第27話 スライムって言えば、やっぱりスライムでしょ。現代人的に。
「ずっと聞きたかったんだけど、アディも応用の型持ってるよね?」
魔法理論の基礎と応用の講義を終えた、休み時間。
ルナが、アディのところへとやって来た。
その表情は、とても明るくなった。よく笑うようになり、まとっていた空気感も和らいでいた。
アディの腕の包帯が取れて、三日経ったからだろう。
『アディ!? もう包帯取っていいの。まだ曲がらないのに!? それホントに大丈夫なの!?』
最初はとても驚いて、ルナはかなり挙動不審になっていた。それだけ心配しているのが、アディには意外だった。
腕は、相変わらず動かない。けど服が楽に着れるのは、アディにとっても大変ありがたかった。
だからルナには、大丈夫だと笑ってアディは返したのだ。
「応用……ああ、これ?」
アディはルナの意図が分かり、右手でピストルの形を作る。
先程の講義で魔法発動時の手のひらを出す形を基本型と改めて説明していた。その後、後期からはそれぞれが自身にあった形へと、型を昇華させていくことに触れていたのだ。
「そうそう、それ。なんでなのかなって気になってたの」
おそらくは、入学式の翌日の魔法実技の時から、ルナは気になっていたのだろう。
よく見てるよな、とアディは感心した。
そのルナはアディの手を見て、自分の手で再現をして首をかしげていた。
――可愛い、か。
「……ルナなら、やってみる方がイメージつくんじゃないか? 俺は身体強化するけど、ルナはそのまま。先ずは俺の手のひらを、手のひらで押し返してみ?」
アディは、左手をルナの前に出して言った。
ルナはそれにちょっと驚きながらも、アディの手のひらに自分の手のひらを重ねた。
なぜだか、ルナはちょっと嬉しそうだ。耳が赤くなっている。
アディが見守っていると、ルナはそのままぐっと押し返してきた。
当然ながら、身体強化したアディの手は、びくともしない。
「……?」
「んじゃ、次は人差し指だけでさっきみたいに押してみて……そう、それがざっくりとした魔力の放出範囲のイメージ」
アディは、さらにルナへと説明を続けた。自分の手のひらを開いたり、ピストルの形へ変えたりして、アディはルナに伝える。
「面から点に変わる。このイメージと実際の接地面積から、的を絞った場合の魔法行使に限り、俺はこの形があってんの」
――まぁどっちかというと、前世のアニメの影響がでかいけど。
広範囲魔法だと手のひらが楽だなと、アディはつけ加えた。
「アディ、すごい」
ルナはアディにキラキラと目を輝かせていう。
「他の人たちを俺は知らないけど。俺の兄さんたちが元々そうだから、俺は真似しただけな。
あと、これから複合魔法とかも習い出すから、型は気にしなくていいと思うぞ?」
アディは、ピストルの形を前方へと構える仕草をし、なんでもないように追加した。
「この型なんて、スライムの核を瞬殺して、品質の良いゼリーの回収が主な用途だしなー。
中型、大型向きじゃないから実用性は皆無なの」
「……アディ、スライムゼリーの高品質とか最高級品だよ?」
「そうか? スライムなんてどこにでもいるし、探さなくてもいい素材なんだから、大したことないだろ」
アディの主張に、ルナはなぜかちょっと言葉を失くしていた。
が、素材の買い取りを依頼したとの無いアディにはそれがよく分からなかった。
アディの分かっている範囲の話になおすと兄たちが、普通にスライムから素材回収をしていたからだ。
もっとも、幼いアディの無邪気なアドバイスで、兄たちが小遣い稼ぎをして弟へ還元していたとは、アディの知らない話なのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「面白い会話をしていますね。アディの長兄と言えば、ええと魔法師団の小隊長でしたか」
「ああ、クストス家から初のね。なるほど理由はここにあったか」
ウェルムとカリスが、アディとルナのやり取りを自席から聞いていた。
アディに悟られないよう、二人はそれぞれが別のことをしている、というの念のいれようで、だ。
「確か、スライムはその弱さから、核を破壊するとそこから劣化が急速に進みますからね。
とはいえ、中心にある核をするには周囲のゼリーを壊す必要があるのですが……」
ウェルムが、確認のように一人言を言う。
スライム自体が弱い分、ことさら扱いづらい素材の一つとされ、個体数に反して最高級素材の扱いになっていた。
「神童に取っては、最高級素材も児戯の一つということだろう。的を壊す破壊力なら、急所に当てれば殺傷力は十分だ」
カリスは軽く咳払いをして、笑いを抑えていた。面白くて仕方がないらしい。




