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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
一章 学園入学編。 攻略対象キャラたちに、俺、囲われ始めたんだけど!?

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第6話 寝不足の時にはやる気も出ない。ご褒美があると頑張れるよね

 学園生活二日目。

 あれから晩餐での衝撃事実が抜けきらず、アディはやや寝不足気味だった。

 自然とあくびも出るのも仕方ないだろう。


 入学式が終わったからと言い訳して、アディはさっそく制服の襟元を緩めていた。眠いからではない、断じて。


「おはよう、アディ」


「……はよ、ケレル」


 丸眼鏡をかけたまま器用に目を擦り、アディは返事をした。

 廊下でケレルに話しかけられ、そのまま一緒に教室に向かう。


 ――あー。切実に、クールの目薬がほしい。


 あのシャキッと感があれば、目が覚めるのに。眠気覚ましに都合の良いものなど、ここにはなかった。


「寝不足?」


「いや、大丈夫……一徹くらい。

 というか、うん。ちゃんと寝たぞ、三時間くらい」


「は? 今日実技があるけど……その、大丈夫か?」


 アディの受け答えに不安を感じたのか、ぎょっとしたケレルがそう問い返してくる。


――社畜なら、余裕の所業だろ。何驚いてんの?


「今日の実技は、なんだっけ」


「昨日説明されただろ。一学期の実技のペア決め。

 能力と相性見て決めるって、午前が魔法実技。午後が体術と剣術」


 ――ああ、カリスのせいで全く覚えてない昨日のホームルームか。


「そうだった、そうだった。じゃあ、着替えないとな」


「……着替えは午後だよ。午前は的に、魔法当てるだけだからな」


「そうか。ケレルは頭が良いな」


 可哀想な目でみるのをやめてほしい。呆れつつも説明してくれるケレルには、ありがたいのだが、居たたまれなくなってくる。


「はぁ、君は神童だろ?」


「だからいつの話だよ。俺は今、凡人だっての」


 ケレルとの軽いやり取りに、アディはようやく頭が冴えてきた。


 ――持つべきものは、安心で優秀な友だよな。距離感バグの格上キャラじゃないって。


「ケレルは、昼ご飯どうするの?」


「食堂が気になってる。アディは?」


「あ、俺も食堂行きたい。一緒に行こうぜ」


 後期入学組でAクラス在籍なのは、アディとケレルの二人だけだった。

 家の格も同じ、入学時期も同じと来れば、不思議と親近感も出来る。


「どうせならデザート賭けようぜ。結果で」


「別に良いけど。俺、筆記より自信あるぞ。アディは勝つ自信あるのか?」


 筆記で上位に上がったアディと、セレーヌス曰く実技で上位に上がったケレル。

 というのは、晩餐から逃げるように自室に戻り、寝れないために読み漁った学園の資料を見て気づいた。


 ――実技は心配いらないよな?


 アディは本来、初期強化で消費される名前のないサポートキャラ。

 筆記で目立ってしまったのは、これから要改善していけば良いだけのはずで。


「いや、全く。ただ楽しみたいだけ。面白そうだろ?」


 ケレルの忖度のない素直さは、アディにはとても好感が持てる。

 アディは昼食の楽しみを作り、魔法実技に挑むことにした。




 ◇◆◇◆◇◆◇




「ルールは簡単。これらの的の中から当てられる物を各々選んで、得意魔法を十回放つこと」


 Aクラスの十人が集まって、女性教師が説明をする。

 スタート地点にはラインが引かれており、そこから的の遠近、大小さまざまな物が配置されていた。


 的には魔法耐性が付与されており、当たった場合、その威力で的の色が変わるらしい。

 己の自己認識、魔法技術を測るのにもってこいの方法だろう。


 ゲームでは学園の授業は全て、何かしらのミニゲームになっていたはずだ。

 魔法技能に関しては、タイミングよくボタンをタップするだけのものだったはず。

 なるほど、実際はこうなのか。そして……。


 ――乙女ゲームなのに、女性教師なのか。


 ちなみにアディは、そんなことを考えていた。

 ミニゲームには、教師キャラはいちいち出てこなかったから知らなかった。


「高得点は、一番遠くて小さいヤツかな」


「だろうな。逆に低いのは最も近くて大きい的。でもペア決めは、的の色でも点数が変わるんだろうなあ」


「デザートの勝敗はどうする?」


「的の色は分からないから、距離とサイズでとりあえず良いんじゃないか?」


 アディはケレルと、こそこそと賭けの打ち合わせをする。二人とも初めてなので、予測が全くの不明だ。


 ――あまり下手を装うのも、浮くよな。


 今後のペア決めということは、ペアの相手に対し実技中、不都合が出るようなことはいけないだろう。

 アディは、首を捻って考えた。万が一にも目立ちたくない。念には念を入れたい。


「ああ、後期入学組が二人いるわね。では、前期組、何人か先に手本を見せなさい」


 ――お、それは助かる。


「もう、いい?」


 先生に声をかけたのは、父が魔法師団長の攻略対象キャラ、ルナ・ヴェネラティオ公爵令息。

 攻略対象の小柄な黒髪に藍の瞳の少年だった。

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