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俺は世界をハックする!  作者: 黄金餅
Hello, World.
1/3

⒈俺が世界をハックする!?

新連載始めました。最初の方は定期更新ですが、途中から不定期更新、または週一くらいになると思います。

基本的に水・木・土・日に更新します。気が向いたら他の日にも更新できると思います。


実際に、スキルとかウィンドウとかが出てくるのは4話からになります

俺はどこにでもいる三十四歳の会社員。名前は青宮翔吾。

今日も今日とて、たいした量でもない残業を淡々とこなし、コンビニで晩飯を調達して家へと帰る。そんな、ありふれた日々を繰り返している。


唯一と言っていい趣味は音楽だ。

特定の推しもいるにはいるが、「良さげな曲はないか」と、まだ見ぬ旋律を求めて新旧問わずアーティストの海を泳ぎ続けている。自宅での作業中は、あえて俺の脳みそでは理解できないような外国語の曲を流す。それが一番、思考の邪魔をせず捗るのだ。


それにこの間、思い切って高値のコンポを新調した。音質は格段に良くなったし、耳に飛び込んでくる音の解像度が違う。おかげで作業効率も二倍になった気がしている。


プシュッ


プルタブを引き、黄金色の液体を喉へと流し込む。金曜日というのは、全くもっていいものだ。明日の出勤を気に病むことなく、ただビールを喉に鳴らせる。


さて、今夜の選曲はどうするか。……そうだな、Dr.Childrenにしよう。長きにわたって第一線を走り続ける、言わずと知れた人気グループ。マニアックな表現を好む時期もあったが、結局のところ、大衆が絶賛するものには相応の理由がある。その音楽を、今はただ、新調したコンポの芳醇な響きで贅沢に味わいたい。そんなふうに思いながら、ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ、と腹の底に響くような音が鳴り始めたその時。


「ぐっ、がはっ!?」


突如として、俺の体がおかしくなった。眩暈がする、視界が真っ暗になり、冷や汗が猛烈に出ていることがわかる。キーンと耳鳴りがし、だんだんと力が入らなくなる。


新調したばかりのコンポから放たれた重低音が、まるで物理的な質量を持った「塊」となって俺の胸を貫いたかのようだった。心臓の鼓動が、スピーカーの振動に無理やり上書きされていく。

視界が激しく明滅し、先ほどからずっと流れているDr.Childrenの旋律が、何が起こったかも分からない己の体へ響く。


「く、そ……何が……」


床に崩れ落ちた俺の手から、飲みかけのビール缶が滑り落ちる。黄金色の液体がフローリングに広がり、だんだんと意識が薄れてゆく。


鉄の味がさらに濃くなる。己の鼓動は急速に遠のいていき、感じられたのはコンポが流す重低音だけ。

三十四歳、独身。

残業帰りの金曜日。高価なコンポで音楽を聴き、ささやかな趣味を楽しんでいたはずの俺の日常は、


ドゥッ


その最後の一音と共に、あっけなく消えていった。



◇◇◇



パチリ、と目が開いた。なぜだ、俺は死んではいなかったのか?でもそれだとおかしい、病室だってもう少し彩りがある。だから俺は今いる空間に一言物申したい。


「いや、白くね?」


「だってしょうがないじゃないの〜。他の人たちは書斎風とかにしとくと『ラノベで読んだのと違う』って文句を言ってくるんだもの〜。どうすればいいって言うのよ〜」


まさか自分の呟きに返事が返ってくるとは思ってもみなかったため、驚愕でズザザザザ、と後ずさる。人間は本能的に危機を感じた時にはこんな動きもできるのか、と妙なところに感心しつつ、俺の呟きに返事をした、妙に間延びした喋り方の女性へと目を向ける。そこにいたのは、およそ俺の人生では出会うことなど不可能であろう絶世の美女が。


「えーと、あなたは?」


なぜか妙に落ち着いている自分に違和感を感じながらも、率直な疑問をぶつけてみる。


「あら〜、あなた嬉しいこと言ってくれるじゃないの〜。それにしてもあなた鋭いわね〜」


「は?」


いや、流石にこの反応は許されるだろう。あなたは誰ですか、と聞いたら嬉しいわ、それに鋭いですね、と返されたのだ。鋭い質問をしてくれるなんて嬉しいわ、ならまだ許容範囲だったかもしれないが、鋭いですね単体では無理だろう。……というか鋭い質問をしてくれて嬉しいわ、でもダメな気がするが。


「ああ、ごめんね〜?実は私、この空間にいる人たちの思考が読めるんだ〜」


いや、それは先に言ってもらわないと困る奴もいるだろ。エロいこと考えてたらどうするんだ。


「まあ確かに〜、それはそうよね〜」


「あ、思考読まれてるんだった。もう全部口に出したほうが早いのでは……?」


「あはは〜、君面白いね〜。もっと話してたいな〜。でも残念、制限時間があるから、うかうかしてられないんだ〜」


「制限時間……」


「あ〜、別に君は気にしなくていいよ〜」


「分かった。と言うか結局あなたの正体は?」


「え〜、大体予想ついてるでしょ〜?」


「予想と正解がかけ離れてることだってある」


「ん〜、まあ一理あるよね〜」


「それで?あなたの正体は?」


「まあね〜、この美貌を見れば分かるとおり流転の女神、スィス様で〜す。いえ〜い。ほら一緒に?」


「い、いえ〜い」


の、ノリが分からん……っ!!分からなすぎる……っ!!


「いえ〜い。まあそんなことは置いておいて」


「置いておいて?」


話題の転換が早いな、この人、というか女神絶対他の人振り回してそう。


「あ〜、今失礼なこと考えたでしょ〜」


「あっ、やべ。ごめんなさい」


「いいよ〜。それじゃあ君の転生先について紹介いたしま〜す」


「え、俺って転生するんですか?」


先ほどのように話題の切り替えの速さにも驚きだが、こちらの方が驚きだ。


「あれ〜?私説明してなかったっけ〜?」


「1ミリもされてません」


「ごめんごめ〜ん。じゃあ最初から説明するね〜。と言っても決定事項の解説だけなんだけど〜」


「え、俺に選択権ないんですか?」


「ん〜、本当はあるんだけどね〜、今回は特例だから〜」


「特例……」


「まあ気にしない気にしない〜。それじゃあ説明を始めるよ〜」


「は、はあ」


「まず〜、あなた……青宮翔吾さんにはこれから異世界へと転生してもらいま〜す!ぱちぱちぱち〜。それでその異世界は〜、簡単に言うと「剣と魔法のファンタジー」で〜す。スキルとか〜、魔法とかがある世界で〜、魔物とかもいま〜す。あ、あとあと〜、エルフとかドワーフとかもいるよ〜。大丈夫そ〜?」


「んー、まあ剣と魔法のファンタジーに憧れてた時期もあったから別に文句はない、かな」


というか、主な趣味が音楽なだけで普通にラノベとか読んだりするし。現在進行形で憧れてます。


「よかった〜。これで文句があっても何もできなかったんだも〜ん。それで〜、次に君の生まれる場所について説明するね〜。君が生まれるのはカナノス王国っていう王国で、貴族とかがあるんだよ〜。まあ中世くらいの文明レベルで、よくラノベとかに出てくるのと同じだと思っていたらいいよ〜。それで〜、君が生まれるのはメトリオ辺境伯の家だね〜」


「メトリオ辺境伯……」


「そうそう、メトリオ辺境伯。ラッキーだね〜、爵位付きだなんて〜。しかも辺境伯って、とっても過ごしやすいんだよ〜」


「まあラッキーだってことにしておきます」


「よかった〜。忠告しておくと、カナノス王国は隣のテュラン帝国とかとあんまり仲が良くないんだよ〜。気をつけてね〜」


「分かった。忠告ありがとう」


「は〜い。それじゃあ次に、君に与えられるギフトについてだね〜。まず〜、あっちの世界じゃ人類はギフトっていうのが与えられてて〜、君にも例外なく与えられるわけだよ〜。それで〜、君みたいな特別に記憶を持っての転生を許された転生者って自分で自由にギフトが選べるんだけど〜、今回君はいろんな事情が重なってもう決められちゃってるんだよね〜」


「え、そこが一番選びたいかもしれないんだが」


「ごめんね〜、でもその代わりに他の人じゃ絶対に選べないようなギフトになってるから〜」


「んー、一旦中身を聞いてから判断します」


「ありがと〜。それじゃあ説明すると、君に与えられたギフトは【ハッカー】だよ〜」


「ハッカー?ハッカーってあのパソコンとかで色々する?」


「そうそう、そのハッカーだよ〜。それでね〜、君にはそれに関連するスキル群が与えられるんだ〜。具体的には〜、【ハック】っていうメインスキルとそれから発展するスキル群、【展開(オープン)】っていう補助スキルから発展するスキル群だよ〜」


「【展開(オープン)】っていうのは何を開くんだ?」


「ウィンドウだよ〜。キーボードとかもまとめて開ける便利仕様だよ〜」


「そうなのか。ありがたい仕様だな。ただ一つ問題がある」


「え〜?何〜?」


「俺はパソコンに詳しくない」


「大丈夫だよ〜。一応サポート用のAIは用意してあるから〜。またあっちの世界でオープンを使ってみて〜」


「そ、そうなのか。ちなみにだが、その展開されたウィンドウは他の人に見えたりするのか?」


「見えないようになってるよ〜。まあハッキングが進んだらその辺りもじゃんじゃん変えていけるけどね〜」


そんな自由なのか。すごいなハッキング……


「そうそう、ハッキングはすごいんだよ〜。まあ君は頑張って世界をハッキングしてね〜」


「というかなんで俺は世界をハッキングするんだ?」


「ん〜、まあそれはいずれ分かるよ〜。今はまだ教えられないんだ〜。ごめんね〜。あ、そろそろ時間だ〜。最後に一つ、君はレアギフト〈魔導士〉として生まれるからそのギフトを鍛えるのも忘れずにね〜」


「分かった」


「それじゃあバイバ〜イ」


その瞬間、俺の視界は暗転した。



◇◇◇



「ふう、これで青宮翔吾……特別邪神対策素体の転送完了っと。でもあの人も鋭いねぇ。それでも、自分の話し方とか素振りがだんだん生前と変わってることには気づかなかったみたいだけど。まあ頑張ってね、ハッカーさん」


先ほどとは打って変わった声音で、女神スィスが呟く。まだまだ、その秘密が翔吾に知られる日は遠い。


いずれ、翔吾が世界を完全にハッキングできたとしたら。その時に、女神スィス、いや、それ以外も含めた神々の秘密が暴かれてゆくのだろう。同時に、なぜ翔吾がこの世界でハッキングを行うのか、という疑問の答えも。


「ん?というか私特典あげるの忘れてない!?ちょっと待って、まずいわよこれ!」


少々抜けているのは素であったようだが。

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