13 旅へ3
対岸にも町は続いており、そこの宿のひとつに落ち着いた。
食事代は出してもらえたが、予想通りというか非常に質素だったのでカサネとオウタは内心不満だった。
これまでは本当に贅沢だったんだなあ、とぼんやり思う。
目の前にはどっしりとしたパンとくず野菜のスープ。それだけだ。朝食だったら満足だろうが、夕食にはものたりない。
しかもこちらは一日二食だ。昼食の時間帯には軽食をとるが、そういった習慣になじみのない二人の胃袋は、スウガたちが笑うような時間に鳴り出したりした。
「・・・あーお米が食べたい。そしてもつ煮込み」
「しつこいなお前も。まあパンばっかりじゃなあ」
「君らは普段どんなものを食べていたんだ?」
ヨルキエは何事にも好奇心が強く、根掘り葉掘り聴いてくる。
「米・・・麦よりもっちりしたやつね、それが主食で汁物、主菜、副菜がワンセットかな。朝は今食べてるのとあんまり変わらない。昼も軽く。夜が一番豪勢で、肉・魚料理が一品はないと悲しい」
「ずいぶんたくさん食べるんだな。それじゃ肥満にならないか?」
確かにそう思われても仕方がないが、スウガの食事を見ているとお前に言われたくない、と思う。品数は少なくても食べる量は半端ではない。同じくらいの身長のオウタの三倍は食べている。まあ、筋肉量が違うのだから当然といえば当然だが。
「肥満が成人病の一つになってるからねえ。贅沢病かも」
「そういうわりに二人はとても痩せているね。小食だし」
自分でも小食な自覚はある。ただし舌はとても肥えていたので今日の夕食が物足りないのだ。
「量は少なくてもいいからもうちょっと色々あるとうれしいんだけどなー」
と、横目でスウガを見た。財布の紐を握っているのは意外にもスウガだった。彼いわく、ヨルキエに任せると散財して仕方ないそうだ。
「本当に贅沢だな。食えるだけありがたいと思え」
「思ってるけどさ」
オウタも小さくため息をつきつつパンをちぎった。
「じゃあ今度・・・そうだな、お前らが晴れて自由の身になって、一ハールでも稼げるようになったら思う存分おごってやるよ」
と、小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
あからさまに無理だろう、といっている笑顔だ。
今の状況からいっても難民扱いな上、世間をしらない二人にはなんのつてもない。しかしこれはカサネもオウタもいい気はしない。
「・・・おぼえといてねその台詞」
「いっとくが俺は手に職持ってるからな」
正確に言うと職と言っても美容師見習いだが。
二人は良く似た冷たい目をスウガにむけて、猛然と食事を続けた。




