32話:魔法使いになった理由
そういえば、だが、ウィンディアは苗字も名前も親が付けた名前らしい。俺の知っている【氷の女王】の苗字は日本人のものだし、旧【雷帝】は外人だったが、ウィンディアでもシルバーでもない。曰く、「シルバーはお父様がつけてくださいました。お母様はパープルと言われたそうで、本当、シルバーでよかったです」だそうだ。
まあ、その辺のネーミングセンスは、俺もよく分かっているので同情した。
歩いていると前方から佐薙がやってきた。
「ん?篠宮君じゃない。アンタ、何で学校サボったの?」
「行くのが面倒だったから」
俺が簡潔に言うと、佐薙はきょとんとした顔をしていた。
「そんな理由で学校をサボるの?」
「まあ、今日はそうだな。前にも一回あったな」
俺は適当に答える。
「あんたって、一件真面目に見えて、勉強できなかったり、魔法使えなかったり、学校サボったりと、案外ダメ人間なのね」
「ダメって、おい」
まあ、否定はしないが。
「佐薙、お前って、どうして魔法使いになったんだ?」
「何よ、突然」
確かに突然であるが、一度聞いてみたかった。
「あたしはね、そもそも魔法を認知してなかった一般人だったのよ。七年前までは、だけど。十歳頃のあたしの父は、死んだ母の代わりに炎魔火ノ音さんと婚約したのよ」
炎魔火ノ音。確か【業火】の魔法使い。二つ名は【轟炎の魔女】だったはず。詳しいことは知らないが、【氷の女王】の世代の凄腕の魔法使いに名を列ねているらしい。
「それで、継ぎたくも無い呪印を継がされて、紫炎の魔法なんてモンを使うようになっちゃったのよ」
へ~、佐薙にも深い事情があるらしい。意外なことに。
「なるほど」
「そう言うあんたは、どうして魔法使いになったのよ」
俺がどうして魔法使いになったのかといわれても、俺は知らない。
「俺が魔法使いになったのは、そうだな。昔のことだ。
あれは、俺が、五歳の頃だったか。母さんが、いなくなったんだよ。
父さんは、その頃には居なかったし、結局、母さんがどこへ行ったかは分からなかった。それで、俺を引き取ったのが、俺の親友の家だったんだが、数年後、親友が死ぬ寸前、俺は魔法に目覚めたんだ。
そのあと、俺は、気を失い、気づいたら師匠と一緒にいた。
まあ、そんな感じで魔法使いになりましたとさ」
俺の話を聞いた佐薙は、なんともいえない表情をしていた。
「ん?どうした?」
「え、い、いや、あんた、意外と壮大な過去してんのね」
そうなのだろうか。自覚は無い。
結局、そんな話だけして、佐薙とは別れた。




