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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
一章 学園入学編。 攻略対象キャラたちに、俺、囲われ始めたんだけど!?

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第3話 眠たかったので、攻略対象を犬に例えてみました

「あとは、ホームルームだよなー?」


 気だるげな入学式を終えて、アディは伸びをしながら廊下を歩く。隣にはケレルが居た。


「そうそう。アディは、サークルなんか入る? あとで一緒に見学行かねぇ?」


「サークルなぁ……」


 頭の中でゲーム知識を思い起こそうとして、アディは唸る。

 攻略対象たちとのストーリーか育成に関わってそうな分野たが……。


 ――サークル、要するに部活動のことだったよな。二つまでは、兼部も可能だったっけ?


 アディはゲーマーとして多様なゲームをしてきたから、細かいところまではいちいち覚えてない。

 そもそも最低でも十四年も前の話だ。記憶として古すぎる。


 ――ダメだ。やっぱり覚えてねぇ!

 隠しキャラとか居ても、分からないし。


 けれど育成、攻略系の王道としては、攻略対象がバラけてサークルに所属していたり、逆に、一つのサークルに集まっている場合が定番だ。


「俺はしばらく保留かな。ケレルは好きに見て回れよ」


 ただのチュートリアルのサポートキャラでも、何かに巻き込まれてしまう可能性はあり得る。その後が悲惨になる可能性を捨てきれない。


 ――モブが活躍する小説とかあったよな。奇想天外な人生とか、メンタル食うやつとか嫌なんだけど。


 なぜならここはゲームとそっくりなだけで、アディにとってはまず間違いなく現実のはずで。

 アディウートル・クストスとしての歩んだ今までの記憶と人生がある。


 ――覚えてるのは、攻略対象の名前と外見。だいたいの世界観、ざっくりしたストーリーとかそんなんだもんなぁ。


 ヒロインが編入した時、ケレルは何かのサークルに入ってたはずだ。それさえアディは覚えてない。

 前世でよく似たゲームを見ていて、ただそれを重ねているだけとも言える。

 大変おぼろげで、頼りない記憶の状況だった。


 それにもう一つ懸念があった。アディがサークルに入って、うっかり前世チートを無自覚に披露してしまう可能性。

 また、幼少期のように注目を浴びてしまう。それはそれでダメだろう。


 ――侯爵家の気ままな三男ポジは、手放したくない。


 家族仲は今、とても良いのだ。後継者争いとか、政略結婚とか何かに発展したくはない。アディの密かな願いだった。

 


 後ろから教室に入り、ケレルと分かれた。

 ケレルはこれから、他の生徒にサークル見学の誘いをするらしい。羨ましいほどにフットワークがとても軽い。

 そのケレルの後ろ姿は、ご機嫌のあまり尻尾が振ってるのでは? と思ったほどだ。


 アディは教室を見渡して、空いた中列の席に一人、腰を下ろした。

 暗黙の了解で、前列が王族、高位貴族。後列が平民などの身分もしくは成績順だからだ。


 ――眠い。


 窓からのポカポカとした陽気にあてられて、アディはあくびを噛みしめる。このまま寝てしまえそうだ。


 セレーヌスの祝辞以外、入学式の内容は前世と似たり寄ったりで、右から左だったのも大きい。なぜ、あんなにも学長の話は長いのだ。


 ――あ、あれ残る攻略対象たちじゃねぇ?


 ふと教室の前方に、ただならない存在感の美形軍団を見つけた。

 入学初日から、グループが幾つか出来ている。その多くは、親同士の繋がりや幼少期からの前期入学組だろう。


 ――そういえば残りの攻略対象は皆、高位貴族で、前期入学組の同じ学年だっけ。


 アディは前期を通わずに、ずっと領地で過ごしていた。

 そのため、同じ年の友達はさっきのケレルが初めてだった。

 ちなみにケレルはアディと同じ侯爵令息で、後期入学組である。


 そのまま前方の四人を眺めながら、前世の記憶と照らし合わせ始めた。

 眠気対策の、アディにとっては単なる暇潰しのつもりだった。


 カリス・ファティウム。

 王子で柔らかいふんわりとした金髪に碧眼。乙女ゲームの王道、王子様然とした佇まい。

 人当たりの良さそうな感じだが、実は腹黒王子の執着系枠。


 ――例えるならゴールデンレトリバーだな。


 フィデス・アルドール。

 父は騎士団長の公爵令息。赤茶の髪に赤のつり目、がっしりとした体躯だが、眺めている分には、とてもキツい印象は受けない。

 それどころか、人懐っこい感じで三人と話している。

 王太子の護衛を兼ねているのだろう、帯剣していた。脳筋の体育会系枠。


 ――見た目も相まって、アイリッシュ・セター辺りだろう。


 ウェルム・レクティトゥード。

 父が宰相の公爵令息。紺の長髪を下の方で三つ編みにして纏めている。金の瞳。

 四人の中では、一番冷静な目をしているように感じる。確か万年学年首席だ。

 知性キャラ枠。


 ――よし、ボーダー・コリーにしよう。


 ルナ・ヴェネラティオ。

 父が王宮魔法師団長の公爵令息。癖のないスッキリとした黒髪に藍の瞳。

 将来騎士団入りが決まっている有能株の魔法剣士。こちらも帯剣していた。

 ツンデレ系可愛い枠。


 ――四人の中で一番背が低いから、ミニチュア・ピンシャーかな。


 などと、俺はAクラス上級貴族の四人を、見事に犬に例えていた。

 犬の性格は、ゲーム知識のイメージで補完だ。暇なのだから、心の内に秘めれば許されるはず。


 そしてこのうち二人は、カリスと学年を合わせるために、実際の年齢は上だったり下だったりするはずだ。なんという根回し、権力の無駄遣いだろう。


 ――誰が何歳か、とか覚えてねぇ……。


「……!」


 じっとアディが四人を見ていたら、王子のカリスが、こちらに気づいてにこやかに手を振ってきた。

 それに釣られて三人も、一斉にアディを見てきた。

 フィデスは笑い、ウェルムは微笑を浮かべ、ルナはなぜか不機嫌に睨んでくる。


 ――やべ、露骨に見すぎた。


 ペコリと座ったままアディが頭を下げれば、カリスがこちらへと歩いてきた。

 アディが慌てたところで、もう遅い。せめて、不敬とか言われませんようにと、冷や汗をかきながら心の中で祈った。

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