14 旅へ4
翌朝早くに宿をたち、街道沿いに旅を続けた。
都に向かう人々のほうがやはり多く、大きな荷馬車や荷車も度々みられるようになった。行きかう人の特徴も多様化してきた。褐色の髪がやはり多かったが、中にはヨルキエよりももっと明るい金髪もいたし、緑や青の瞳の人もちらほら見えた。
オウタは立ち仕事が基本であるので、細身の外見のわりに体力はあったが、カサネは一人、女だということもあって旅の足をひっぱりがちだった。なにより元々体力もない。
「・・・大丈夫か?ほら水」
昼の休憩になってようやく腰をおろすことが出来たカサネはただ無言で水筒をうけとった。
意外なことに、一番文句をいいそうだったスウガも黙ってカサネのペースにあわせてくれた。多分、初日に倒れたことから虚弱な印象がついてまわっているのだろう。
そこまで体が弱いわけではないが、さすがにやわな体に本当の旅は厳しい。
「馬か荷車にでものれればいいんだけどな」
オウタがつぶやくと、それもいやだな、とカサネは首をふる。馬など一人ではのれないし荷車に乗って運ばれるなんて家畜か荷物のようだ。迷惑をかけるとは思うが自分で歩きたい。
スウガは少し離れたところでヨルキエとともに旅人の一人から先行きの情報引き出していた。やがてヨルキエをのこしてスウガが戻ってきた。
「お疲れのようだが、悪いな。今夜は野宿になりそうだ」
旅が始まる前と話が違う、とオウタは顔をしかめたが、カサネには多分自分の遅さが原因だろうとわかっていたので黙ったまま頷いた。
「河の増水で足止めをくった人が一気にぬけたからな。この先の町の関所がつまっているらしい。面倒なことにその町は手形の検めがきちんとしてるし、時間がかかるんだ。門の前で並んで夜明かしだろうな」
「大丈夫なのか?昼間は暖かいが夜は結構冷えるだろう」
「なに、野宿といってもそういう町の外には貸しテントが溢れてるからな。山の中の野宿とは違う」
キャンプみたいなものかな、とカサネは少しほっとする。
たった二日しか旅していないのに、色々と難儀することがあった。排泄や着替えもそうなら、自分の容姿の問題もあった。
宿などで用があってオウタらが離れると、すかさずまわりの人々が話しかけてくるのだ。オウタは眼鏡をはずしていると目つきが悪いので誰も寄ってこないがカサネはそうはいかない。
本当になにがいいのかわからないが、二人の顔立ちは美貌といえるほどらしい。嬉しいようないんちきをはたらいているようなすっきりしない気分だった。
「それならなんとか。その町はなんて名前?」
「ダダイの町だ。あと三時間といったところか。その先にある山脈を越える要所になるから、結構栄えてる」
スウガの説明は簡素だ。二人は頭にその町を思い浮かべることは出来なかったが、曖昧に頷いた。