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外に出たい

「ねぇねぇ、平八」


「どうかしたか?」


 フリージアの召喚から翌日。

 ノールと居間で話をしていると、フリージアがやってきて声を掛けてきた。


「私の部屋、やっぱり窓があるところがいいんだよ。外が見えなくて息苦しい!」


「フリージアはそんなに外が見たいのでありますか?」


「うん、まだ召喚されてから1度も外に出ていないんだよ? 街中を出歩けないとしても、せめて外の景色ぐらい自由に見たい!」


 ガチャの整理を終えた後、余分な装備をハウス・エクステンションのポイントに変換し、フリージアの部屋を生成した。

 もちろんその部屋は俺やエステルのと同じで、窓がないから外は見えない。

 どうやら彼女はそれが不満らしい。


「そんなこと言われてもなぁ。窓から顔出して人に見られても困るからさ」


「耳を見られるぐらいなら平気だって! 私も注意するから、安心してほしいんだよ!」


「全く安心できないのですが……。考えておくから、今は勘弁してくれ」


「むぅ……わかった、我慢する。でも、ちゃんと考えておいてね? 約束なんだよ!」


 1度はしゅんと肩を落としたが、すぐに顔を上げたかと思うと、フリージアは俺の両手を握り締めてブンブンと上下に振りながらお願いしてきた。

 テンションの浮き沈みがノール以上に激しいな……。

 ここまでお願いされたら早急になんとかしてやりたいけど、そう簡単なものでもない。

 窓のある部屋に住ませるのも、うっかり顔を出して見られたとかやらかしそうだから、今は我慢してもらいたい。

 だけど、このままにしていてもフリージアがストレスを感じそうだ。

 

 そう悩んでいると、ノールがある提案を始めた。


「本当の外ではないでありますけど、良い場所があるのでありますよ。一緒に来てみるでありますか?」


「えっ、ホント! 行きたい! 行きたいんだよ!」


「むふふ、そうでありますか。ならさっそく行くのでありますよ!」


「わーい!」


 ノールは元気よく立ち上がり片手を上げ、自分の部屋へ向かった。

 その後を同じように片手を上げ、フリージアも追っていく。

 良い場所って……まさかペット小屋の中じゃないだろうな?

 ノールの部屋に行くなんて、それぐらいしか考えられないぞ……。

 

 フリージア達と入れ代わる形で、エステルが居間へやってきた。


「ノール達の騒がしい声が聞こえたけど、何かあったの?」


「ああ、フリージアが外に出たいって騒ぎだしてな。それでノールがモフットの小屋に連れていくつもりみたいだ」


「確かにあの中なら外みたいなものだから、フリージアも満足しそうね」


 小屋の中はノール達が走り回れるぐらい広いし、風景も本当に外にいるんじゃないかと思うほどだ。

 フリージアがあそこで満足してくれるなら助かるけど……ちゃんと外に出られる手段は考えておこう。

 とりあえず気晴らしと実力の把握を兼ねて、後で狩場にでも連れて行こうかな。

 まだノール達が戻ってくるまで時間も掛かるだろうから、ちょっと気になったことをエステルに聞くことにした。


「エステルから見てさ、フリージアってどんな感じだ?」


「どんな感じって言われても……明るくて素直な良い子だと思うわよ。何か不安なことでもあるのかしら?」


「俺も多少はどんな奴か知ってはいるんだけど、シスハみたいに一見普通だけど実は……とかありそうでさ」


「お兄さんは心配性ね。大丈夫、シスハと違ってそういう雰囲気は感じないわ」


 シスハも第一印象は凄く良かったけど、今ではその印象も180度変わっているようなもんだからな……。

 そのせいで召喚時の印象が良かったフリージアも、何か裏があるじゃないかと勘ぐってしまった。

 シスハを見破っていたエステルがこう言うのなら平気だろう。


「エステルがそう言うなら大丈夫そうか。いやぁ、シスハも最初の印象と違って、今じゃ完全な見た目詐欺だもんな、ははは……ん?」


 俺がそう言って笑っていると、目の前にいたエステルが苦笑を浮かべて俺の後ろを指差している。

 何事かと振り返ると……すぐ後ろに良い笑顔をしている素敵な神官様が立っていた。


「見た目詐欺で申し訳ございませんでしたね」


「あっ……いや、違う。今のは平八ジョークって奴で……」


「うふふ、わかっていますよ。そう身構えなくても、何もいたしませんから」


 許された! てっきり何かされるかと思っていたぞ。

 見た目詐欺なんて言って悪いことしたかな……。やっぱりシスハは優しい奴だ。

 そう思ったところで、急にシスハはパンッと両手を叩いた。


「あっ、そうだ。大倉さん、久々にマッサージなどいかかですか? 神級でご奉仕させていただきますよ」


「殺る気まんまんじゃねーか! こら、こっちに来るな!」


「遠慮なさらないでください! 48のマッサージ技で、天国をお見せいたしますよ!」


「おい馬鹿止めろ! 俺に近寄るなぁぁ!」


「全く、2人共騒がしいわねぇ……」


 笑顔のまま手をワキワキと動かして近づいてくるシスハから、俺は必死に逃げた。

 神級のマッサージとか、天に還らされちまうわ!

 頬に片手を当てて呆れ気味なエステルに見られながら、俺はシスハとしばらく追いかけっこをするはめになった。

 口は災いの元って奴か……。


 それから数十分後。


「むふー、大満足なんだよー。ノールちゃん、モフット、ありがとう!」


「むふふ、気に入ってもらえて何よりなのでありますよ!」


 2人は楽しそうな雰囲気で居間へと帰ってきた。フリージアは幸せそうな表情で鼻息を吐く。

 彼女に抱き抱えられているモフットも、返事をするようにプーと鳴いて片手を上げている。


「どうやら満足したみたいだな」


「うん! あんな小屋に住めるなんて、モフットが羨ましいんだよぉ」


「モフットも遊び相手が出来て嬉しそうなのでありますよー」


 モフットの小屋の中は良い評価だったみたいだ。

 さて、戻ってきたし、ようやく狩りに行けそうだな。


「戻ってきたばかりですまないけど、これから狩りにでも行かないか?」


「えっ、本当!」


「ああ、フリージアの実力を確認しておきたいからな」


 狩りに行くと聞いた途端、フリージアは目を輝かせて食いついてきた。

 モフットの小屋で満足はしたみたいだが、やっぱり外には出てみたいようだ。


「確認するとしたら、やはりレムリ山辺りでしょうか?」


「リザードマン相手でもいいんだけど……まずは慣らしがてらルゲン渓谷にしようと思うんだ。あそこは見通しがいいし、離れたところにあるラピスっぽい岩を狙撃するとかどうだ?」


「あら、それはいいわね。フリージアなら私と違って、周囲をまとめて吹き飛ばしたりしなくて済みそうね」


「エステルの遠距離攻撃は、下手をしたら山が崩れるでありますからね……」


 弓といえばやはり遠距離からの狙撃がメインだろうから、まずはルゲン渓谷でどのぐらいの距離まで攻撃できるか見てみたい。

 エステルも遠距離攻撃はできるけど、大体は火の魔法で目標ごと周囲一帯を吹き飛ばしたり、水の魔法でなぎ払ったりと、おおざっばな攻撃方法だからなぁ……。


「えへへ、任せて! 狙撃は得意なんだよ!」


「おう、期待しているからな」


 フリージアは片腕を前に突き出して、ビッと親指を立てて自信満々なご様子。

 ちょっと抜けていそうなところはあるけど、弓に関してはURなだけあって間違いなく凄腕のはず。

 どんな狙撃が見れるのか楽しみだぞ。



「わぁー、ここは岩ばかりだけど、下は良い眺めなんだよー」


 さっそくルゲル渓谷にやってくると、フリージアは岩山の上から下の森を見下ろして感嘆の声を上げている。


「あれ、そういえばルーナちゃんは一緒に来ないの?」


「ああ、あいつは自宅警備担当だからさ。フリージアを召喚した時は朝から起きていたけど、あれは稀だ」


「そうなんだ。自宅警備を任されるなんて、ルーナちゃんは信頼されているんだね。小さい子なのに凄いんだよ!」


「いや、信頼はしているけど、またちょっと違う……あっ、やっぱりいい。詳しくはまた今度な」


「うん? 変な平八なんだよー」


 信頼はしているし、自宅の警備もしてもらってはいるけど……何か間違って伝わっている気がする。

 ま、まあ、その認識でも問題はないからいいのかな……?


 よし、気を取り直して、まずはフリージアのステータスの確認だな。


――――――

●フリージア

レベル 70

HP 3700

MP 850

攻撃力 1250

防御力 550

敏捷 120

魔法耐性 10

コスト 15


固有能力

【神域の射手】

 命中補正『大』 射程延長『大』 敵による阻害効果減少。

スキル

【インベルサギッタ】

 広範囲に持続する同時攻撃をする。 再使用時間:1日

 B:77 W:55 H:81 推定:Bカップ

――――――


 おぉ、最初から70レベルか……俺のレベルが上がっているおかげで、召喚直後から既に高レベルだ。

 ノール達と比べると、HPと攻撃力と敏捷がそこそこで、防御が若干低い感じだな。

 遠距離ユニットだから打たれ弱いのは仕方ないか。エステルと違って動きは速いみたいだから、移動しつつ後方から援護射撃をしてもらう戦い方になりそうだ。

 阻害効果減少がよくわからないけど、有用そうではある。

 ……あそこはそこそこだな。弓を撃つのに邪魔にならなそうな大きさだ。


「さてと、まずはどれを狙ってもらおうか」


「相変わらずラピスが擬態している岩はわからないでありますよ」


「倒すのは楽ですけど、見つけるまでが大変ですからね」


「ノール達はまだ原石集めをしているのよね? どれがラピスが判別できたら、原石探しも楽になってお金稼ぎもしやすいのだけど……」


 目前に広がる岩山を眺めてみても、相変わらずどの岩がラピスなのかわからない。

 普段は地道にそれっぽい岩を叩いて探しているけど、これが簡単に判別できたらだいぶ楽になるのだが……。


「とりあえず魔物を撃ち抜けばいいんだよね?」


「ああ、俺達の方でもそれっぽいの探して伝えるけど、自分で魔物っぽい岩を見つけたら自由に撃ち抜いてくれ」


「了解なんだよ! それじゃあさっそくやってみる!」


 よく探しもせずに、いきなりフリージアは緑色の矢を弓につがえ始めた。

 おいおい……さすがにそれじゃラピスは見つからないだろうに。

 そう思っている俺とは裏腹に、彼女は自信満々な表情で姿勢を整え、普段の緩い雰囲気が消え失せる。

 そして息を大きく吸い呼吸を止めた直後、ついに矢が放たれた。

 大きな風切り音と共に、近くにいる俺のところまで軽い衝撃波が伝わり、どんだけヤバイ威力があるのかと冷や汗が出てくる。

 

 放たれた矢は凄まじい速さで飛んでいき、ついに離れた場所にあった1mぐらいの岩に着弾。

 すると岩は一瞬で砕け散って、光の粒子を撒き散らした。どうやらラピスだったようだ。

 しかしまだ彼女の矢は止まらず、今度はその後ろにあった倍ぐらいの大きさの岩にぶち当たると、貫通してその岩も粉々に粉砕する。


「えへへ、あったり!」


「凄い、凄いのでありますよ! さすがはフリージアでありますね!」


「おぉ……1発目から当てやがった。しかも1撃かよ」


「それどころか、ラピスを撃ち抜いた矢がそのまま後ろの岩も貫いていましたよ……」


「さすがは弓のURユニットね」


 やべぇ、やべぇよ……ラピスを1発で見つけたのも凄いけど、矢で岩を粉々に粉砕するって……。

 ラピスに直撃させた後も全く威力が衰えてなかったぞ。

 能天気そうな性格しておいて、えげつない攻撃力してやがる。

 

 それからもフリージアは矢を射り続け、5回連続1発でラピスを倒した。

 距離もどんどん長くなっていき、俺が双眼鏡で確認していると、最後の方は恐らく1キロぐらい離れているラピスに当てている。

 弓矢がそこまで飛んでること自体が既にイカれてるけど、それを当てて1発で仕留めやがった。


 弓の技量にも度肝を抜かれていたが、ここでようやくおかしなことに気が付いた。

 ラピスを連続して1発で見つけているのはあまりに不自然過ぎる。


「な、なあ。さすがに5連続1発でラピスを当てるっておかしくないか?」


「フリージアさん……もしかして、ラピスがどれかわかっているのですか?」


「うん、なんとなくそれっぽいのを狙ってるんだよ」


「えっ、わかるのでありますか!?」


「スキルで擬態しているのに、そんなのわかるの?」


 なん……だと……。

 感覚の鋭いノールですらわからないのに、フリージアには擬態しているラピスがわかるだって!?


「うーん、説明が難しいんだよ。なんて言えばいいのかな……風景から浮いている? 岩だけど岩っぽくない? えーと、むむむ……難しくてわからないんだよ……」


「わかった、わかったからそれ以上は言わなくていいぞ」


「その気持ち、よくわかるのでありますよ。考えるな、感じるんだ! ってことでありますね!」


「それ、それなんだよ!」


 ノールも感覚頼りにしていることが多いからか、フリージアの言ってることがわかるようだ。

 今日の朝2人で騒いでいる時にも思ったけど、この2人相性良さそうだな。

 

 それよりも、擬態しているラピスがどれかわかるというのは朗報だ。

 これで今度から原石集めをする効率がめっちゃ上がりそうだぞ。

 もしかして固有能力の阻害効果減少って、こういう意味なのか?

 軽く実力を見ようと狩りに来たけど、想像以上にフリージアの凄さを思い知らされたぞ……。


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[一言] 暗殺に役立ちそう。
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