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【一章完結】乙女ゲーのチュートリアルのサポートキャラに転生したら攻略キャラが集まってきた。いや、俺は男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

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第6話 頑張って眼鏡掛けたのに一限目の実技から即外すとかなんなの!

『へへ、祭なんてただの稼ぎ場だな』


 ――ああ、失敗したな。せっかく攻略対象キャラのセレーヌス・クストスとのお出掛けだったのに。


 慣れない人混みに、気づけば拐われていた。

 粗雑な造りの屋内、藁の上に無造作に投げられた。手足は縛られていて、受け身が取れない。

 ぼすっと、藁がクッションになったことが幸いか。


『けほっ』


 口に巻いた布が外れ、閉めきった埃っぽい空気に咳き込んだ。

 その瞳に映った、紅葉のような小さな手は、なんて小さく無力なことだろう。


 ――けど、手足が小さくても、口さえあれば。


 こんな小汚なくて薄暗いところに、子どもを拐うお前たちは悪いやつ、悪党――敵だ。


『身なりも良いガキだ、売れるだろ』


『親に身代金でも、揺すってみるか?』


『《げいる》』


 ゲームでは、敵は逃がしたらいけない。なぜなら子悪党は、何回でも出てくるからだ。


『ぎゃぁぁ、あ――』


 藁の上に寝たまま小さく呟く。中級風魔法で、目の前の一人を切り刻んだ。


『なんだ、このガキ!?』


『おい! 口だ。口を抑えろ!』


 ――こんなところで、死ぬわけないでしょ。アディウートル・クストスはヒロインのチュートリアルのサポートキャラなんだから。


 手を伸ばした男が来るよりも速く、ただ前だけを見て口を開いた。


『《げいる》』


 二度と悪さが出来ないように、消しておかなければいけないだろう。


 ――だって、拐われる子どもたちが可哀想じゃないか。


『やめてく――、がぁ、あ!』


 ずりと這う音が響いて、目を向けると、入口の方へと足を引きずる男がいた。


『けほ、けほっ』


 咳き込んで、血を吐いた。そうして、男と目が合った。


――せっかく体調が良くて外に出たのに、台無し。またしばらく、邸から出してもらえない。


『わ、悪かった。悪かった! もうしない、だから許してくれ!』


 目の前の男が足を押さえ、何かわめいている。室内に響く音が、酷く耳障りだ。 


 ――どうして、許さなくてはいけないの。


『《げいる》』


 ぴちょん。ぴちょん。


 辺りは一面、赤い雫が滴っている。錆びた臭いが充満していた。




 ◇◆◇◆◇◆◇




 ――ソフトクリーム、見てぇ。


 夏のもこもことした雲が空を泳いでいる。青と白のコントラストが綺麗な、よく晴れた日だった。


 これから始まるのは、ペアに分かれての実技授業。一限目からの運動場で、アディはあくびをしていた。


「あー。だるい」


「アディ、まだ始まってもいないよ?」


「いやだって覚えてないけど。なんかさぁ、嫌な夢見た気がするんだよなぁ。目覚め悪いやつ」


 本日の授業内容は座学の実践なので、言ってしまえば自由である。

 アディのぼやきを拾ったルナが、後ろから声をかけてきた。


 今日掛けてる眼鏡は、実技で動くからと思ってスクエアフレームの物。


 ――ウェリントン。スクエアよりちょっとだけ、重いんだよなぁ。


 そしてインテリは似合わないと思いつつ、機能性を重視してアディが気負ったスクエアの初デビュー。

 授業開始時に、即外すこととなった。


「……カリス様。なんで目隠し?」


「アディはまだ、過激な魔法行使はダメだろう? だから趣向を変えようかとね」


 ぐっと押し黙り、困惑するアディを他所に、カリスはフィデスに目隠しをしていた。


 実技考査の後、魔力枯渇のダメージが抜けきらず羽目を外しすぎないようにと、アディは注意を受けている。


 地面に広く取った丸いサークルを描いたその真ん中、フィデスとアディは、向かい合わせで立っていた。


「アディ、キツくない?」


「大丈夫。ありがとうな」


 アディの目隠しは、ルナが担当だった。

 魔法有りがルナ、魔法無しがフィデスと実技ペアがそれぞれ違うアディ。


 では、アディと組まない彼らと組むことになる残り一人は誰――と思えば、カリスだった。

 なので、実技は自然と四人合同が通例になった。

 最初の授業でそれを知り、とても驚いたアディである。


 ちなみに残る攻略キャラの二人、ウェルムとケレル。彼らはそのまま、二人でペアとなっていた。

 残り四人の生徒は、男女ペアに綺麗に分かれたようだ。


「ルールは簡単。フィデスは身体強化なし、アディは身体強化ありで、双方ともに視覚を制限しての組手だ」


「……カリス様」


 カリスのルール説明に、アディはなんとも言えない声を出してしまう。


 アディは目隠しされたところで、無機物でなければ見えている。それはカリスたちも、ある程度知っているはずだ。

 目の前の学生たちの動きなど、魔力が見えるアディにとって全く支障が無かった。制限にはならない。


 身体強化の有無は、貧弱なアディと攻略キャラで騎士のフィデスなら、釣り合いが取れるだろうけれど。


 ――俺、虚しい。


 気落ちしてアディが肩を落としていたら、ふと何かがひっかかり辺りを見渡した。


――言い表せないのが、余計にムズムズする。


 違和感のようなものを、幾つかの気配としてアディは感じる。特に強いのは、ユニタスからの魔力反応だ。


「アディ、気にするなー。俺もそこそこ気配が探れるから」


「アディ。鍛練でフィデスは慣れてるから、思いっきりしていい。遠慮、要らない」


 ユニタスの方へと目を向け――気がそれていたアディへと、フィデスから加減は要らないと言われる。

 背後のルナからは、とても怪しい感じのアドバイスがかかった。

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