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【一章完結】乙女ゲーのチュートリアルのサポートキャラに転生したら攻略キャラが集まってきた。いや、俺は男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

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第9話 こじつけが過ぎる? でも、許せないんだから仕方ないよな

「えっと、模造剣。模造剣」


 実技で使う道具が揃えられた備品庫。アディとルナは、二人でそこへと入った。


「アディの身は守るから、安心してね!」


 整理整頓が行き届いているが、いかせん物が多くて広い。アディはお目当ての品を、倉庫の奥に見つけた。


 その後ろをついてくるルナは、拳を握ってヤル気満々だ。


 ――いや、安全だろ。


 模造剣は爆発したが、そんな危険はゴロゴロ転がっていないだろう。


「いや、転がるのか? フラグなのか?」


 自分の発言に疑問をもって、そしてアディは叩き折った。

 ヒロインは居ない、ゲームは始まっていない。ならイベントも何もないだろう。


 ――乙女ゲーム向きじゃない、ショボさだしなあ。


 前世なら学校での危険といえば、無視、物隠し、閉じ込め、突き落とし、陰口に悪口、暴力に虐めや嫌がらせ……。

 アクシデントを除けば、人的被害の方が圧倒的発生率だろう。


 ――濡れた雑巾投げられたこともあったな。

 私の好きな男の子に色目がどうとか、俺そんなの興味ないっての。


 けれど、ここは現代社会とは離れた貴族社会。虐めや嫌がらせの次元が、家の家格と親密だ。やることのえげつなさもある。


 ――入学時に、カリス様に忠告されたっけなぁ。


 模造剣は、ラックに一本ずつ立て掛け並べて収納されている。チェックだけならすぐに終わりそうだ。


「ルナ。これ選別した後、どうしようか?」


「鍵の返却と一緒に、報告だけでいいと思う」


 ――まぁ確かに、うっかり触って爆発は洒落にならないしな。


 そういって、アディは引っ掛かりを覚えた。

 攻略キャラでもあるケレルは、模造剣を普通に持っていた。

 ノリは年相応に軽いが、ああ見えて真面目なのだ。おそらく普通に、ウェルムと実技もしていただろう。


 同じ違和感を持つ模造剣。片方は爆発し、片方は爆発しなかった。


 ――爆発した条件は、なんだ?


『どうやら君以外には、選別が出来なさそうだ』


 検証して原因さえ分かれば、おそらく誰でも普通に選別は可能だろう。早さを求めた結果のカリスの発言だった。


 ――そんなヤバい事案だっていうなら。模造剣はここにいつからだ? 置かれてからのいままでは?


 実技考査が終わってから少し経つ。何も今日が学園全体で行われた、初めての実技ではない。

 けれど爆発したのは今日、Aクラスで実際に使われたうちの一本だけ。


 ――そんな偶然の確率があるか!


「アディ?」


 部屋をぐるりと見渡したアディに、ルナが不思議に思って声をかけた。


「……ルナ、模造剣を使うのはどこのクラスまでだっけ?」


 実技では木剣と模造剣を使う。一年Aクラスが使うのは模造剣だけだ。理由は簡単。扱える技量が十分だから。


「一年なら、今の時期はAクラスだけだよ。夏休みからBクラスも解禁。あとは順番。二年からは皆、模造剣が基本」


「やっぱ、ルナはしっかりしてるな。ありがとう」


 唐突な質問にも迷わず答えるルナに、アディは頭を撫でて感謝を伝えた。

 その内心では、すでにアディはブチッと苛立ちの炎を燃やしていた。


 ――イタズラの度が過ぎるのは、気に入らねぇ。


 推測が正しければ、怪我人が一人も出なかったことに、犯人は次の行動を起こすかもしれない。


「ア、アディ!?」


 ガリっと指を噛んで、アディは血を滲ませた。ルナは止める間もなく、驚きの声を上げる。


 ――だって印つけるもんねぇし、急いでんだよ。


 ルナの驚きもそのままに、アディは、模造剣へと思考を戻した。


 ――アウト、アウト、セーフ、セーフ、アウト、セーフ、アウト、セーフ、セーフ、セーフ……。


 模造剣を一本ずつ見ながら、立て掛けたラックの上に血で印をつけていく。幾つもの赤い点はアウトだ。


「……アウト」


 選別最後の一本の剣を、アディはラックから抜き取ること無く、そのまま柄を握った。

 爆発はない。けれど、憶測で物は言えない。


「《イージス》」


 ルナに聞き取られないよう、アディは小さく口の中で呟いて、模造剣に沿うように防壁を展開する。


 ――まずは試す。抑えて、これで爆発するはず。


 アディは自分の魔力放出を精密に操り段階的に上げ、剣へと伝える。

 首すじにチリっと危機感を感じ、剣は爆発した。アディの《イージス》が、その威力と勢いを完全に封じ込める。


「アディ!?」


 ルナは後ろにいたからよく見えて無かったらしい。爆発音だけを聞いて、先程よりさらに焦った声を上げた。

 ルナに捕まらないよう、アディは身体強化で出口に一瞬で辿り着く。


「ルナ、選別は終わったから、鍵返して報告しといてくれ。多分、普通に持っただけじゃ爆発しないから。

 俺、ちょっと用事を思い出したから、先に行くな。悪いけど、ルナ。後は頼んだ」


「え? え!? アディ! ……もう、なんですぐに行っちゃうかなぁ。カリスに言いつけてやる」


 置いていかれたルナは、備品庫の鍵を握りしめ、目を細めると小さく笑うのだった。

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