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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
一章 学園入学編。 攻略対象キャラたちに、俺、囲われ始めたんだけど!?

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第7話 攻略キャラは頼まなくてもサービス精神旺盛か

「ええ、ルナ君。いつでも良いわよ。後期組の二人!

 これがこの学年のトップよ。しっかり見てなさい」


 ――おお、先生。ゲームっぽい台詞をありがとうございます。


 先生の合図と共に、ルナが右手を前方に掲げた。


 この世界の魔法は、杖などの武器を必須としない。

 代わりに初めのうちは、手を起点に魔法行使する方法を子どもは習う。


 ミニゲームでもキャラが的に向かって手をつきだすと、ランダムに出現する輪っかとボタンの重なりを、タイミングよく合わせてタップの仕様だった。


「《ファイア》」


 ルナの右手に野球ボールサイズの火球が五つ現れ、的に向かって飛んでいく。

 

 ――へぇ、形も揃ってブレも少ない。しかも五つ同時操作か。さすがだな。


 子どもなら、一人一つの魔法行使が普通だろう。

 今回の授業が十回というのも、出力のバラつきを評価にするからだと、アディは予想していた。


 ドン。


 ぶつかった音が一度大きく響いた。ルナが狙った的はもちろん、スタートから遠い的。的の大きさは全て、同じものを狙ったらしい。

 同時に着弾したらしい。土煙が落ち着くと五つの的が赤く光っていた。


 ――攻略対象キャラの魔法技能トップ。けど、最も小さい的は、狙ってないのか。なんで?


 アディの密かな長所は、チュートリアルキャラ特有の観察力。


 各ミニゲームにおいて、サポートキャラは最高評価になるように何度でも挑戦可、初回だけプレイヤーをフォローする。

 "残念! タップが早かったよ"、"もう少しゆっくり押して"、"その調子!"などがそれに当たるだろう。


 ――小さい頃に兄さんたちの魔法へアドバイスしたら、めきめき上達してたんだよなぁ。


 アディが色々と言うと兄たちは嬉々として実践し、応えくれたものだ。

 そんな年の離れた長男は、魔法師団の小隊長を若くして勤めているエリートだった。


 ――ほんともう、同じモブでも俺だけ扱いが雑過ぎる。


「《ウインドカッター》」


 ルナが六発目となる詠唱をしていた。風の刃が遠くの的に当たった。


「《アイスアロー》」


 七発目。弓矢くらいの長さの氷が、最も難易度が高い、遠く小さい的に命中している。


 ――あ、初回はパフォーマンス。その次は各属性魔法の手本か。俺たちへの見本ってわけね。


「《ウォーターショット》」


 八発目、野球ボールサイズの水球が、的に向かって飛んでいった。

 ルナの意図が分かり、アディはありがたく見学を楽しんだ。

 先程から、的は赤に光ってばかりだ。

 赤が最高得点と見てよさそうだと、アディは無言で頷いた。


「《ライトニングスピア》」


 九発目、アイスアローと同じサイズの雷が小さめの的に向かって放たれる。判定の赤に、オレンジが混ざったような気がした。

 魔力のブレも、アディには見えた気がする。


 ――もしかして、ルナはこれ以上サイズを小さくするのは苦手、か?


「《アースランス》」


 十発目、先程よりやや大きい土の槍が、的に向かっていくのを見届けて、アディは確信する。

 狙う的が全て小さいのも一つだが、的の大きさに対して、どの魔法も威力が大きいと感じたのだ。


 最後の的は、赤よりのオレンジに光っていた。

 おそらくだが、的より大きい過剰過ぎる力は減点対象。


 さまざまな距離にある的の大きさに、魔法の威力を合わせて放たなければならないのだろう。


 ――いや、この年で全属性をこれだけ扱えたら十分か。


 アディとは桁違いな魔力量が、ルナにはあるだろう。その分、制御も難しいはずだ。

 残量を気にせず放てるなら、そこはデメリットとは言わない。


 ちなみにゲームでは、パーティーメンバーにアディウートルを入れると、消費魔力量を減らして攻略を進めやすい、なんてバフもあった。


「ルナ君ありがとう。文句無しの高得点よ。じゃあ皆、順番にやっていきましょう」


 スタート地点から離れるルナに、教師は声をかけた。

 ルナは無言で最後の的を見て、視線を外し去っていった。


 ――最後の結果、気に入らなさそうだなぁ。


 小さい的にこだわらなければ、赤判定だっただろう。どちらの点数が上なのか、アディには分からないので、そこはなんとも言えないのだが。


 その後続いたカリスは風魔法。遠近にこだわらず、それぞれの的に最適な威力の魔法を当てていた。

 いや、己の力量に合った的のみを選んでいた、というのが正解かもしれない。判定は全て赤。

 そつなくこなす王子様気質が、にじみ出ている。


 フィデスは火魔法。遠くの的は一度も狙わず、的の判定がオレンジから黄色になっていた。

 サイズや発動スピードにも、不安定さが見られた。

 元々剣士としての素養が高いキャラだったはず。魔法が苦手というのがよく分かった。


 ウェルムは水魔法。中から長距離の的を当てていて判定も赤。

 ルナには劣るものの、魔法には均一性が見られ、ブレもなく所作がとても綺麗だった。

 座学に強い頭脳キャラながら、総合的に学年トップなのも頷けるレベルだ。


 ケレルは意外にも、風魔法と土魔法の混合だった。土魔法でつぶてを作り、風魔法で威力の底上げをしていた。

判定は赤からオレンジがほとんどで、黄色は一つだけだった。

 なるほど、これは確かにセレーヌスの評価通りだろう。混合魔法はこれから習う範囲だ。


 もう一人、女子生徒も魔法を行った。

 使うのは火魔法。距離は伸びて中で、判定はオレンジが中心だった。


「先生、次は俺がやりたいです」


 皆の魔法を見て平均値を考え、アディは挙手した。

 残る生徒は、アディを含め三人だった。


 ――最後は目立つからなぁ。嫌すぎるって。

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