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【四章開始】乙女ゲームのサポキャラ転生、チュートリアルで消える強化素材のはずが――いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

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第7話 頼むから学園の先生、もうちょっとしっかりして?

「……じゃあ、よろしく」


 アディは切り替えてため息をつき、右手を前に出した。


「ああ」


 フィデスも右手を出し交差したのち、三回叩いた。組手開始の合図である。


 ――脇腹、右。


 先に仕掛けたフィデスが左足を蹴りあげて、アディの脇腹を狙った。

 アディはそれを右腕で防ぎ、フィデスの胸部へと左手を突き出す。


 フィデスは上げた左足で、そのままアディの左手をいなし着地。右手で突きを繰り出す。

 アディは後ろへ反って避けると、地面に手をついて回転をかけ、足技を二回仕掛ける。


 ――密着は無理! 速っ! こわっ!


 フィデスに力量に合わせ、身体強化を段階でかけるアディ。互いにフェイントをかけた上で、完全に避け防いでいた。


 距離をとりすぐに動けるように、アディは軽くジャンプし、ジリとフィデスと間合いの攻め合いをする。

 

 ――左、上段突き。胴。右頭部。正面っ!


 避けては詰められ、避けては詰められをアディは繰り返す。


 ――そこそことかじゃない。フィデスの嘘つき!


 悪態もつきたくなる、というものだった。

 目で魔力を読んで反応して、アディはついていくのがやっとである。


「――っ!?」


 チリと首後ろがひりついて、アディはよそ見をした。嫌な予感とでも言うのか。

 アディから離れた位置で、模擬戦をしていたユニタスの剣に、歪な何かを感じて背筋がぞわりと警鐘を鳴らした。


 ――魔法じゃ怪我するよな!?


 模造剣を持つユニタスの手首を、アディは正確に狙う。そこに躊躇は一切無かった。 

 左でフィデスの攻撃を受け止め、アディは咄嗟に右手で魔力の塊を放つ。


「《ショット》――ユニタス、モンテ、離れろ!」


 ユニタスの手に魔力の塊が当たり、その衝撃で彼は模造剣を取り落とした。

 アディは彼へと、続けざまに指示を叫ぶ。


 けれどユニタスは手首の衝撃に戸惑い、アディの仕業と気づいていない――彼の前にいるペアの女生徒も同じだ。


 ――ダメだ!


 模造剣に異様な魔力反応を、アディはハッキリと感知する。

 けれどユニタスを含め、フィデスやルナにもアディの意図が伝わらず、その反応が遅れた。

 ただ一人を除いて――。


「《イージス》」


 アディの組手を見ていたカリスが、ユニタスとペアのモンテを包む防壁を、即座に展開する。

 そこに、地面に落ちた模造剣が僅かに光ると爆発した。

 爆発音と衝撃波で、Aクラス全員の動きが止まった。


「――っ!?」


 砂埃が舞い上がり、焦げた臭いが鼻を突いた。

 落ち着いているのは、アディを含めた攻略対象キャラたちくらいだろう。耳鳴りの中に、ざわめきが混じっている。


「アディ、すごい。かっこいいね」


 シンと静まり返った運動場、そこへルナがアディに、タオルを持って駆け寄ってきた。

 その動じてなさと明るい声が場違い過ぎて、アディはちょっと怖い。


 隣にいたはずのフィデスは、カリスの護衛についたようでそばで周囲を警戒していた。

 こちらも素早すぎて、アディはちょっと引く。


「……カリス様、ありがとうございます」


 とりあえず、アディはカリスへと礼を述べた。助かったのは本当だからだ。

 カリスはそれに、片手を上げて応えた。


 ルナから受け取ったタオルで汗を拭き取りながら、アディはホッと息をつく。


 模造剣が落ちた周囲は、地面がややえぐれている。小規模な爆弾がそこに落ちたような威力だった。

 辺りに飛び散った細かく砕けたその残骸からは、嫌な魔力反応が消えていく。


「殿下、ありがとうございます。おい、ユニタス、モンテ嬢。一応聞くが、模造剣が爆発するような、何かをしていないだろうな?」


「してませんよ!」


「してないです」


 教師が走って駆けつけ、ペアの二人に事実確認をしていた。

 二人はそれに、違うと即答している。

 アディもそう思う。あれは魔力の流れがおかしかったからだ。


「アディ。見えたことを聞いてもいいかい?」


 二人と教師を視界に入れたまま、カリスは身を隠すこともなく、堂々とアディへと近寄ってきた。


 ――良いのか、それで。仮にも王族だろう。


 フットワークの軽さは、ここでは美点にはならないのではないだろうか、アディはそんなことを考えていた。

 前世なら有事の際、一番に守られ、安全確保して逃げるのが要人だからだ。


「普段の模造剣とちょっと違って、嫌な感じがしたとしか……」


 言いたいことは言えるわけもなく、聞かれたことにだけアディは答えた。

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