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雪夜の魔法  作者: 桃姫
雪の魔法――The snow of the silver melts calmly――
19/51

19話:奇襲と目撃

 俺はふと、思い出した。あのときの少女。確か、あの子もしなのと名乗っていた。髪色も同じ。俺の勘が正しいなら、彼女が漣しなのだろう。

 漣、いや、しなのに直接聞くのが一番か。

「しなの」

 俺が声をかけると、しなのは、女子達との会話を中断して俺のほうを振り返った。

「なに?ショウキくん」

 にっこりと屈託の無い笑みを俺に向ける。

「少しいいか?」

「うん、いいよ」

 数秒の間もなく、即答するしなの。それに対して、しなのと話していた女子達がこそこそと話をする。そして、クラスの女子、確か、栗原さん、が、聞いてくる。

「あ、あの……篠宮君と、しなのちゃんって仲いいの?」

 その疑問に俺が答えようとするが、しなのが先に答える。

「どうなんだろうね。でも、まあ、今は、私が告白して、答え待ちかな?」

 その答えに、女子達は、キャーと歓声を上げる。はあ、厄介な。

「ショウキくん、それで、話なら、お昼食べながらにしない?」

「お、おう」

 なんだかんだで、お昼を食べながら喋ることになるらしい。


「はい、あ~ん♪」

 そして、どうしてこうなった。

「あ、あの、なあ」

「あ~ん、してくれないと、お話できないよ?」

 何なんだ、これは。拷問か。ユキネの視線が刺さる。佐薙もギロリとこちらを見ている。

「あ、あ~ん」

 ぱくりと食べる俺。

「はい、それで、話って?」

「いや、どうでもいいことなんだけどさ」

 俺は、聞いてみる。

「はじめてあった時に貸した服、返してもらってないよな」

 洗濯するから、と持って帰った服を返してもらっていない。彼女が覚えているなら、

「あっ!忘れてたわ。今度返しにいくわ。場所も一応覚えてるから」

 やはり、俺のことは忘れていないらしい。と言うか、そこまで覚えていたのか。まあ、返しに来るというのなら、それはそれでいいか。


 拷問のような昼休みも終わり、俺は、ユキネと佐薙を連れ、帰ることにした。

 道中、特に気になることは無く、家まで帰れることに一安心して、軽い足取りで、ユキネ、佐薙(家の方向が同じらしい)と共に雑談しながら歩いていた。

「っ!敵っ!」

 そんな、楽しい雑談を打ち切ったのは、佐薙の一言だった。俺も、聞くなり、気配を探る。後ろに、二人、魔力はそれなりに高い。おそらく襲撃しに来た魔法使いだろう。

「よし、逃げるか」

 ガシッと俺の襟首を掴む佐薙。

「ぐえ、何すんだよ」

「いや、戦いなさいよ」

 佐薙の言葉に、俺は、眉を寄せ、「無理無理」と言いたげな表情で、言う。

「無理」

「なんでよ」

「俺、魔法使えない。ユキネ、変装しか出来ない。以上の理由から」

 俺は、よほどの緊急時じゃないと【夜】の力を使わない。

「あたしとの戦いで使ってたじゃない」

「あの時は、特別だ。通常じゃ、【夜】の魔法(・・・)は使えないんだよ」

「あんたら、使えないわね」

 俺の含みのある言い方に気づかなかったのか、普通に受け流した佐薙は、敵に向かって赤紫の炎を投げた。直後、背後で爆散する炎。

「って、お前なぁ。もうちょっと被害の割合を考えろよ」

 住宅に燃え移らない程度の炎だったが、危機が無いとは限らない。

「良いじゃない。さて、帰ろ」


Sceneしなの

 えっ、何あれ?

 私が目撃したのは、佐薙ハルカが投げた何かが、爆炎を放ったというものだ。

 非常識。常識外。意味不明。理解不能。私のまったく知らない未知の領域。

 そして、それを何事もなく見ていられたショウキくんもまた、その常識の外の領域に居る人間。

 佐薙ハルカは、超能力者なのだろうか。パイロキネシスト?魔法?異能力?


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