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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
一章 学園入学編。 攻略対象キャラたちに、俺、囲われ始めたんだけど!?

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ss 29話の後日談。本編では風魔法縛りだったのに、実はこっそり他属性も使ってた俺。もちろん無自覚

 アディの包帯が取れた後の実技授業、その初回。

 一学期の実技考査の要項をウェルムたちから聞いたのち、教師がやって来て授業が始まった。


 基本的な流れとして、実技授業は自由課題が多いらしい。

 二種属性の混合魔法や応用の発動の型、支援魔法など、生徒全体が初めて取り組むことになる魔法以外は、各ペアに分かれて切磋琢磨するのだそうだ。


 ――なるほど、それでペア決めが重要なんだなぁ。


 自習に近いとはいえ、教師が在中しているので、質疑応答は臨機応変に対応してくれるらしい。

 魔法理論や魔法技術で学んだことを、各自試したりする場合が多いそうだ。


「え、カリス様もですか?」


 皆がそれぞれに分かれて運動場にバラけた時、アディの元には、ルナ、フィデス、カリスが残っていた。


「あー。アディが休んでる間は、三人でやってたんだよ」


「アディ、ほら言ったでしょ。魔法が僕と、剣術や体術はフィデスとだって。つまりアディと組まない方は、カリスとするんだよ」


 フィデスとルナが、それぞれに説明してくれた。が、アディとしてはそれもそれで引っ掛かる。


「やっぱりそれって、なんだかややこしくありません?」


「基本的に四人でやると思えば、そう難しいことでもないと思うけどね」


 カリスは、なんとでもないように言った。


 ――そもそも、なんでそんなことになってんだか。


 呆れたアディの胸の内を読んでか、ルナがアディの前に立つと、上目使いで理由を述べ始めた。


「アディ。僕、アディの魔法が気に入ったの。もっと見ていたいから、ペアにしてってウェルムに頼んだんだけど、だめ?」


「俺も。カリスやウェルムって、戦いの手応えはあるけど、綺麗過ぎてさ。

 ルナとは体格差が目立つから、アディと組んでみたかったんだよ」


 アディは、ちょっと権力の使い方についてもやっとした。使いどころが他にあるだろうに、二人して自己主張が強い。


「それならフィデス様は、ケレルと組んでも良かったのでは?」


 アディが、もっともらしいことを言ってみた。体格差が気になるなら、同じ体育会系同士で組んだら良さそうではないか。


「ああ、ケレルとフィデスでは魔法が不得手同士、歯止め役がいないと危険だと判断した。

 剣がメインの騎士団なら、それもいいけれど、ここは学園だからね。

 ちなみに、ケレルはウェルムと組んでいるよ」


 カリスが、アディへと理由を説明してくれた。


 ――それ、要するに脳筋か。


「ねえねえ、それよりアディ。まだ無理しちゃだめでしょ? 魔法しよ、魔法」


「いいけど、何するんだ。俺ほんとに初めてで分かんないんだけど?」


 納得しかかったアディに、ルナが誘った。

 前世の体育を連想していただけに、いきなり自由といわれても、アディはピンとこない。


「アディは今まで、どうやって魔法の練習をしていたのか、聞いてもいいかい?」


 カリスに聞かれ、アディはうーんと唸った。前期組からするとアディの存在が新鮮なのだろう。

 けれど別に、アディに師がいるわけではなかった。兄たちの様子を見て育ち、領地での独学である。


「私は好きなことをしていただけですよ。続かないと意味ないですし」


 長期休暇で帰省するセレーヌスが、時々アディに手ほどきをしてくれたくらいだ。

 ついでに周りにヒントがないかと辺りを見ると、皆それぞれにやりたいことをしているようだった。

 今、なにもしてないのはこの四人。


 ――この四人で、練習になりそうなもの。


 ペア決めの的当てを思い出し、課題を見つける。カリスはともかく、フィデスとルナはコントロールが苦手なのだ。


「フィデス様、総当たりの実技で、決めた範囲で戦ってましたよね?」


「ああ、仕掛けるより、仕掛けられる方が楽しいからな!」


 ――フィデス様が仕掛けたら、一発で勝敗が決まるの間違いだろ、それ。


「じゃあ、こういうの作れたら、面白くありません? 《ファイアサークル》」


 アディはでかかった突っ込みを喉の奥、胸の内へとしまいこんだ。

 代わりに、自分の周りに火の柵を作る。最初は膝丈にあった火力を、徐々に抑えて小さくし地面からゆらゆらと燃える、とろ火へと変えた。


「おお! なにそれ!」


「アディは、火も使えるんだ!」


 フィデスとルナが二人揃って、キラキラとした目をアディに向けてきた。


「総当たりの時みたいに、魔法無しの条件だと使えませんけど。

 それ以外では、ちょっとした遊びになりますよ。自分にも相手にも分かる、目印にもなるので」


 イメージは前世アニメなどで、○○ゾーンとか強者が弱者に対して発動していた、煽りの技だ。


 ――ゾーンから出させたら、コイツやりよる! って展開になってたよなぁ。


「サークルの大小、火柱の高さ、難易度はそこそこあるね」


「慣れてしまえば、簡単ですよ。魔法は想像力が大事じゃないですか」


 アディはカリスの呟きに、なんてことないように答えた。


「うわぁぁあ!」


「ちょっと。なにしてるんだよ!」


 目の前の向こう、フィデスが挑戦しては火力が高過ぎて、ルナが水魔法で消化していた。


「フィデス様ー。最初はサークルを離して練習をした方が、焦げませんよー」


 アディはそうやって声をかけ、手本とばかりに大小の《ファイアサークル》を五個出した。


「輪の中に入る必要なくて、外に出すと、こうやって、遊べますし」


 前世、ケンケン、パーとよく遊んだものだ。アディがピョンピョンと跳び跳ねると、ルナがゴールで待ち構えていた。


「アディ、面白い! 魔法で遊ぶって発想が僕にはなかった」


「ええー。せっかくの魔法、遊ばなきゃもったいないだろ?

 遊びだって追求すれば立派な訓練なのに。ひたすら訓練で嫌気がさしたら、もったいないじゃん」


「だってさ、フィデス?」


 カリスがフィデスの火魔法を、水魔法で相殺して声をかけた。


「あー。嫌気がさしたのは俺だな。でも、これなら習得出来そう!」


 その日の実技では、フィデスがびちょびちょになるまで練習をしていた。

 時々消火担当のルナが、フィデスに自慢げに火魔法を見せびらかしていた。


 アディは地面がぬかるんで危ないからと、魔法で整地をする。

 横からカリスがやり方を訊ねてきて、アディはそれに応えていた。

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