14話:記憶の断片
寒い。本当に寒い。ただ、寒い。
どこか分からない。気がつけばここに居た。
足元には、深々と降り積もった雪。一面に雪が積もり、今も尚降り続けるそれは、光に反射して、美しく幻想的だった。
ふと顔を上げると、紫に輝く「瞳」と紫色に煌く「髪」。白雪のように白い肌。二十代くらいだろうか。彼女は、幻想的な背景よりも美しかった。
さながら雪の精のような女性。
「誰、だ?」
かすれるような声で聞く。その声に、女性は、透き通る声で言った。
「貴方は、私に逢う権利があったの。だから、貴方はここに居て、私もここに居る」
言葉の意味が理解できない。権利とはどう言う意味だろうか。
「貴方は、心に九つの華を持っているわ。それが逢う、資格であり、権利」
九つの、華?そんなもの、持っていない。
寒さでボーっとする頭で、言葉の意味を考える。
「さあ、【夜】の坊や」
彼女は、温かい声で言う。
「私と一緒に行きましょう」
行く?どこへ……?
「全ての【始まり】にして、起源へと通ずる場所へ」
始まり……?「起源」?
「今はまだ、わからなくてもいいわ。だけれどね、いつか、きっと分かる日が来るわよ」
分かる日が来る?
「さあ、咲かせましょう。貴方の中に眠る九つの華を」
咲かせる?
「目醒めなさい【白銀雪夢】」




