどう頑張っても加工出来ないような、未知の金属で作った武器や防具…
[良い点] 更新ありがとう [気になる点] マルティナの名前を出して大丈夫か?特に何も起こらないだろうけれどもw アーデルベルさんの胃が危ない・・・危なくない? [一言] 平八たちに常識を教えるのは…
[気になる点] ミスリルでその驚きか… 作中には出て来なかったはずだがその上位種のオリハルコンやらアダマンタイトが出て来たらどうなるんだ?
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