ss 29話の後日談。本編では風魔法縛りだったのに、実はこっそり他属性も使ってた俺。もちろん無自覚
アディの包帯が取れた後の実技授業、その初回。
一学期の実技考査の要項をウェルムたちから聞いたのち、教師がやって来て授業が始まった。
基本的な流れとして、実技授業は自由課題が多いらしい。
二種属性の混合魔法や応用の発動の型、支援魔法など、生徒全体が初めて取り組むことになる魔法以外は、各ペアに分かれて切磋琢磨するのだそうだ。
――なるほど、それでペア決めが重要なんだなぁ。
自習に近いとはいえ、教師が在中しているので、質疑応答は臨機応変に対応してくれるらしい。
魔法理論や魔法技術で学んだことを、各自試したりする場合が多いそうだ。
「え、カリス様もですか?」
皆がそれぞれに分かれて運動場にバラけた時、アディの元には、ルナ、フィデス、カリスが残っていた。
「あー。アディが休んでる間は、三人でやってたんだよ」
「アディ、ほら言ったでしょ。魔法が僕と、剣術や体術はフィデスとだって。つまりアディと組まない方は、カリスとするんだよ」
フィデスとルナが、それぞれに説明してくれた。が、アディとしてはそれもそれで引っ掛かる。
「やっぱりそれって、なんだかややこしくありません?」
「基本的に四人でやると思えば、そう難しいことでもないと思うけどね」
カリスは、なんとでもないように言った。
――そもそも、なんでそんなことになってんだか。
呆れたアディの胸の内を読んでか、ルナがアディの前に立つと、上目使いで理由を述べ始めた。
「アディ。僕、アディの魔法が気に入ったの。もっと見ていたいから、ペアにしてってウェルムに頼んだんだけど、だめ?」
「俺も。カリスやウェルムって、戦いの手応えはあるけど、綺麗過ぎてさ。
ルナとは体格差が目立つから、アディと組んでみたかったんだよ」
アディは、ちょっと権力の使い方についてもやっとした。使いどころが他にあるだろうに、二人して自己主張が強い。
「それならフィデス様は、ケレルと組んでも良かったのでは?」
アディが、もっともらしいことを言ってみた。体格差が気になるなら、同じ体育会系同士で組んだら良さそうではないか。
「ああ、ケレルとフィデスでは魔法が不得手同士、歯止め役がいないと危険だと判断した。
剣がメインの騎士団なら、それもいいけれど、ここは学園だからね。
ちなみに、ケレルはウェルムと組んでいるよ」
カリスが、アディへと理由を説明してくれた。
――それ、要するに脳筋か。
「ねえねえ、それよりアディ。まだ無理しちゃだめでしょ? 魔法しよ、魔法」
「いいけど、何するんだ。俺ほんとに初めてで分かんないんだけど?」
納得しかかったアディに、ルナが誘った。
前世の体育を連想していただけに、いきなり自由といわれても、アディはピンとこない。
「アディは今まで、どうやって魔法の練習をしていたのか、聞いてもいいかい?」
カリスに聞かれ、アディはうーんと唸った。前期組からするとアディの存在が新鮮なのだろう。
けれど別に、アディに師がいるわけではなかった。兄たちの様子を見て育ち、領地での独学である。
「私は好きなことをしていただけですよ。続かないと意味ないですし」
長期休暇で帰省するセレーヌスが、時々アディに手ほどきをしてくれたくらいだ。
ついでに周りにヒントがないかと辺りを見ると、皆それぞれにやりたいことをしているようだった。
今、なにもしてないのはこの四人。
――この四人で、練習になりそうなもの。
ペア決めの的当てを思い出し、課題を見つける。カリスはともかく、フィデスとルナはコントロールが苦手なのだ。
「フィデス様、総当たりの実技で、決めた範囲で戦ってましたよね?」
「ああ、仕掛けるより、仕掛けられる方が楽しいからな!」
――フィデス様が仕掛けたら、一発で勝敗が決まるの間違いだろ、それ。
「じゃあ、こういうの作れたら、面白くありません? 《ファイアサークル》」
アディはでかかった突っ込みを喉の奥、胸の内へとしまいこんだ。
代わりに、自分の周りに火の柵を作る。最初は膝丈にあった火力を、徐々に抑えて小さくし地面からゆらゆらと燃える、とろ火へと変えた。
「おお! なにそれ!」
「アディは、火も使えるんだ!」
フィデスとルナが二人揃って、キラキラとした目をアディに向けてきた。
「総当たりの時みたいに、魔法無しの条件だと使えませんけど。
それ以外では、ちょっとした遊びになりますよ。自分にも相手にも分かる、目印にもなるので」
イメージは前世アニメなどで、○○ゾーンとか強者が弱者に対して発動していた、煽りの技だ。
――ゾーンから出させたら、コイツやりよる! って展開になってたよなぁ。
「サークルの大小、火柱の高さ、難易度はそこそこあるね」
「慣れてしまえば、簡単ですよ。魔法は想像力が大事じゃないですか」
アディはカリスの呟きに、なんてことないように答えた。
「うわぁぁあ!」
「ちょっと。なにしてるんだよ!」
目の前の向こう、フィデスが挑戦しては火力が高過ぎて、ルナが水魔法で消化していた。
「フィデス様ー。最初はサークルを離して練習をした方が、焦げませんよー」
アディはそうやって声をかけ、手本とばかりに大小の《ファイアサークル》を五個出した。
「輪の中に入る必要なくて、外に出すと、こうやって、遊べますし」
前世、ケンケン、パーとよく遊んだものだ。アディがピョンピョンと跳び跳ねると、ルナがゴールで待ち構えていた。
「アディ、面白い! 魔法で遊ぶって発想が僕にはなかった」
「ええー。せっかくの魔法、遊ばなきゃもったいないだろ?
遊びだって追求すれば立派な訓練なのに。ひたすら訓練で嫌気がさしたら、もったいないじゃん」
「だってさ、フィデス?」
カリスがフィデスの火魔法を、水魔法で相殺して声をかけた。
「あー。嫌気がさしたのは俺だな。でも、これなら習得出来そう!」
その日の実技では、フィデスがびちょびちょになるまで練習をしていた。
時々消火担当のルナが、フィデスに自慢げに火魔法を見せびらかしていた。
アディは地面がぬかるんで危ないからと、魔法で整地をする。
横からカリスがやり方を訊ねてきて、アディはそれに応えていた。




