表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一章完結】乙女ゲーのチュートリアルのサポートキャラに転生したら攻略キャラが集まってきた。いや、俺は男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
一章 学園入学編。 攻略対象キャラたちに、俺、囲われ始めたんだけど!?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/57

第25話 身体強化は便利すぎて必須なんだけど

「アディ君、安静にって言いましたよね?」


「安静にしてましたよ?」


 アディが応接室に入るなり、出迎えた仁王立ちのマーレの、開口一番がこれである。


 昼休憩。セレーヌスの通達通り、マーレによるアディの健康チェックの時間だった。

 アディは思わず、マーレに対しての物言いが丁寧になる。

 

「おかしいですねぇ?一限目から欠席で、走り去って行くアディを見たと、先生から聞いてますよ?」


 ――あー。そこの口止め忘れてたな。


「サボってはないぞ。ちゃんと王子殿下から許可をいただいた」


 ――正確には、もぎ取ったとも言う。


 アディは視線を横へとずらし、マーレの質問に答えた。


「身体強化もしましたね?」


「……」


 ――平時でも、ルナを担いで走るのは強化しないと無理だし、俺。


 何て言おうものなら、マーレに怒られるのは目に見えている。アディに分が悪すぎた。


「むしろ今も、使ってるでしょう?」


 アディの一挙一動見逃さないとでも言うように、マーレはぐいっと距離を詰めて問う。

 わざわざ、"今"を強調して言ってきた。


「……」


 距離の近いマーレに、アディは思わず応接室の外をさっと左右確認する。人がいないと、息をついた。


 ――マーレさん、邸の中じゃないんだからさぁ。


 悪態は胸のうちにアディは留めた。どう考えても火に油を注ぐ行為だ。


「無言は肯定と同じですよ。なんでバレた。じゃなくて自然体過ぎるから、逆に不自然なんです。

 アディ君。普通の人は数日寝込んだ後、走り回ったら、平然と過ごせません。むしろ人を抱えてなくとも走れません。しかも貴方は怪我もしてるんですよ?」


「全部バレてるなら、わざわざ聞かなくて良くないか?」


 はぁとため息と共に、アディは半目になって白旗を上げた。なんなら手も上げようと全面降伏する。

 幼い頃から一緒なのだ、マーレに勝てるわけがない。


「一般的な常識の習得とアディ君の自己申告を期待しています。

 何のために、医者には問診と言う過程があると思ってるんですか」


 くるりとアディに背を向けて、マーレは持ってきた鞄から、なにやらがさごそと出しては机に広げている。

 お説教は、もうすぐ終わりらしい。


「適切な治療のための情報量」


「……そこが分かってるなら、自分にも当てはめてください。はい」


 小言を言い終わったマーレは、応接室の長ソファに座ると膝を叩く。こっちに来いと。


「いや、それはさすがに」


 ――領地でもないし、世間体でアウトだろ。


 侯爵家三男と言えど、貴族男子。未婚で異性と二人っきりでもグレーなのに、さらに親密さを出してどうする。

 もう一度、外に人がいないか思わずアディは、確認してしまった。


「午後いっぱい、応接室の貸切許可は出ています。用の無い人は誰も来ません。

 また寮で倒れても困るので、お兄様の授業が終わるまで、ここで休んでもらいます。

 ついでに、ちゃんと治療もしますよ」


 マーレはアディの退路を塞ぐべく、つらつらと主治医らしく正論を並べた。


「……」


「完治前に倒れたら、今度こそ責任問題にするそうですよ?」


 黙るアディに、マーレはさらに笑みを深くし両手を合わせ、トドメを刺した。


「はぁ……」


 アディはため息を吐くと、大人しく上着を脱ぎソファへかけた。そのまま、マーレの膝枕に頭を乗せて寝転がる。


「あ、ちゃんと身体強化も解いてから、寝てくださいね。アディ君は寝ながらでも使う、変人の癖があるので」


 マーレはアディの眼鏡を取りテーブルに置くと、アディの目に手のひらを乗せ、念押しをした。


「変人とか癖とか、言うな……」


 マーレによる疲労回復目的の治癒魔法。その温かさに、アディの意識はすぐに落ちた。




 ◇◆◇◆◇◆◇




 すうすうとやや浅く早い寝息を立てて眠るアディの前髪を、マーレは払う。

 アディの額に浮かんだ汗を、タオルで拭ってやった。顔色が悪い。

 復学初日で緊張もあり、無理をしていたのだろう、アディは普段こんなに寝るのが早い方ではない。


「どうぞー。もう入ってもバレませんよ」


「……でも、さっき誰もって」


 音を立てずに開いた扉から、ルナが気まずそうに顔を覗かせた。

 眠るアディを見つけると、ルナの瞳が不安げに揺れる。痛みをはらんだその藍色は、今にも泣きそうだ。


 ――まだ三回しか登校してないのに、アディ君は愛されてますねぇ。たらしですか。


 マーレは主君に向けられる好意に嬉しそうに口許を綻ばせ、ルナに安心するように声をかける。


「用の無い人が、ですよ。アディ君のご学友の方ですよね。立派な用事があるじゃないですか。

 こちらこそ、何もおもてなしも出来ず、無礼を働き申し訳ございません」


 どうぞとにこやかにマーレが再び促せば、ルナがそろそろと部屋へと入ってきた。

 ルナは緊張しているのか、その手をモジモジと交差させている。


「あ、いや。そもそも僕が、アディに無理させたから……」


「でも、大丈夫そうに見えたでしょう?

 まぁ、ああいう時ほど、無茶を隠しているんですけどねぇ。

 アディ君は、やると決めたらやり通しちゃうんです。なのでこれは、アディ君の自業自得ですよ。

 あ、アディ君の上着を、彼に掛けてもらっていいですか?」


 しょんぼりとしているルナに、マーレはお願いをした。

 ルナは少しでも挽回しようとしているのだろう。

 ソファの背に雑に置かれたアディの上着をそっと持つと、マーレに一生懸命に指示を仰ぐ。


「掛けるの、どうやったらいい?」


「上着はシワになって良いんで、広げて、こう……バサッと、掛けちゃってください」


「バサッと……」


 アディが胸の上に置いた右腕を注視してルナは固まった。本当にいいのか、と躊躇っているようだ。


「上着を乱暴に掛けても、傷には響きませんし、起きませんよ。大丈夫です」


 マーレの後押しに、ルナは意を決したようだ。

 ゴクリと唾を飲み込んで、アディへとそっと上着をかけていた。


 起きないアディを見て、明らかにルナは安堵している。

 彼がアディをとても大切にしているのが、マーレにはよく分かった。


「……アディ君の折れない信念は長所ですけど、まぁ、気づける人がそばにいればいいんですよ、ね?」


 肩の力を抜いた小柄な少年に、マーレは優しく話を振った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ