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【四章完結】乙女ゲームのサポキャラ転生、チュートリアルで消える強化素材のはずが――いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
一章 学園入学編。 攻略対象キャラたちに、俺、囲われ始めたんだけど!?

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最終話 一年夏、距離感近い友人に囲まれて……いや、近いだろ、お前たち

一章完結になります(*^^*)

ここまで、アディたちを見守っていただき、ありがとうございました。


二章も引き続き更新していくので、良ければブクマや評価などいただけると、とても励みになります。

(二章は書けているので、主に三章執筆への意欲が上がります)

 夏の始め、青々とした空が窓の外に広がっていた。

 アディは制服を身にまとい、壁に立て掛けられた剣を静かに見つめる。

 制服に袖を通した時点でもう、後戻りは出来ない。


「や、それなら明日から行きますって言った昨日か」


 アディは笑って、一人呟いた。

 セレーヌスとの食事をして、もう学園に行っても良いかと自然と思えたのだから。

 部屋へと戻る途中で、ラウンジで寛いでいた皆へと声をかけたのだ。


 実技考査で、眼鏡を自ら踏み割ったアディ。彼は新しい眼鏡を、かけていなかった。前髪で隠さずあらわになった、ダークルビーの瞳が剣を映している。


 その顔は、スッキリと吹っ切ったように明るいものだった。

 今日からまた、新たな一日が始まる。


 アディの体調はすっかり良くなり、実技にも問題なく参加出来るだろう。


 病み上がりなのに、とマーレは少し不満そうだったが……。

 これからも、昼休みには体調をチェックしてもらうことになっている。

 彼女もなんだかんだ、アディを弟分として可愛がってくれていた。


 アディはもう躊躇うことなく、その剣を手に取った。

 本来、これを持つ設定などアディウートル・クストスにはなかった。


 ゲームはまだ始まっていない。これから先も、どうなるか全く分からない。

 なぜなら、アディはほとんどゲームを覚えていないのだから。


 ――ヒロインが来たら、正直怖い。


 けど、今はまだここでいいと、思うことにした。その時になったら考えようと。

 チュートリアルとか、消費キャラとかそんなのは置いといて。


 ――だって生きてくしか、ないし。


 クストス家の三男、アディウートル・クストスとして、ここにいる。

 平和にのんびり、ゆるく学生生活を謳歌するのだ。




 ◇◆◇◆◇◆◇




 部屋から出ればすぐそこに、最上階専用のラウンジがある。

 事前に学園に通うと伝えていたせいか、今日は全員集まっていた。その光景に、アディはちょっと苦笑する。


 ――どうせ皆、教室で会えるのに。


 侯爵家の身分でこの階を使うのは、とアディは一度怪我が治った時点で、辞退しようとした。

 部屋の改修が終わったら、元の部屋へ戻ろうとしたのだ。


『アディ、戻るの!? ヤダ。もう一度部屋、壊してきていい?』


『せっかく友達になったじゃんか! 仲直りしたじゃんかー。アディー、一緒に居ようぜー?』


 けれど、ルナに泣かれ、フィデスに抱きつかれ、気づけばなし崩しになっていた。


 ちなみにカリスには、帯剣していれば家格など問題ないとそつなく返された。

 ペア決めの時のように、アディの外堀が埋められているような気がした。


「あ、おはよう! アディ」


「皆様、おはようございます。今日からまた、よろしくお願いします」


「堅苦しいぞ。アディは、やっぱり真面目だなぁ!」


 ルナがアディに手を振って、アディは腰を折って挨拶をした。

 フィデスがそれに眉を下げて笑い、苦言を呈した。

 ウェルムとカリスが、それを満足げに微笑んで見ている。


 ここ数日で、アディが見慣れつつある攻略対象キャラたちとの光景だった。


「ふふ、ではさっそく。アディ君には考査の筆記試験のやり直しから、受けてもらいましょう。ああ、筆記内容は特別製ですよ。

 教師と私で見守らせていただきますので、ご安心くださいね」


 ウェルムがとても活き活きと、黒い顔で笑っている。

 声も何だが弾んでいて、嬉しそうに感じるのはなぜだろう。


 ――それのどこに、安心要素があるんだよ。


 アディはちょっと顔をひきつらせながら、やんわりと拒否を示す。


「規則的に点数が悪くとも、何も問題は無かったかと思います。

 ウェル様と先生のお手を煩わせるのは、大変、心苦しいのですが……」


 点数が悪いどころか、全教科白紙で出した。前世なら確かに、赤点留年リーチでもおかしくはない。

 でも今世にそんなシステムはなかったと、アディは主張する。


「大丈夫ですよ。二度と白紙で出す気にならないように、お互いのための、ですので」


 ――それ全然、大丈夫じゃねぇやつ。


 本格的にうすら寒いものを感じ後ずさりながら、アディは笑った。もう笑うしかない。


 攻略対象キャラでもある彼ら四人と、アディは肩を並べて談笑していた。


 乙女ゲームのチュートリアルの消化キャラで男のアディウートル・クストス。

 入学式のあの時、ネットで流行った転生ものあるあるの悲運とは無関係で、人生を嘆く必要が全くないと高を括っていた。


 それがまさか一学期も終えていない今、アディが攻略キャラたちに囲まれるとは、全く予想していなかった。

 そのアディの腰に、カリスから下賜された剣が揺れていた。


「それが答えかい?」


 ソファに座るカリスが、静かに上目遣いで聞いてきた。


「はい、今しばらくは。これからお世話になります。カリス様」


 アディはそれに、しっかりと目を見て返した。


「今しばらく……か。私は、手放すつもりはないのだけどね?」


 アディを見透かすように見つめ、カリスが呟いた。

 アディはそれに、微笑をして答えなかった。


 けれどカリスも、それ以上言わなかった。ただ満足そうに目を細めて、アディを見ていた。


 ――中途半端な気持ちでも、見逃してくれるらしい。


 その剣はアディの動作に合わせて揺れていて、ちょっと慣れない。

 でも彼らの想いが重みとなって、そこにあるのは悪くないと思っている。


 ヒロインが来るまでの、仮の関係でも良い。

 そうアディが思えるくらいには、この場所を、彼らとの関係を居心地よく感じるようになっていた。


 ――そう。確かに俺は、ここにいることを選んだんだ。


 泣いて笑って、ただの少年のように過ごせるその場所を。

この後、SSを更新後、3月から二章開始となります。

SSは28日7時と20時で予定しています。


作品執筆にあたり、十四歳をBLガッツリはちょっとと思いとどまりました。

距離感の近い友情路線、学園ファンタジーへとシフトチェンジです(笑)

二章も学園ファンタジー路線で行きます

予定では53話くらいです(*´ー`*)

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