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雪夜の魔法  作者: 桃姫
雪の魔法――The snow of the silver melts calmly――
18/51

18話:翠の少女―邂逅記憶

Sceneしなの

 私は、自分で言うのもなんですが、美少女と呼ばれると思う。言い寄られた数は、もう覚えていない。それに学校、外、問わず、私の胸に集まる視線は分かっているつもりだ。

 でも、私が好きな、肝心な人は、美少女二人に囲まれている。

 私にはなびかないのかもしれない。でも、諦めたくは無い。

「篠宮、ショウキくん」

 彼との出会いは、今でも鮮麗に覚えている。

 私は、あの日、死のうと思っていた。行き場を失くした犬のような気分だった。


 所謂、反抗期と呼ばれるものだったのだろう。親の言う事成す事全てに反発したくなる。だから、その日も、反発した。

 家から飛び出した。財布もカードも持たずに。家からあまり出なかった私は、途方にくれた。

 突然の豪雨。視界が見えなくなるほどの豪雨のなか、私は、傘も差さずにふらついていた。身体は冷え、意識も朦朧とし、道の端に座り込む。

「このまま、死のうかな」

 父の言いなり、母の言いなり、そんな人生は、もう嫌だ。

 顔を伏せ、地を見つめる。服は水を吸い重く、冷たい。上から降り注ぐ雨は、私の身体を、心を、水浸しにする。

 そんな雨が、不意にやんだ。いや、やんでない。何かに遮られた。

 上を見る。少し照れ隠しをするようにそっぽを向いた少年がいた。

「大丈夫、か?」

「え……、あの、その」

 なにを言えばいいのか分からない。すると、少年は、私を抱えあげた。器用に、傘を首と肩ではさみ、私を連れて、どこかへ向かう。

 どこへ向かっているのだろうか。

 程なくして、一軒の家に着いた。ここは……。「篠宮」と言う表札が目に入る。

「わ、私、しなの」

「しなのか、俺はショウキ。篠宮ショウキだ」

 彼の家を眺めるが、電気はついていない。そのまま連れられ入った、玄関にも他人の靴は無く、彼の靴があるだけだった。

 一人で住んでいるのだろうか。

 私が、周りを見ているのを察したのか、彼が事情を説明してくれる。

「此処は、俺しかいないよ……。親はもうずいぶん前からいないし、一時期一緒に住んでたやつも、どっかいったし、あの人も……。だから一人なんだ」

 淋しそうに笑う少年は、儚く、今にも消えてしまいそうだった。

「あっ、そうだ、体濡れているよね。フロ、自由に使って(浸かって)良いから」

 しかし、すぐに意識を切り替えたのか、明るい笑顔を作って、私に言った。

「あ、ありがとう」


 少し大きめのお風呂に浸かりながら、彼について考えていた。私を救ってくれた彼。ずっと、淋しく生きてきた様子が伺える彼。今度は、私が救ってあげたい。幸せにしてあげたい。そう、思った

 しばらくすると、ショウキくんが更衣室のドアを開けた。少しドッキっとしたが、慌てず、なんとか落ち着く。

「着替え、此処においておくから、すきに着てくれ。少しきついかもしれないが、其処は勘弁してくれ」

 私は、自分の胸を見下ろす。

 まあ、男物だったら確かにきついかもしれないな……と思考をめぐらせた。

 しかし、用意されていた洋服は、女性が一般的に着るワンピースや下着だった。丈が少し長い事から、年上の女性が着ていたのではないかと予想できる。下着は、ややきついものの十分に使えるサイズだったので、問題は全く無かった。だが、なぜ、ショウキくんがこんなものを持っているのかが一番の謎だった。

 まさか、女装趣味があるのだろうか。いや、丈的に違うだろう。だったら何故。

 鏡を見て、おかしなところが無いかを見るが、やはり、少しきついようで、胸が強調されて見える。すこし、顔が隠れていたので、髪を横で結わえることにした。今まであまり見た目を気にすることは無かったが、彼の前だと意識すると、妙に気にしたくなるのだ。

「これで、よし」

 ショウキくんの家のリビングのようなところにショウキくんは居た。

「あ、あがったん……だ……」

 気配で気がついたのか、振り向きながら言葉を発して私を見たとたんに顔を赤くしながら元の向きに戻した。

 意識はされてるんだ、と少し嬉しくなったわたしを他所に、顔を赤くして、ちらちら、見てるショウキくんはなかなか可愛らしく感じられた。

「ねえ、ショウキくん。一つ聞きたいんだけど、なんで、こんな服もってたの?」

「あっ、それは、前に、此処に一緒に住んでた人が、置いていった服だよ……」

 どこか懐かしげに、それで生き生きと語る彼。

「どんな人?」

「二年間住んでいたんだ。俺と、あの人は……」

 少し、優しげで、かつ寂しさと懐かしさを織り交ぜたような少年の顔に、少し、胸が痛んだ。そして、私は、少年に語った。私の今までの生き方と悩みを。

「私、両親の言うとおりに生きてきたの。だけど、それが、いいのか、悪いのか分からなくなって……」

「だったらさ、好きなように生きれば良いんだよ。親がどうだとか、そんなの関係無しにさ。自分には自分なりの生き方があるんだから」


 服が乾き、私は、名残惜しくも、少年の家から家に帰る。少年から借りた服は、一応、私が洗濯して返そうと、持ち帰った。


 その後のことだ。私が、両親に、「貴方たちの言いなりになるのはやめた」、と宣言したのは。


 今のわたしがあるのは、あのときの言葉をくれたショウキくんおかげだ。そして、今でも変っていない気持ち。彼を幸せにしたい。


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