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乙女ゲーのチュートリアルのサポートキャラに転生したら攻略キャラが集まってきた。いや、俺は男なんですが!?  作者: 松平 ちこ


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8/10

第8話 凡人を極めようと思っただけなんですよ。そこに他意はない

 スタート地点に立って、アディは改めて的を見る。的は全部で二十個、大中小の三種類。


 女生徒より下の実力は、男としてプライドがどうだろうかと、チラリとアディは考える。

 Aクラスの男女比率に男が多いのも、実技があって、体格や体力、魔力などの身体的な差に他ならないからだ。


 攻略によっては、編入にもかかわらずSクラスに選ばれるヒロインは、まさに規格外を背負って歩いてる。

 容姿だけでなく能力が目立つからこそ、攻略キャラに選ばれるだけはあった。


 そのヒロインの初期サポートであるアディは得意魔法と呼べる突出するものはないが、全属性の適正は少しあった。


 ――そこそこを狙って、賭けのデザートを譲れば、目立たず面目も立つか。


 最初は好きにやって、最後にスタミナ切れを装って、的を外せばよさそうだ。


 ――まずは様子見。


 だいたいの基準は見ていて把握したが、実際は違うということは、よくあることだ。

 アディは、右手のひらを前に突き出した。


「《エアショット》」


 狙うのは中距離、中サイズの的。アディが放った風魔法は見事に真ん中へと命中し、判定は赤。


 ――実際にやると、射的みたいだな。


 領地で岩や木、鳥や小動物を狙ったことはある。けれど、放った魔法の威力判定なんて初めてだ。


 二発目、同じく中距離。的は少し小ぶりなもの。赤。

 三発目、少し後ろの大きめの的。赤。

 四発目、手前に戻して右側の的へ。外したように見せかけて、的の端へ当てる。判定はオレンジ。


 ――判定は、けっこう正確だな。


 五発目、後方の的、中の大きさへと少し過剰威力で放つ。判定はオレンジ。

 六発目、真ん中の距離、過小威力で的に当てる。判定はオレンジ。


 ――やべぇ。楽しい。


 狙った場所に、狙った通りの結果が出る。

 アディは目をキラキラとさせて表情が緩む、左手でその口許を隠した。

 好奇心が沸き立つのを、アディ自身も感じる。


 アディは広げた右手を、無意識にピストルの形へと変えて七発目を構えた。


 ――あの的は、本当に壊れたりしないのか?


 好奇心が抑えられず、アディは人差し指の先に風を集め圧縮し、威力を高めていく。

 さらに空気抵抗を無くすため、周りに別の風を重ね掛けし、まとわせる。


 ――細く、鋭く、弾丸のように。


「……《エアショット》」


 キン、と空気を裂く音がする。

 軌道はまっすぐ、一番奥の一番小さい的へと伸びた。


 ――あ、やりすぎた。


 空気抵抗の外側の風は、的に当たる前に途切れた。的も光ることはなく、パッと見は不発。

 けれど、微かな音を耳で拾い、手応えをアディは確信する。


 ――減点の方が大きいのか、壊すのは判定にならないのか。どっちかな。


 まぁ目的は果たしたしと、アディはそれを表情に出さず、ピストルにしていた右手を開いて構えなおす。

 八、九、十回目と中距離の的を狙って、風魔法を当てた。


「デザートよろしくね。アディ」


「ああ、楽しみにしておけよ」


 ケレルの勝利宣言に、アディはホッと胸を撫で下ろした。

 周囲の反応も、可もなく不可もなくだ。もう、次の生徒が開始している。


 ――良かった、バレてないよな。




 ◇◆◇◆◇◆◇




 魔法実技の授業が終わり、各々昼食に向けて解散していく。その流れに逆らった小柄な影が一つ。


「ルナ、どこ行くんだ?」


 フィデスが、横を通りすぎたルナに声をかけた。

 ルナは無言で、的の方へと早足に歩いていく。


 立ち止まったのは、一番奥の一番小さい的の前。


「……」


 ルナが、七発目で《アイスアロー》を当てた的。

 アディが七発目で狙い、不発した的。

 他に、この的を狙った者はいない。


 その的の中央。爪ほどの大きさの穴が、確かに空いていた。

 

 ――魔法耐性をあげた的だぞ。それに穴を空けるなんて……。


 当てたと気づいていたにも関わらず、へらっとしていた男を思い出す。

 苛立ちを隠すように、ルナはきゅっと口を引き結んだ。小さく握った拳が白く震えている。

 踵を返すと、早足にフィデスの元へと合流した。

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