第7話 攻略キャラは頼まなくてもサービス精神旺盛か
「ええ、ルナ君。いつでも良いわよ。後期組ー!
これがこの学年のトップよ。しっかり見てなさい」
――おお、先生。ゲームっぽい台詞をありがとうございます。
先生の合図と共に、ルナが右手を前方に掲げた。
この世界の魔法は、杖などの武器を必須としない。
代わりに初めのうちは、手を起点に魔法行使する方法を子どもは習う。
ミニゲームでもキャラが的に向かって手をつきだすと、ランダムに出現する輪っかとボタンの重なりを、タイミングよく合わせてタップの仕様だった。
「《ファイア》」
ルナの右手に野球ボールサイズの火球が五つ現れ、的に向かって飛んでいく。
――へぇ、形も揃ってブレも少ない、しかも五つ同時操作か。
子どもなら、一人一つの魔法行使が普通だろう。
今回の授業が十回というのも、出力のバラつきを評価にするからだと、アディは予想していた。
ドン。
ぶつかった音が一度大きく響いた。ルナが狙った的はもちろん、スタートから遠い的。大きさは全て、同じものを狙ったらしい。
同時に着弾したようだ。五つの的が赤く光っている。
――さすが魔法技能トップ。けど、最も小さい的は、狙ってないのか。
アディの密かな長所は、チュートリアルキャラ特有の観察力。
各ミニゲームにおいて、サポートキャラは最高評価になるように何度でも挑戦可、初回だけプレイヤーをフォローする。
"残念! タップが早かったよ"、"もう少しゆっくり押して"、"その調子!"などがそれに当たる。
――小さい頃に兄さんたちの魔法へアドバイスしたら、めきめき上達してたんだよなぁ。
「《ウインドカッター》」
ルナが六発目の詠唱をする。風の刃が遠くの的に当たった。
「《アイスアロー》」
七発目。弓矢くらいの長さの氷が、最も難易度が高い、遠く小さい的に命中する。
――あ、初回はパフォーマンス。その次は各属性魔法の手本か。俺たちへの見本ってわけね。
「《ウォーターショット》」
八発目、野球ボールサイズの水球が、的に向かって飛んでいった。
ルナの意図が分かり、アディはありがたく見学を楽しんだ。
先程から、的は赤に光ってばかりだ。
赤が最高得点と見てよさそうだと、アディは無言で頷いた。
「《ライトニングスピア》」
九発目、アイスアローと同じサイズの雷が小さめの的に向かって放たれる。判定の赤に、オレンジが混ざったような気がした。
――もしかして、ルナはこれ以上サイズを小さくするのは苦手、か?
「《アースランス》」
十発目、先程よりやや大きい土の槍が、的に向かっていくのを見届けて、アディは確信する。
狙う的が全て小さいのも一つだが、的の大きさに対して、どの魔法も威力が大きいと感じたのだ。
最後の的は、赤よりのオレンジに光っていた。
おそらくだが、的より大きい過剰過ぎる力は減点対象。
さまざまな距離にある的の大きさに、魔法の威力を合わせて放たなければならないのだろう。
――いや、全属性をこれだけ扱えたら十分か。
アディとは桁違いな魔力量が、ルナにはあるだろう。その分、制御も難しいはずだ。
残量を気にせず放てるなら、そこはデメリットとは言わない。
ちなみにゲームでは、パーティーメンバーにアディを入れると、消費魔力量を減らして攻略を進めやすい、なんてバフもあった。
「ルナ君ありがとう。文句無しの高得点よ。じゃあ皆、順番にやっていきましょう」
スタート地点から離れるルナに、教師は声をかけた。
ルナは無言で最後の的を見て、視線を外し去っていった。
その後続いたカリスは風魔法。遠近にこだわらず、それぞれの的に最適な威力の魔法を当てていた。
いや、己の力量に合った的のみを選んでいた、というのが正解かもしれない。判定は全て赤。
そつなくこなす王子様気質が、にじみ出ている。
フィデスは火魔法。遠くの的は一度も狙わず、的の判定がオレンジから黄色になっていた。
サイズや発動スピードにも、不安定さが見られた。
元々剣士としての素養が高いキャラだったはず。魔法が苦手というのがよく分かった。
ウェルムは水魔法。中から長距離の的を当てていて判定も赤。
ルナには劣るものの、魔法には均一性が見られ、所作がとても綺麗だった。
座学に強い頭脳キャラながら、総合的に学年トップなのも頷けるレベルだ。
ケレルは意外にも、風魔法と土魔法の混合だった。土魔法でつぶてを作り、風魔法で威力の底上げをしていた。
判定は赤からオレンジがほとんどで、黄色は一つだけだった。
なるほど、これは確かにセレーヌスの評価通りだろう。混合魔法はこれから習う範囲だ。
もう一人、女子生徒も魔法を行った。
使うのは火魔法。距離は伸びて中で、判定はオレンジが中心だった。
「先生、次は俺がやりたいです」
皆の魔法を見て平均値を考え、アディは挙手した。
残る生徒は、アディを含め三人。
――最後は目立つからなぁ。




